運転中も音楽を楽しみたい――。こう考えるドライバー、バイカーは少なくないだろう。乗用車のドライバーなら、カーステレオで気軽に音楽を楽しむことができる。では、バイクでイヤホンを利用して音楽を聴くことはどうだろう。
あるインターネットの投稿サイトでも、「バイクの運転中にイヤホンで音楽を聴いていいのかどうか」が議論になっていた。「たぶん警察に停められて会話できなかったらアウトだと思ってる。普通に会話できれば問題ないかと」「片耳カナルイヤホンでナビを聞いている 」など、さまざまな意見が見られた。
周囲の音が聞きづらくなることを考えれば、安全のために、音楽を聞かずに運転に集中するのがベターと思える。しかし、そもそも「バイクを運転中に音楽を聴く」ことは法律的に許されるのだろうか?道交法の問題にくわしい前島申長弁護士に聞いた。
●都道府県単位で規制がある
「運転中にイヤホンで音楽を聞くことを直接禁止する条文は、道路交通法にはありません。
ただし、道路交通法には、運転者の遵守事項として、各地の公安委員会が定めた事項を守らなければならないという規定があります。
多くの都道府県公安委員会が、運転中のイヤホンの使用に関して規制をしています」
どんな規制だろうか?
「たとえば、東京都道路交通規則には、次のように書かれています。
『高音でカーラジオ等を聞き、またはイヤホ-ン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音または声が聞こえないような状態で車両などを運転しないこと』
これらは、大音量あるいはイヤホン等で音楽を聞きながら、周囲の音が聞こえない状態で運転をすることが、交通事故の発生など危険性が高いことから、規制されたものです」
●周囲の音が「聞き取れるかどうか」がポイント
そうなると、イヤホンを着用しての運転はダメということだろうか?
「この『安全な運転に必要な交通に関する音または声』とは、クラクション(警報器)や緊急自動車のサイレン、警察官の声などをいいます。
したがって片耳でイヤホンを使用している場合や、両耳であっても周囲の音・声が聞こえる程度の比較的小さな音量で使用する場合には、違反にはなりません」
つまり、運転上重要な音が聞き取れるかどうかが、ポイントというわけだ。
「自動車やバイクを運転中に同規制に違反した場合は、反則行為として、交通反則切符で手続(反則金の納付)がされることになります。
なお、この規制は、一般的に『車両』の運転者を対象にしていますので、自動車やバイクだけでなく、自転車の運転者も規制の対象になります」
前島弁護士はこのように注意を呼びかけていた。