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夫の奨学金「なんで私も返さないといけないの?」 家計から支出に不満の妻
画像はイメージです(asaya / PIXTA)

夫の奨学金「なんで私も返さないといけないの?」 家計から支出に不満の妻

結婚前に夫が借りた奨学金は、妻も返済を協力しないといけないのか——。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の夫は、借りていた奨学金の返済を結婚後も続けていました。返済するためのお金は、夫婦でまとめて管理している「家計」から出したそうです。

しかし、相談者は、結婚前に借りた奨学金なら、夫個人の財布から返済すべきで、自分も協力して家計から出す必要はなかったのでは、と疑問に思ったようです。

奨学金を借りた本人に収入や貯金がない状況もあり得ます。夫の奨学金について、妻にも返済する責任があるのでしょうか。有坂秀樹弁護士に聞きました。

●妻には夫の奨学金を返済する義務なし

——妻(相談者)に夫が結婚前に借りた奨学金の返済義務はありますか。

夫婦にはお互いに扶養義務があるので、夫の奨学金の返済は、一見すると妻にも支払う責任があるとも考えられます。

しかし、夫の奨学金は、妻と結婚する前からの借金です。夫婦の扶養義務は、結婚前から負担していた配偶者の借金の返済まで負担させるものではありません。

そのため、妻には夫の奨学金を返済する義務はありません。

——仮に奨学金を借りた本人に収入や貯金がない場合でも同じでしょうか。

奨学金を借りた本人に収入や貯金がないからといって、配偶者に返済義務が当然に生じるわけではありません。

ただ、結婚する段階でそういった状況になることがある程度予想できるのであれば、「奨学金の借入残高がこれだけあり、今後も長期間返済が継続していく」ということをあらかじめ教えてもらい、返済をどうするのかなどの対応を決めておくとよいと思います。

——支払いが滞るとどうなりますか。

通常、奨学金の貸与を受けるためには、両親や親戚が保証人となっていることが多いです。支払いが滞れば、保証人に督促がいくことになります。

なお、日本学生支援機構の奨学金の場合、延滞前であれば、申請により月の返済額を減らす減額返還制度もあります。また原則として1年単位ではありますが、産休・育休・失業などを理由に返還期限の猶予を申請できる制度があります(最長10年)。猶予が認められますと、その期間の利息・延滞金は発生しません。

ただ、最終的には、奨学金を借りた本人が支払う義務があります。本人に収入や貯金がない場合は、当面、この猶予制度を利用して、利息・延滞金が積み重なることを防ぎながら、将来の返済手段を考えてもらうことになるかと思います。

(弁護士ドットコムライフ)

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プロフィール

有坂 秀樹
有坂 秀樹(ありさか ひでき)弁護士 林・有坂・伊藤法律事務所
離婚・相続・債務整理など一般市民の法務から、不動産賃貸、契約書や利用規約作成・労務管理等の中小企業法務まで幅広く業務を手がけている。 共著に「実践 法律相談 面接技法のエッセンス」(東京大学出版会)。

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