嶋田 幸司 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
今から15~16年前の大学生の頃の話ですが、その頃は、これからは専門性を身につけなければ生き残れない、と言われ始めた時代だったように思います。
将来どのような職に就くかを考えたとき、専門職といえば、ということで選択肢の一つとして弁護士が思い浮かびました。法学部に所属していたことももちろん影響しています。
当時、司法試験は合格率が極めて低い試験であり、何年も司法浪人を続けている方がいらしたのは分かっていましたが、何となく、自分はいずれ受かるんだろうな、と軽く考えて勉強を始めました。裁判官や検事は全く考えていませんでした。具体的に何々の弁護士業務をしたい、ということでもありません。ただ漠然と、社会的意義のある仕事ができるのではないかと期待はしていました。
実際に弁護士になってみると、それほど格好のいい仕事でもないというのはすぐ分かると思いますが、周囲から法律専門家として尊重していただける局面が多々あるというのも実感するのではないでしょうか。
今までの経験
東京では企業法務を中心に、特に金融機関のコンプライアンス対応等の業務に従事していました。また、任期付公務員として金融庁に出向した経験もあります。
現在は、活動拠点を三重県に移し、中小企業や個人の案件を幅広く扱っています。
弁護士としての信条と依頼者との信頼関係の築き方
当然のことですが、依頼人にとって何がベストの解決かという点を常に念頭に置いています。
信頼関係ですか・・・難しいですね。弁護士と依頼人との関係がどのような状態にあれば信頼関係があると言っていいのか、私には良く分かりません。ただ、依頼人の要望に振り回されて言いなりになっているような関係は、少なくとも信頼関係があるとは言えないと思います。
また、事案によっては、依頼人の要求が適切とは思えない場合もありますので、そのような場合には一時的に依頼人と衝突したとしても仕方ありません。このような場合も信頼関係があるとはいえないと思いますが、説明や説得を試みても納得してもらえないのであればそれ以上事件処理を進めることはできないと思います。
東京から三重へ移ったきっかけと、三重に移って感じたこと
以前は東京の大手法律事務所で働いていましたが、東京の限界を感じました。これには、東京での仕事の仕方に拭いがたい違和感を覚えた自分の内面的な限界という意味もありますが、同時に東京という都市の限界を感じたという意味もあります。
東京は、効率性を極限まで追求し、人やモノをかき集め最高度に都市化を実現しました。そこには、この上なく快適な側面があることは否定しませんが、絶えず沸き起こる不安と闘わなければならない現実もあります。
東京は物質主義に偏重してしまい、それでもいいという一部の人以外の、普通の感性を持った人にとっては住みづらい街になってしまったのではないでしょうか。今後は、東京に集めすぎた人やモノを地方に戻し、もう少し小さな規模の都市を、数多く活性化させる方が、日本全体にとって為になるのではないかと思います。
その実践として、というと大袈裟ですが、このような思いもあり、三重に活動拠点を移しました。数ある地方の中で何故三重かというと、たまたま父親の出身地だったという理由に過ぎません。
三重に来て感じたのは、東京とは弁護士が必要とされる度合いや場面が違うことです。
東京の大企業は、人的・物的に充実した法務部を抱え、弁護士に相談する前に何が法律的な問題なのか篩い分けをし、論点を絞った上で依頼することが多かったように思います。大企業にはその能力が備わっています。
しかし、中小企業や、個人の依頼人だと、リソースの問題もあり、何が法律的な問題となるか日常業務の中で適切に把握することは困難と言わざるをえません。法律的な問題が潜んでいることを認識する機会が乏しいのです。
依頼人と何気なく交わした会話の中に、法律的な問題が不意に顔を覗かせることも少なくありません。従って、依頼人の話を聞いて早合点せず、時間の無駄と思わずある程度時間をかけて事情を聴きとる必要があります。
また、個人で受任していると、事件の処理について他に助けてくれる人はいませんので、自分が最後の防波堤であるという自覚が出てきます。適切な対応をしなければ依頼人の深刻な不利益に直結しかねません。その意味で責任も大変重いのですが、うまく処理できたときの達成感・満足感は責任の重さに比例して大きくなるのではないかと思います。
このように、中小企業や個人の方は、大企業以上に弁護士が必要な状態にあるといえるのですが、残念ながら、そのような状態にあるにもかかわらずうちは必要ないと考えている方が多いのが実際です。
今後の弁護士業界の動向
弁護士を目指す方は、社会に貢献したいという気持ちが比較的強い人が多いと思います。私もそういった初心を忘れずに弁護士業に従事していきたいと思っています。社会への貢献といっても様々な形がありえますが、最も直接的で異論も少ないのは、全く金にならない事件や、公益活動に時間を割くことだといえるでしょう。
現在進行形の問題は、このような活動に時間を割くことが難しくなっている弁護士業界の実態です。その原因は、いうまでもなく弁護士人口の激増です。このまま弁護士人口が増加していくと、従来の弁護士の業務スタイルも変わらざるをえません。従来の弁護士は、効率性を度外視して公益活動を行う時間的・金銭的余裕がありました。いわば、公益活動は弁護士業務の非効率性に依存していたといえます。
しかし、弁護士人口の増加とそれによる競争の激化は、業務が効率的であることを要求し、それが行き過ぎると、目に見える効果があるとは限らない公益活動全般について、無駄という見方につながってしまうおそれがあります。気持ちの面では公益活動を行いたくても、環境が許してくれない、そんな事態を危惧しています。
現在進められている弁護士人口の増加は、供給を増やせば競争が生まれて良質なサービスが残るという発想に基づいて行われているため、食えない弁護士が出ることは織り込み済みだといえます。ですので、弁護士の就職問題が騒がれていますが、根本の発想に照らすと、むしろ当然のことなのです。問題視すべきなのは、需要を軽視して供給サイドに偏った根本の発想なのだと思います。
私としては、様々な弊害が指摘されている現状や弁護士の本来的な役割を考えると、弁護士の人数を実態に合った人数にする必要があると考えています。
ページを見ている方へのメッセージ
地方の弁護士として、地域の活性化に一層取り組んで参ります。