後輪にブレーキのない競技用自転車で公道を走ったとして、東京都内の31歳男性が11月中旬、道路交通法違反(制御装置不良)の容疑で警視庁に逮捕され、略式起訴された末に、「罰金6000円」の略式命令を受けた。
報道によると、男性は昨年6月、競技用自転車「BMX」の後輪にブレーキを付けないまま渋谷区内の道路を走行し、交通切符を切られた。さらに、電話やハガキで計7回の出頭要請を受けたにもかかわらず出頭せず、逮捕に至ったようだ。
道路交通法の施行規則では、自転車の前輪と後輪にブレーキを付けることを義務づけている。今回は逮捕という異例の対応となったが、過去の報道によると、ブレーキなし自転車で走行して、「罰金6000円」を科されたケースはほかにもある。ブレーキなし自転車で検挙された場合は、これが標準と考えていいのだろうか? 道路交通法にくわしい池田毅弁護士に聞いた。
●「原付」の整備不良の反則金と同じ金額
「まだケースが少なく、個別事情にもよりますので、この罰金6000円が標準(相場)と判断してよいかは難しいところです。
ただ、6000円という金額は、原動機付自転車の整備不良の反則金と同額で、これとの均衡を図っていると想像されます。その意味では、6000円という金額が目安になるかもしれません」
池田弁護士はこう説明する。
「自転車の整備不良の場合、道路交通法120条によれば、罰金は最高5万円ということになっています。
他方、自転車よりも速度が出る可能性があり、重量もある原動機付自転車のブレーキの整備不良は、罰金ではなく反則金6000円です。
ブレーキのない自転車への罰金が6000円とされているのは、自転車のブレーキの整備不良についても、原付の反則金の額を超えない程度の罰金が妥当と考えられたからではないかと想像されます」
●ブレーキなしでは「重大事故を起こす危険性」も高い
ただ、この「6000円」は、ブレーキがないことへの罰金にすぎず、事故を起こしてしまった際の責任は、完全に別問題となる。池田弁護士がもっとも憂慮するのは、その点だ。
「ブレーキなし自転車で公道を走ること自体、道路交通法に反することはもちろんですが、より実質的には、重大事故を起こす危険性も高いのが問題といえます。
自分自身が怪我をするだけではなく、事故の相手(被害者)に重傷を負わせてしまう可能性も高く、そうなると取り返しが付きません。公道を走る以上、きちんとルールを守って走るべきでしょう」
池田弁護士はこのように強調し、交通ルールの順守を呼びかけていた。
報道によれば、逮捕された男性は「足でブレーキをかければ止まれるので問題ないと思っていた」と供述したという。固定ギアの自転車では、ペダルを逆に踏み込むことでも減速できるため、「自分は止められるから大丈夫」という意識に陥りやすいのかもしれない。今回の報道がきっかけとなり、ブレーキに関するルールが周知徹底されればいいのだが……。