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「手当がもらえるなら・・・」 残業代を求める若者は「社会をなめている」のか?
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「手当がもらえるなら・・・」 残業代を求める若者は「社会をなめている」のか?

残業はいとわないが、それに見合った処遇を――。こうした考えの若者が増加していることを指摘した調査結果が、ネット上で議論を呼んでいる。

話題となったのは、日本生産性本部・日本経済青年協議会が、2014年度の新社会人約2200人を対象に実施した「働くことの意識」調査。「残業についてどう思うか」という質問に対して「手当がもらえるからやってもよい」と答えた若者が69.4%と過去最高だった。一方、「手当にかかわらず仕事だからやる」は下降線をたどっており、今回23.7%にとどまった。調査報告書は、「残業はいとわないが、それに見合った処遇を求めている傾向がうかがえる」とまとめている。

この調査結果に対して、ネットの掲示板サイトでは、「金貰う為に働いてるのに貰えない分まで仕事する意味がわからん」といった意見がある一方で、「残業代が欲しいなら、残業代が払えるほど利益を会社に与えろ」「まだロクに仕事も覚えてないのに…」「社会なめすぎ」といった意見もあった。

新社会人が残業代を請求することは、本当に「社会をなめている」のだろうか。たとえば、会社側は、新入社員から残業代を請求されたとき、「まだ一人前の仕事ができてないから払いません」と言えるのだろうか。労働問題にくわしい波多野進弁護士に聞いた。

●「残業代の支払いを逃れる口実」になっている

「会社は社員に対して、『まだ一人前の仕事ができてないから、残業代は払わない』と言うことはできません」

波多野弁護士はキッパリと述べる。

「労働基準法では、週40時間・1日8時間の『法定労働時間』が定められています(32条)。

使用者がこれを超えて業務をさせた場合、時間外割増賃金(残業代)が発生します。

これは新人社員であろうが、熟練社員であろうが、同じです」

しっかりルールが定められているわけだ。では、なぜキチンと残業代を払わない会社が横行しているのだろうか。

「『半人前には残業代を払いません』というのは、単に残業代の支払いを逃れる口実にすぎません。

法定労働時間では到底こなしきれない業務を指示しておきながら、『時間内にできないのは能力不足だ』と指摘して、残業代を払わないというやり方は、いわゆる『ブラック企業』で横行しています。

社会に出たばかりの新人社員は、右も左もよく分からない状況です。会社からしてみれば、手玉に取りやすい相手といえるでしょう」

●残業代を支払わない会社は「労働基準法をなめている」

「『社員が働いた分の賃金をきっちり支払う』というルールは、労働契約で最も基本的なルールです。むしろ問題なのは、それを守らない会社のほうでしょう。刑事罰も存在する労働基準法が軽んじられていると思います」

だが、そうなると、社員が「好き勝手に残業」するようになり、会社側が損をするのでは?

「会社は適正な業務量を設定したり、業務指示によって『残業をさせない』ことができます。

そもそも、『業務上の必要もないのにする残業』や『会社の指示に反する残業』についてまでは、残業代は発生しません」

働かせた分はしっかり払うのが、社会のルールということか。

「そうですね。法定の労働時間を超えて働かせておきながら、残業代を支払わないのは、企業が『労働基準法をなめている』ということになるでしょう」

波多野弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

波多野 進
波多野 進(はたの すすむ)弁護士 同心法律事務所
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。

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