「アパートを更新したあと2カ月しか住まないのに、更新料を全額払うことに納得できない」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこんな悩みが寄せられた。
相談者は、まもなく賃貸アパートの更新時期を迎えるが、更新した月の2カ月後に引っ越しを予定している。「たった2カ月しか住まないのに、契約更新料を支払うことが納得できない」と不満に思っているそうだ。
更新後まもなく引っ越しを予定しているのなら、更新料の支払いを拒んだり、支払った分を返してもらうことはできないのだろうか。不動産の法律問題に詳しい瀬戸仲男弁護士に聞いた。
●更新料の位置づけとは?
「最高裁の判決(平成23年7月15日)によると、賃貸契約の更新料は、賃料の補充や前払い、賃貸契約を継続するための対価などを含む複合的なものとして、位置づけられています」
では、更新料そのものを拒むことはできないのだろうか。
「支払い義務が法律に規定されているわけではないので、契約書に記載がなく、約束もしていなければ、支払う必要はありません。
ただ、契約書に更新料の条項が具体的に記載されていて、『一義的かつ具体的に記載された更新料条項』であるなら、支払いの必要があるとされています。
つまり、『新賃料の1カ月分』など、具体的に記載されている場合です。アパートではこのように決められているケースが多いです。賃貸住宅に住んでいる人は、契約書を読み返してみるといいでしょう。また、家主の人は、賃貸借契約書に更新料条項を具体的・一義的に盛り込むようにしましょう」
●全額支払いは「酷な対応」
では、今回のケースのように、更新後に短期間で引っ越すことが分かっている場合も、全額支払いの義務があるのだろうか。
「さきほど説明したように、『一義的かつ具体的』な更新料の条項が契約書にあれば、原則として支払いを断ることや、返還を求めることはできません。
不動産賃貸借の実務の現場では、『更新料はあくまでも更新することについての手数料だから、減額も月割りもできない』と考えている不動産会社が多いようです。
このような不動産会社の考え方だと、借りている人が更新後1日でも住んでいれば、更新料を満額請求されることになりそうです。でも、それではあまりにも杓子定規で、借りている人に酷な対応です。今回のように、2カ月しか住まないことが分かっている場合も、更新料を全額支払わなければならないというのは、問題があるでしょう」
その場合、どう交渉すればいいのだろうか。
「冒頭で説明したように、更新料は『賃料の補充ないし前払い』の性質があります。ですから、契約期間が2年だとすれば、更新後に住む2カ月分だけを『賃料の前払い』として支払い、残りの22か月分を減額するように要求してみても良いかもしれません。
実際に裁判になった場合、裁判所が認めるかどうかは分かりませんので、専門家に相談するなどして、適切に対処することが肝要です」
瀬戸弁護士はこのように語っていた。