「援助交際」で男性が摘発されるケースが後を絶たない。今年6月には、東京都内の私立高校の教師が、出会い系サイトで知り合った当時17歳の女子高生に2万円を渡す約束をしたうえでみだらな行為をしたとして、児童買春の疑いで逮捕されている。
同じようなケースは他にも発生している。警視庁の調べによると、出会い系サイトに起因する児童買春の検挙数は、2013年には123件にのぼったという。
一方、ある掲示板サイトには、「よく援助交際でオジサンが捕まるけど、女子高生とかには何も罪ないのかな?お金目当てで体売って、相手だけ罪に問われるのは、なんか違う気がする」という疑問の声も書き込まれていた。
たしかに、学校などでは「援助交際をしてはいけない」といわれる。女子高生が自分から援助交際を持ちかけていたとしても、処罰されることはないのだろうか。加藤英典弁護士に聞いた。
●「買った側」だけが処罰される理由とは?
「援助交際を持ちかけた女子高生は、処罰されません」
加藤弁護士はこう切り出した。なぜだろうか?
「売春禁止法は『何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない』(同法3条)と規定し、売春と買春を禁止しています。しかし、売春自体や買春を処罰する規定は、売春禁止法には存在しません。売春と買春は、違法ではあるけれど、それ自体は犯罪ではないというグレーなものです」
それでは、いわゆる「援助交際」は何の法律で処罰されているのだろうか。
「援助交際を処罰しているのは、『児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律』という、1999年に成立した比較的新しい法律です。この法律でいう『児童』とは、18歳未満のことです。
この法律は、『児童買春をした者』は刑罰に処せられる(同法4条)と規定し、児童を相手にした買春を犯罪としました」
買春というのは、「買った側」のことだ。児童「売」春をした側が処罰されない理由は何だろうか?
●児童は「守られるべき」存在
「この法律が、『児童買春をした者』を処罰する一方で、『売春をした児童』を処罰しない理由は、そもそもこれが『児童の権利を守ること』を目的とする法律だからです。
児童が売春をして、体や心に大きな傷を負うという事態を防ぎ、児童の権利を守るための法律ですから、守られるべき児童を処罰する規定は存在しないのです」
つまり、援助交際は「持ちかけられた側」が防ぐべきということか。
「そうですね。女子高生の側から援助交際を持ちかけられたとしても、それを毅然として断ることが大人の男性に求められている態度といえます」
加藤弁護士はこのように強調していた。
なお、援助交際をする児童は、警察が行う「補導」の対象となっている。最近では、ネット上の書き込みなどを手がかりに、警察が「サイバー補導」も実施している。