2017年12月13日 10時00分

アイドルファンの遠征で横行する「キセル手助け」の常套手段「MK」、どんな罪?

アイドルファンの遠征で横行する「キセル手助け」の常套手段「MK」、どんな罪?
画像はイメージです(トラステア / PIXTA)

アイドルグループ「HKT48」や声優のファン仲間が、各地で開かれるイベントやコンサートのために、新幹線を利用する際、交通費を浮かせるためにキセルを手伝っていたとして11月下旬、無職の男性と都内の男子大学生が逮捕されたと報じられた。キセルをしていた男性会社員ら3人も、書類送検されている。

無職の男性は9月11日、JR東京駅構内で、入場券のみで新幹線に乗車して来た男性会社員ら2人と待ち合わせて入場券を渡し、自動改札機を通過させて、広島駅からの電車賃を免れさせた疑い。男子大学生は9月17日、新幹線で岡山駅から乗った別の会社員男性のキセルを助けようと、東京駅改札内に侵入した疑い。

こうした手口は、ファン仲間の間で「MK 」(迎え)と呼ばれ、SNSのネットワークで横行しているという。一体、どのような罪に問われるのだろうか。甲本晃啓弁護士に聞いた。

●有人改札だったら「詐欺罪」自動改札だったら「電子計算機使用詐欺」

今回、キセルを助けた無職の男は「電子計算機使用詐欺容疑」、男子学生は「建造物侵入容疑」で逮捕され、キセルをした会社員3人は「鉄道営業法違反」で書類送検されたと報じられている。キセルをした場合と、キセルを手助けした場合と、それぞれどのような罪にあたる?

「『キセル』とは、入場券や隣駅までの乗車券を使って乗車駅の改札を入場し、下車駅では別の乗車券などを使って出場して、正規の運賃の支払いを免れる行為をいいます。

キセル行為により、有人改札や窓口から出場した場合には、係員を騙して正規運賃の支払いを免れて財産上の利益を得ているので『詐欺罪』(刑法246条2項)が成立し、今回のように自動改札から出場した場合には『電子計算機使用詐欺罪』(刑法246条2)が成立します。どちらも10年以下の懲役刑にあたる犯罪です。

『詐欺罪』は人を騙すことが要件ですが、自動改札機は機械ですので『人を騙す』という行為が観念できません。刑法が作られた明治時代には機械の不正操作によって利益を得るという事態は想定されていませんでした。

それでは困るということで、今から30年ほど前、偽造テレホンカードが横行したのを契機に『電子計算機使用詐欺罪』が設けられました。キセルについては、正しく入場したものでない乗車券を自動改札機に投入することが、電子計算機の不正操作にあたると判断して『電子計算機使用詐欺罪』の成立を認めた裁判例があります」

会社員3人は「鉄道営業法違反」で書類送検されたが、なぜ?

「若干の補足が必要でしょう。まず、この事件で『鉄道営業法違反』として書類送検された会社員3人は、今後『鉄道営業法違反』で起訴され、略式命令という簡易な手続で罰金刑が課されると予想されます。『鉄道営業法違反』とは、おそらく同法29条1項1号『有効ナ乗車券ナクシテ乗車シタルトキ』にいう不正乗車をいい、2万円以下の罰金または科料にあたる犯罪です。

会社員らは、いずれも迎え役から渡された入場券を使った出場したようですので『電算機使用詐欺罪』が成立するように思われますが、なぜ『鉄道営業法違反』で処罰されるのかという点に、疑問に感じる方も多いと思います。

検察官は、行為態様や被害弁償・反省状況など一切の事情を考慮して、重い罪にあたる犯罪事実であっても、軽い罪で起訴することができます。キセル行為の前科の有無や常習性の評価、不正乗車による割増運賃の支払による被害弁済の有無など様々な事情が考慮された結果として、『鉄道営業法違反』として取り扱われているのだと思います。

少し難しい法律の話をすると、『電算機使用詐欺罪』で起訴されれば、裁判官が選択できる刑は懲役刑だけになります。過去の裁判例からみて、会社員らが同罪で起訴されれば執行猶予つきの懲役刑となる可能性が高いでしょう。執行猶予とは、ある期間内に犯罪を重ねなければ実質的には今回の犯罪について処罰を受けないことを意味するので、本件の社会的影響力を考えると、にわかに受け入れられにくい結論だと思います。

他方、『鉄道営業法違反』による罰金刑であれば、現実に罰金が課されるので、それなりの痛みを伴います。今回捜査を指揮している検察官の胸の内に、もしかするとそういった考慮があるのかもしれません」

逮捕された迎え役2人はどうなる?

「2人については、単にキセルを容易にしただけであれば『電算機使用詐欺罪』の『幇助(ほうじょ)犯』として刑の減軽がなされますが、主体的にキセル行為を手引きしたという場合には『共同正犯』となり自らキセル行為をしたのと同じ評価を受けます。この2人は、繰り返し他人にキセル行為を手引きして、手数料として利益を受けていることから『共同正犯』にあたると考えられます。そして、手引きした回数によっては、数年の懲役刑が課されることも十分想定されます。

なお、キセルを手引きする目的で駅構内へ立入った行為については『建造物侵入罪』が成立します。『建造物侵入罪』で逮捕された男子学生については、おそらく改札口の防犯カメラ画像やICカードの入場記録などを疎明資料として、警察が『建造物侵入罪』で逮捕状を請求したものと思われます。ですが、この男子学生も『電算機使用詐欺罪』での取り調べを受けると思われます。

鉄道の定時かつ安全・快適な運行を支えるのは運賃収入です。目的地まで正しく切符を購入するのは当然で、キセル行為は出来心では決して済まされない犯罪です」

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

甲本 晃啓弁護士
東京・日本橋兜町に事務所を構える理系弁護士・弁理士。鉄道に関する造詣が深く、鉄道模型メーカーの法律顧問を務める。著作権・商標権が専門。企業法務を中心としつつ、インターネットでの法律相談を精力的に行っている。
事務所URL:http://komoto.jp

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