笹山 尚人 弁護士 インタビュー
弁護士になろうと思ったきっかけ
大学2年の時に過労死事件の法廷傍聴をしたのがきっかけです。働いているのにそれが原因で死んでしまうことの不条理さを感じ、これを正々堂々と主張できる弁護士という職業が自分の考える正義を具体化していると考えました。世の中にはおかしなことがたくさんありますが、それを人の道に沿うように正していくことを実現できる、それを職業としてできる点に魅力を感じました。
印象に残っている案件(事件)
有料職業紹介所の事件です。有料職業紹介所は労働者派遣と似ていますが、職業を紹介する事業所で、職業紹介は国が無料で行うのが原則ですから(ハローワーク)、限定的な職種について許可を得て行うものです。
その事件では、有料職業紹介所が毎日紹介する形式で有期雇用契約が一日単位で遂行されていました。しかし、現場では、紹介先で恒常的業務に労働者が毎日就労している。つまり実態は正社員と同じなのに、形式上は契約が一日単位で、毎日紹介がなされて、紹介所は毎日紹介料の上前をはねていたのです。
労働者側は日々雇用という非常に不安定な立場に身を置くこととなり、使用者側の思うままになっている状態でした。その事件の依頼者である労働者は、日々契約という雇用契約を悪用されて不当に解雇されたのでした。依頼者の方は、残業代と解雇予告手当の請求の裁判をご自分で起こされていましたのですが、私はこの裁判を途中から引き継ぎました。
「ブラック企業」という言葉にあるように、今、多くの日本の労働者は法律上の権利すら奪われ、奴隷のような状態で働く人もいます。法形式を悪用して、労働者の権利を奪う企業のこうしたやり方が、今日の日本の一つの象徴のように感じました。
こうしたやり方が許せませんでしたし、労働者はどうやってこの事態に対抗していけるのか。そのための一つの手法として、訴訟の遂行と労働組合の運動との連携を試みました。このやり方は成果をあげ、被告会社が異例に高額の和解金を支払うこととなり、大変印象に残りました。
大変だと感じること
労働事件を多く扱っていると、道理はあるのに法律上勝てないという事件があります。私が依頼者から聞く事実というのは本当に酷くて、法的な救済が必要だということは明らかであるのにもかかわらず、依頼者が望むような救済に結び付くことはなかなかありません。
これは有期雇用や派遣などについての立法の不備が主たる原因ですが、そのせいにだけするのではなく、弁護士は依頼者の苦しみを形にして裁判所に届け、裁判所を説得できるような論理を構成するのが仕事です。私自身がこれを十分にできているのかについては悩むところですね。
休日の過ごし方
ほとんど子供と遊んでいますね。また読書(推理小説)、音楽鑑賞(ハードロック)、DVD鑑賞(子どもと一緒に戦隊もの)などでも時間を過ごしています。
弁護士としての信条・ポリシー
弱い者の味方であること、正義を実現することです。
力の強い者が、弱い者を虐げ、自らの利益をはかるということを許さず、弱い者の権利を実現することが、弁護士の使命だと思っています。
そのために心がけているのは、弁護士は皆同じかもしれませんが、きっちりと事実を集めた上で、事実を正直に打ち出すことです。理屈はあとからついてくる部分もあるので、集めた事実をいかに形にして裁判所に届けるのかということが重要です。
また、事実を集める時には事務所に座っているのではなく、自分から動いてできるだけ現場を見に行くようにしています。依頼者が労働者の場合だと、飲食店やコンビニなどその現場を実際に見ることができますから、自分の五感で事実に接するようにしています。
依頼者に対して気をつけていること
依頼者の方から弁護士から頭ごなしに叱られたということをよく聞きます。依頼者の言っていることに対してそれは法的に無理だと思うことは多々あり、それを正直に伝えたくなる気持ちはよく分かりますが(それが依頼者のためでもある場合も多くあります。)、依頼者は救いを求めて来ているので、想いをまずはきちんと受け止めることが大切だと思っています。その意味で、優しく接するように気をつけています。
関心のある分野
労働者の働いている現場に関わる法規制についてです。今であればとりわけ派遣や有期労働を中心とした非正規雇用の現場をまっとうにする法規制はどうあるべきかです。
また、憲法をどう活かすかについても関心がありますね。労働事件でも憲法と無関係ではなく、憲法をどう活かしていくかがすべての事件や運動に関わってくると考えています。
今後の弁護士業界の動向
経済的に厳しい状況になってくると思います。弁護士が多くなるということもありますが、依頼者が経済的にどんどん厳しくなると予想されるので、一つ一つの事件を高い金額で受けられなくなるでしょう。そうなると弁護士業界全体が貧困化することにもつながるのではないでしょうか。業界としては、弁護士がプロボノ活動を行ってきた訳ですが、そういった精神をどう維持していくのかも問題だと思います。
ページを見ている方へのメッセージ
労働法に限らず色々な事件を担当していますから、弁護士に聞きたいということがあれば迷わず相談に来て欲しいと思います。社会生活を生き抜く上での悩みに共に寄り添って、依頼者の権利の実現をサポートしたいと思っています。