東京・中野の中古ショップ「まんだらけ」が8月5日、鉄人28号のブリキ製人形を盗んだ人物の顔写真を公開すると宣言し、話題を呼んだ事件。騒動が始まってから2週間がたった19日、50歳のアルバイト男性が、窃盗の疑いで警視庁に逮捕された。
報道によると、警視庁は18日、同じ型の人形を中野区の古物店で発見した。この店に人形を売った男性が、まんだらけの防犯カメラに映っていた人物に似ていて、取引の際に保険証を提示していたことから、捜査線上に浮上したという。人形は、6万4000円で古物店に買い取られていたそうだ。
古物店は、容疑者の男性から人形を買ったようだが、その場合、人形はまんだらけに戻ってくるのだろうか。それとも、買った店のモノになるのだろうか。田村勇人弁護士に聞いた。
●人形は「まんだらけ」に返還される
「今回、報道されている通りの状況であれば、古物店は、盗まれた鉄人28号の人形を無償で『まんだらけ』に返さなければならないでしょう」
どういうルールで、そうなるのだろうか?
「まず、もし『盗まれた品であることを知っていて』買い取った場合は、『盗品等有償譲受け罪』という犯罪行為になります。
一方で、『買い取った品物が盗品だということを知らず、知らなかったことについて過失もなかった』(これを善意無過失といいます)場合、犯罪にはなりません」
その場合、古物店としては、悪いことをしたわけではない。それなのに、品物を返さなければならないのだろうか?
「そうですね。
通常の取引をして、善意無過失で品物を手に入れた場合、手に入れた側は、すぐに所有権を得るというルールがあります(民法192条)。
ただし、これには例外があります。品物が盗まれたときから2年以内なら、盗られた人は、いま品物を持っている人に対して、無償で『品物を返して』という返還請求ができるんですね(同193条)。
したがって、古物店は、まんだらけに対して、タダで品物を返さなければならないのです」
●古物商を営むには「許可」が必要
そうなると古物店は大損だ。
「古物店が善意無過失なら、盗品を売った人に対して『お金を返せ』と請求できますので、まるまる損をするわけではありません。実際に返済されるかどうかは、別問題ですが・・・」
古物店を営むためには、その物品が盗まれた品かどうかを見抜く力も必要となってきそうだ。
「そうでしょうね。
なお、古物商を営業するには、公安委員会の許可が必要です。
また、古物商には、取引相手の身元確認をし、取引記録を保存し、さらに盗品等を発見した場合は警察に届け出る義務も負っています
盗み行為や、盗品が売買されることを防ぎ、被害をすばやく回復するために、こうしたルールがあるのですね」
●盗まれた品を見つけても「絶対買ってはいけない」
今回は、古物店で売られている盗品を、警察が発見したということだが、もしこれを何も知らない一般人が古物店から買っていたら、どうなったのだろうか?
「その場合、『まんだらけ』は、『品物を返して』と請求できますが、それは一般人が古物店に支払った代金の弁償と引き替えになります(民法194条)。つまり、プロの商人と取引した一般人は、手厚く保護されるわけです。
なお、たとえ一般人であったとしても、盗まれた品だと知った上で品物を買ったり、譲り受けたり、保管したり、運んだりした場合には、『盗品等関与罪』として犯罪になってしまいます。
もし何かのきっかけで『盗まれた品』が売られているのを見つけたら、絶対に買ったりしないで、警察に通報しましょう」
田村弁護士はこのように注意を呼びかけていた。