7月の猛暑日、小学生が会計前のカルピスをガブ飲みーー。都内の大学に通うNさんは、一瞬目を疑う光景に遭遇した。
Nさんによると、スーパーで買い物中、母親と買い物をしていた小学生の男児が、我慢できずカルピスを飲んでしまったそうだ。母親は「後から払えばいいし、大丈夫よ」と慌てる様子もなかった。
飲食店の食事であれば、後払いが一般的だが、スーパーで会計前の商品を飲食した場合、窃盗罪にはあたらないのか。石井龍一弁護士に聞いた。
●「後から払えばいい」は通用しない
「『他人が占有する財物を、占有者の意思に反して、自己の占有に移転させる』と、窃盗罪が成立します」
カルピスは店の占有物ではないのか。
「スーパーで売られているカルピスも『財物』であり、店内に置かれている間は、店が占有していることになります。
客がレジに持って行って代金を払えば、カルピス(=財物)は、客の占有に移ることになります。しかし、代金を払う前に飲んでしまえば、まだ店側が占有しているカルピスを、客が店側の意思に反して、自己の占有に移転させることになってしまいます。
これは、紛れもない窃盗行為です」
母親は、「後から払えばいいし、大丈夫よ」とさほど気にしていなかったが・・・。
「そう思う人もいるかも知れませんが、いったん成立した窃盗罪は、その後に代金を払ったりお金で弁償したりしても、なかったことにはなりません」
小学生の子どもがやったことについては、親の責任になってしまうのか。
「子どもが犯罪を犯したとしても、その親が刑事責任を問われるわけではありません。しかし、民事上の責任としては、親は子の監督責任がありますから、子どもがやったことについて親が監督義務違反として損害賠償責任を負うことになります」