有名人による薬物犯罪が後を絶たない。7月には、ロックバンド「C-C-B」の元メンバーの男性と、ダンスボーカルユニット「ZOO」元メンバーが、覚せい剤を所持していた、譲り受けたとして、あいついで逮捕された。
そんななか、ニュースサイト「日刊サイゾー」が、2人の逮捕容疑が「覚せい剤取締法」と「麻薬特例法」と違うことをクローズアップした記事を掲載した。記事によると、「覚せい剤事件は現行犯逮捕が基本」だったが、「麻薬特例法は現物がなくても、容疑者が薬物を購入した証拠があれば逮捕できる」そうだ。
両者にはどのような違いがあるのだろうか。薬物問題にくわしい星野学弁護士に聞いた。
●処罰の対象が広がった
「麻薬特例法は、もともと『麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約』を実施するために、国内で制定された法律です」
星野弁護士はこのように述べる。なぜ、こうした法律がつくられたのだろうか。
「おおざっぱに説明すれば、次のようなことです。『薬物の氾濫という人類に対する脅威を除去するためには、薬物の所持・使用等を処罰するだけでは足りない』と考えられてきました。
そこで、『処罰の対象となる行為の範囲を広げよう』『薬物犯罪で不正な利益を得た場合にはそれをはく奪しよう』『そのためには国同士が協力しよう』ということで、世界の国々が条約を締結しました。我が国も国内法を整備するために、麻薬特例法が制定されたのです」
具体的には、どんな特徴があるのだろうか。
「たとえば、実際には薬物を持っていなくても、薬物を売るような宣伝・広告をすれば『あおり・そそのかし』として処罰の対象となります。
また、薬物犯罪で得た不正な利益については、口座を凍結して没収することができます。
さらに、諸外国では行われていながら日本では行われていなかった『コントロールド・デリバリー』などの捜査も可能となりました」
●「コントロールド・デリバリー」とは?
「コントロールド・デリバリー」とは、どのようなものなのか。
「外国から届いた荷物の中に薬物が入っていることを捜査機関が知った場合、薬物を抜き取って荷物を配達させておいて、受け取った人を逮捕するという捜査手法です。
つまり、受け取った中身が、ただの小麦粉だったとしても、薬物を入手しようとしていた人を処罰できるということです」
覚せい剤取締法など、従来の法律ではできなかったことなのか。
「覚せい剤取締法違反などでは、実際に薬物を所持していなければ、立証などの問題から、処罰することは困難です。
これに対して、麻薬特例法であれば、『以前は薬物を所持していたが、今は所持していない』という状況であっても、処罰することが可能なのです。
このほど逮捕されたZOOの元メンバーの男性も、麻薬特例法違反で逮捕されているようです。これは、現在は薬物を所持していないけれど、密売人の供述や携帯電話の履歴・メモリーなどから過去に薬物を購入したことが証拠により裏付けられたケースだと推測されます」
星野弁護士はこのように分析していた。