唐津 真美 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
もともと公務員や法曹など女性が長く働ける職につきたいという思いがあり、大学進学時に法学部を選びました。
すでに在学当時は男女雇用機会均等法も施行されており、企業への就職も考えましたが、最終的には、資格として強く、女性も広く活躍している弁護士を目指しました。
ニューヨーク州弁護士の資格取得のきっかけ
企業法務に興味があったので、企業法務専門の事務所で弁護士人生をスタートしました。そこで様々な仕事をする中で、企業法務には英語力が重要だと感じました。
また、当時は企業法務を担当する女性弁護士は少数派で、相談に来る企業の担当者も男性ばかりでした。自分が依頼者から信頼してもらえるようになるためには、弁護士資格以外に何か強みを持った方が良いとも思い、弁護士3年目に米国のロースクールに留学して、司法試験も受け、ニューヨーク州弁護士の資格を得ました。
留学後5年間ほど、いわゆる外資系法律事務所の海外オフィスと東京オフィスで、外国人弁護士と協働しながら集中的に渉外案件に取り組んだことも、貴重な経験になりました。
印象に残っている事例
弁護士になって以来、企業法務を中心に扱ってきたのですが、一番印象に残っているのは、企業法務の案件ではなく、当番弁護士として担当した入管法違反の事件です。
日本に留学中の若い中国人女性が、ビザで認められていなかったアルバイトをしたために拘束され、国外退去命令が出された事案でした。
外国人の刑事事件は初めてでしたし、自分がまだ若手だったこともあり、その分野に詳しい他事務所の先輩弁護士にアドバイスをもらうなど色々勉強もして、自分なりに一生懸命取り組みました。しかし、当初からその先輩弁護士に「これは国外退去を避けられないケースだよ」と言われており、実際、退去命令の取り消しは叶いませんでした。
最後に面会に行って国外退去が確定したと話すと、依頼者の女性は泣き出してしまいました。私とのやり取りもすべて日本語で出来るほど真面目に日本語を勉強していた人だったので、やはり日本に残りたかったのだなと思っていると、彼女が「唐津先生に会えなくなるのが寂しくて泣いている」と言うのです。感極まって、思わず2人で収容施設のアクリル板越しに向かい合いながら泣いてしまいました。
この件の成功が“依頼者が日本に残れること”だとすれば、結果を出せず失敗に終わった事件ということになりますが、自分なりに懸命に取り組んで依頼者と良い関係が築けたことは本当に嬉しく、印象に残っています。「どんな状況でも誠意を尽くして案件に取り組まなくてはならない」ということも学びました。
弁護士としての信条・ポリシー
“依頼者にとって本当に役に立つ現実的な解決策”を提案できるよう心がけています。依頼者が今現在抱えている問題に対して表面的な回答をしても、根本的な問題が残ったままでは本当の解決とは言えません。
例えば、コンテンツ制作会社が著作権侵害のクレームを受け、「この件で著作権侵害が成立するのか」と相談してきたとします。この場合、著作権侵害の有無を検討して法的に正しい答えを出すのは弁護士として当然です。
著作権侵害の可能性があるならば、依頼者のビジネスと具体的状況に即した現実的な解決策を提示して、初めて合格点でしょう。さらに、依頼者がビジネスにおいて適切な契約を締結しなかったり、確認すべき点を確認していないことが原因となって今回の問題が生じているのなら、依頼者の日々の業務を改善しなければ、根本的な解決にはならないと考えます。
このような依頼者の真のニーズ(依頼者自身が意識していないこともあります)を理解し、当面の問題解決のその先を見据えた上で、実践的で時には創造的な、一歩踏み込んだオーダーメイドのアドバイスをしたいと思っています。
依頼者に対して気を付けていること
会議などでは、弁護士だけではなく、依頼者自身にも十分に語ってもらうように心がけています。弁護士として的確な対応をするには、まずは依頼者のビジネスや想いを深く理解する必要があると考えています。
仕事を進める上で必要な情報を得るために適切な問いかけをするのも、弁護士の重要なスキルだと思います。もちろん、業界の知識などを自分で勉強することも大切ですが、依頼者のことを一番知っているのは依頼者自身だからです。
また、案件について最終的に決断するのも、依頼者自身でなければならないと思っています。依頼者が弁護士のアドバイスを十分に理解した上で決断できるように、的確でわかりやすい説明を心がけています。
関心のある分野
現在はアート、メディア、エンターテインメントの分野に関する仕事が多く、業務全体の7割程度を占めています。企業のクライアントが多いですが、非営利団体やアーティスト個人からの相談を受ける場合も少なくありません。その他の事業会社からも、知的財産権に関する相談を中心にご依頼をいただいています。また、複数の企業で社外役員を務めています。
弁護士業務の内容としては、国内契約・国際契約の契約交渉のアドバイスや、著作権・商標権などの知的財産権に関する相談の割合が高いですが、その他にも労働関係から入管法、税務、訴訟等の紛争解決に至るまで、取り扱う法分野は多岐にわたります。
アート、メディア、エンターテインメントは、人の心を動かし、人を幸せにできるパワーを持っていると思います。個人的にも好きですし、プロジェクトや制作活動に参加する1人のスタッフとして、作品を世に送り出すお手伝いが出来ることが嬉しいです。また、日本発のすぐれた作品やコンテンツを世界に向けて発信する手助けもしたいと思っています。
現在でも海外との契約交渉に関わることが多いのですが、日本、特にエンターテインメント業界は、従来契約を重視してこなかったこともあり、本来は弁護士が必要な場面でも、まだまだ弁護士が関わり切れていないと思います。成長過程にある分野で法環境の変化も著しいので、やりがいを感じています。
ページを見ている方へのメッセージ
特に比較的小さな企業の方や個人の方は、弁護士に相談することをためらってしまうのか、実際に相談される時には問題がかなり深刻になっているケースが多いです。「弁護士の仕事は裁判」という印象があるのかもしれません。
実際には、裁判の手前でできることは非常に多いですし、日常的に相談していただければ、問題が深刻になる前に回避できるケースがほとんどなのです。是非、あまり身構えず気軽に弁護士に相談して下さい。