弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 労働
  3. 解決方法・相談先
  4. 「追い出し部屋」に入れられた会社員 「元の部署に戻してくれ」と要求できるか?
「追い出し部屋」に入れられた会社員 「元の部署に戻してくれ」と要求できるか?
労働法規の規制を掻い潜る脱法的手段として、追い出し部屋を設けている企業がある

「追い出し部屋」に入れられた会社員 「元の部署に戻してくれ」と要求できるか?

リストラ対象者を隔離された部署に移して、本人が納得できる仕事を与えず、自主退職を促す――。こうした「追い出し部屋」の存在が明るみになってきているが、もし自分がそんな部署に異動させられた場合、どうすればいいのだろうか。

インターネットのQ&Aサイトにも、「追い出し部屋」に移されたという男性の悩みが寄せられている。この男性はもともと事務職だったが、この春の異動後は荷物運びや事務機器の修繕、会社周りのドブ掃除などの仕事が中心になったという。服装もスーツから作業着に変わるなど、環境も大きく変わったそうだ。

もちろん、先の見えない状態に耐えかねて、自主的に退職するケースもあるだろうが、この男性は「前の課に戻りたい」と悩みを打ち明けている。彼のように退職したくない場合、どう対応すればいいのだろうか。労働問題にくわしい河野祥多弁護士に聞いた。

●配置転換が「無効」だとされる場合も

「配置転換は必ず有効だとは限りません。それが有効とされるためには、(1)その根拠があり、(2)裁量の範囲内であり、(3)権利の濫用にあたらないことが必要です」

河野弁護士はこう切り出した。(1)~(3)を判断するためのポイントは、どんなものだろうか?

「配置転換が有効かどうかを判断する際に、ポイントとなるのは、主に次のような諸事情です。

(a)配置転換前後の業務内容

(b)配置転換の必要性

(c)社員の受ける不利益の大きさ

(d)不当な目的や動機の有無」

具体的なケースでいえば、どうだろう?

「たとえば、事務職の人をいきなり、荷物運びやどぶ掃除を担当させるような場合には、配置転換の必要性があったのかどうかという点が問題となります。

また、給与や就業環境の変化によって、社員の受ける不利益があまりに大きければ、無効とされる場合が多いでしょう。

したがって、納得できない配置転換をされた場合には、会社側に対して、その根拠と必要性を説明するように、強く主張していくことが大切です」

●長い目で見た場合に何がベストなのか

そうすると、場合によっては、元の職場に戻してもらえる可能性もある?

「そうですね。同じような境遇の人や労働組合等とも協力関係を築き、毅然と一貫した対応を取ることで、元の職場に戻れることもあるでしょう」

河野弁護士はこのように述べつつも、そうした状況になった場合には色々な選択肢を考えてみるべきだとして、次のようなアドバイスを送っていた。

「ただ、そうした状況になってしまったら、単なる労働問題ではなく、自分の人生の問題として捉えるべきでしょう。そして、長い目で見た場合に何がベストなのかという観点から、いろいろな解決方法(退職も含む)を家族で話し合っていくことが大切かと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

河野 祥多
河野 祥多(こうの しょうた)弁護士 むくの木法律事務所
2007年に茅場町にて事務所を設立以来、個人の方の相談を受けると同時に、従業員100人以下の中小企業法務に力を入れている。最近は、ビザに関する相談も多い。土日相談、深夜相談も可能で、敷居の低い法律事務所をめざしている。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする