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最高裁大法廷が判例変更「労災の遺族補償年金は、損害額の『元本』から差し引くべき」
最高裁判所

最高裁大法廷が判例変更「労災の遺族補償年金は、損害額の『元本』から差し引くべき」

労災をめぐる損害賠償事件で、先に遺族補償年金が支払われた場合、その分は損害額の「元本」から差し引くべきか、あるいは「利息(遅延損害金)」から差し引くべきか。そのような論点について、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は3月4日、過去の最高裁の判例を変更して、「元本から差し引くべき」という判断を示した。

この訴訟では、過労による精神障害が原因で2006年に死亡し、労災認定された男性の遺族が、会社に損害賠償などを求めていた。安全配慮義務を怠った会社側が損害賠償を支払うことについては、2審までに確定していたが、支払額について争いがあった。

男性の遺族はすでに「遺族補償年金」を受け取っているため、損害賠償の支払額を計算するにあたっては、遺族補償年金の分を差し引く必要がある。裁判で問題となったのは、損害額の「元本」から差し引くのか、それとも「利息(遅延損害金)」から差し引くかだ。どちらから差し引くかによって、支払額が変わってくるのだ。

最高裁大法廷は「遺族補償年金は、同性質で相互補完性がある元本との間で、損益相殺的な調整を行うべきだ」として、利息から差し引くことを認めた2004年の最高裁第2小法廷判決を「変更すべき」とした。

元本から差し引くほうが、損害賠償の支払額が少なくなり、被害者(労働者)にとっては不利になる。男性側代理人の川人博弁護士によると、今回のケースでは約200万円の差があったという。

●最高裁の判断が分かれていた

この論点については、2004年の最高裁第2小法廷判決が「利息から差し引く」としたのに対して、2010年9月・10月に出された2件の最高裁小法廷判決は「元本から差し引く」としていた。そのため、下級審でも判断が分かれており、今回の裁判でも1審は利息充当、2審は元本充当の判断を下していた。

川人弁護士は判決後の記者会見で「主張が受け入れられなかったのは残念だ。今回の最高裁判決は、抽象的な言葉が並んでいるだけで、実質的な判断が読み取れない。被害者救済よりも実務の効率性を重視したのではないか」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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