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「マスコミは死刑の現場に立ち会ってほしい」日弁連委員会の弁護士が「死刑取材」要望
左から小川原優之弁護士、平岡秀夫弁護士、杉浦成健弁護士

「マスコミは死刑の現場に立ち会ってほしい」日弁連委員会の弁護士が「死刑取材」要望

日本弁護士連合会は11月16日、東京・霞が関の弁護士会館で死刑制度について考えるシンポジウム「死刑廃止を考える日」を開いた。死刑を執行する立場にあった法務大臣経験者の杉浦正健弁護士と平岡秀夫弁護士、日弁連死刑廃止検討委員会の小川原優之事務局長らが登壇し、死刑制度のあり方について、国民的な議論が必要だと訴えた。

●「死刑に見合った刑事手続が保障されていない」

特別報告として、「名張毒ぶどう酒事件」で死刑判決を受けて再審を求めていた奥西勝死刑囚(2015年10月4日に89歳で死亡、現在は奥西死刑囚の妹が再審請求中)の弁護団の小林修弁護士が登壇。死刑は取り返しがつかない刑罰であるにもかかわらず、日本では、そのことに見合った手続が保障されていないことを指摘した。

「アメリカでは、死刑が求刑された裁判において、『スーパー・デュー・プロセス』という通常の刑事裁判と比べて非常に手厚い手続が必要です。9段階の司法審査が保障され、公設の弁護人が弁護にあたることなどが保障されています。

1件あたり100万ドルが使われることがあります。小さな郡では、死刑事件を1件抱えると、それだけで1年分の司法予算を上回ってしまうこともあります。死刑は、それだけ取り返しのつかない刑罰です。

しかし、日本にはこうした手続はありません。そのことも、死刑求刑事件にえん罪が生まれる原因になっていると思います。死刑制度がなければ、奥西さんもこんなに苦しむことはなく、早期に解決できたのではないかと思います」

●世論調査をどう読み解くか

その後のパネルディスカッションで、日弁連の小川原弁護士は、今年1月に内閣府が発表した死刑制度についての世論調査の結果に触れた。メディアでは「国民の8割が容認」などの見出しで報じられていたが、小川原弁護士によると「必ずしも正確ではない」という。「『死刑もやむをえない』と回答した人たちの中に、『状況が変われば、将来的には死刑を廃止してもよい』と答えた人が4割も含まれている」と指摘した。

さらに、「死刑について、公に議論できる社会環境を作っていかなければならない」と主張し、次のように述べた。

「死刑の存置を続けるのか、代替刑として仮釈放なしの終身刑を導入するのか、国民全体で議論していく必要がある。マスコミの人たちに望むことは、そうした議論の材料を提供するために、もっと死刑について報道してほしい。

今は許されていないが、死刑の現場に立ち会って、残虐なのか、残虐ではないのか、国民に問うてほしい。そこまでしなれけば、本当に死刑が残虐な刑罰か、そうではないのか判断できないと思う」

(弁護士ドットコムニュース)

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