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「38度の熱」でも出社する社員が3割――給料を減らされたくなければ働くしかない?
熱をおして出社しても、はたして仕事になるのだろうか

「38度の熱」でも出社する社員が3割――給料を減らされたくなければ働くしかない?

熱が出ても会社を休まない——。こうした考えの会社員が少なくないことが、「web R-25」が11月末に発表した調査結果で明らかになった。20〜30代の会社員226人に調査したところ、「熱が38度あっても出社する」と回答した人が3割を占めた。

この結果に対して、ネットでは「社会人なら、熱があっても出社するのが当然」「40度超えるまで休むな」という声がある一方で、「無理せず休む」「無理してサービス残業して体壊して以来、体調悪くなったら遠慮なく休むようにしている」という声もあった。

熱があっても出社する理由として、「給与が減らされるから」と考える人もいるようだ。やはり病欠の場合、給与は休んだ分だけ減らされるのだろうか。減らされたくなかったら、有給休暇を取得するしかないのだろうか。労働問題にくわしい野呂圭弁護士に聞いた。

●欠勤分の給与は「支給されない」のが原則

「給与は『労働の対価』です。病気による欠勤のように労働者・使用者双方に非がない場合、欠勤日数分の給与は支給されないのが原則です(民法536条1項)。

したがって、給与を減らされないためには、年次有給休暇を取得する必要があります」

野呂弁護士はこう述べる。有給休暇を使い切ってしまっていたり、「病気で有給を消化したくない」という人は、給与が減らされても仕方ないということだろうか。

「会社によっては、病欠の場合に給与減額をしない月給制を採用しているところや、病欠による給与減額分に対応する扶助を支給するところもあります。

自分の会社の就業規則や賃金規程、社員扶助規則などを確認してみるとよいでしょう」

●会社から「休め」と言われたら?

逆に、会社から「休みなさい」と言われた場合は、どうだろうか。

「インフルエンザのように、他の従業員への感染のおそれがあるような場合であれば、仕方ありません。

しかし、『少し熱がある』程度の労働者を会社が休ませる場合には、労働基準法26条の『使用者の責に帰すべき事由による休業』にあたる可能性があります。

こうした場合、休業手当を支払う義務があるでしょう。休業手当は、賃金の6割以上の額を支払う必要があります」

職場環境が悪くて病気になった場合は、どうすればいいのか。

「使用者は、労働基準法や安全衛生法などで、職場の衛生や労働者の健康に配慮するよう求められています。

使用者が職場の不衛生を放置していたり、インフルエンザ等の感染を防止する措置を怠っていたような場合、『使用者の責に帰すべき事由』として、休業手当の支払義務が生じる可能性があります」

野呂弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

野呂 圭
野呂 圭(のろ けい)弁護士 仙台中央法律事務所
2000年10月に弁護士登録。業務分野は、一般民事、家事、刑事のほか労働事件(労働者側)など。また、仙台市民オンブズマンの活動もしている。

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