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スタバに呼び出され「退職勧奨47回」長期自宅待機の男性、解決金1400万円で和解
原告の男性

スタバに呼び出され「退職勧奨47回」長期自宅待機の男性、解決金1400万円で和解

2年間の自宅待機を命じられたうえ、執拗な退職勧奨を受け、一方的に解雇を言い渡された男性が、会社に対して解雇無効や自宅待機中の差額賃金など1431万円を求めた裁判で、男性と会社の和解が成立した。原告である30代の男性・Aさんと代理人弁護士は6月10日、東京・霞ヶ関の厚生労働省記者クラブで会見を開いた。

原告代理人の三浦直子弁護士は「今回の和解では、会社に対し、解決金として(請求のほぼ満額である)1400万円の支払いが認められた。追い出し部屋以下の扱いをして、理由のない退職勧奨をすれば、こういうペナルティがつくということで、企業に対する抑止力になる」と裁判の意義を語った。

5月下旬に成立した和解では、会社側が解雇の意思表示を撤回しつつ、Aさんが今年5月31日付けで退職を受け入れる内容となっている。その代わり、会社は解決金として、Aさんに1400万円を支払うというものだ。

●「精神的にまいるから早く辞めたらどうだ」

訴状などによると、原告のAさんは2010年6月、音楽関連企業に正社員として入社し、経理部門を担当していた。ところが翌年の6月、同社が立ち上げた24時間営業のそば屋への異動を突然命じられ、飲食店での勤務経験がまったくないにも関わらず、立ち上げから担当することになった。

さらにその半年後、同社から「業績不良」を理由に「一時的な自宅待機」を命じられた。しかし、自宅待機は一時的なものではなく、期間は2年に及んだ。Aさんはその間、同社から、会社近くのスターバックスコーヒーに呼び出され、47回にわたる退職勧奨を受けた。

Aさんが「辞める意思はない」と主張するたびに「えっ?」と何度も聞き返されたり、「(自宅待機は)精神的にまいっちゃうんだから早く辞めたらどうだ」といった言葉を浴びせられ、話し合いを重ねるごとに「能力不足」との理由も加わった。

Aさんは当時のやり取りをすべて録音していた。退職勧奨は短くて30分、ときには1時間以上に及んだという。Aさんは同社に対して復職を求め続けてきたが、2014年2月6日、同社社長から「雇用関係を解消したい」との連絡があり、同年3月31日付けでの解雇を言い渡された。

●裁判官から「あなたは勝ったんだよ」

今回、裁判で和解が成立したことについて、Aさんはこのように語った。

「裁判官に、『あなたは勝ったんだよ』という言葉をいただいたときに、すべてが終わったと実感しました。2年間、悔しく、苦しかったというのが正直なところです。会社に損害を与えたり、業務に支障が出ていたという自覚はなかったので、不当な扱いに納得がいかず、お金ではなく、判決で白黒つけてほしいということにこだわってきました。

でも裁判官から、『証人尋問の準備等をするよりも、新たな環境で能力を発揮したほうがいいのではないか』とアドバイスを受けて、自分自身の将来を考えたほうがいいと思い、和解を受け入れました」

三浦弁護士は、Aさんが退職勧奨のやりとりを記録していたことが、今回の結果につながったと指摘した。

「2年間の自宅待機など、事案があまりにも悪質だったこととともに、退職勧奨の記録が残っていたことが大きい。どんなにひどい事案であっても、記録がなければ裁判で勝つのは難しいが、今回は客観的な証拠によって、ひどい事案が裏付けられた」

(弁護士ドットコムニュース)

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