30年以上の弁護士経験と謙虚さを忘れない誠実な対応で依頼者に寄り添う
自分で決断できる仕事を目指して司法試験に挑戦
ーー弁護士を目指した理由やきっかけを教えてください。
会社や組織の中で仕事をするよりは、自分で決断できる仕事、自分だけでできるような仕事に就きたい意識があって法学部に入り、司法試験に挑戦しました。当時は弁護士や検事、裁判官といった特定の職業になりたいと最初から決めている人は多くなく、司法試験に合格してから司法研修の中で職業を決めていくケースの方が多かったように思います。私も元々弁護士になる確固たる意思はありませんでしたが、法律を使って独立して仕事をしたいということで、法曹を目指しました。
ーーどんな学生生活でしたか?
当時の司法試験は合格率が非常に低く、私も簡単には受からないだろうと覚悟していましたので、勉強を続けた毎日でした。勉強の合間にはテニスや野球を楽しみました。
なかなか試験に合格できず途中で道を変えないといけないかもしれないと思った時期もありましたが、合格するための勉強法を探しながら最後は受かることができました。
依頼者が「人間らしい生活」ができるための法的サービス
ーー注力している分野を教えてください。
地方に在籍している弁護士としていわゆる一般民事を幅広く扱っていますが、それ以外には刑事事件や企業法務、地方では珍しい知財関係のお仕事もしています。
最近特に力を入れているのは、今まさに日本が直面している高齢者問題です。私も高齢者ですので、同世代の方から相談を受けることが増えています。
日本は2050年には3人に1人が高齢者になると言われており、現在でも高齢者に関わる財産管理や相続など、多くの問題が生じています。日本には後見制度という、認知症など自ら財産管理できない人の代わりに第三者が財産を管理する制度がありますが、本人のためによかれと思って財産を支出しようとしても、裁判所の許可を得なければならず、柔軟な対応が難しいのが現状です。
そこで、私は、ホームロイヤーとして高齢者と定期的に連絡を取るようないわゆる「見守り 契約」、本人が元気なうちに財産管理について決めておく「任意後見契約」や「財産管理契約」などに力を入れたいと考えています。もちろん遺言の相談も受けています。
高齢者が若い頃に働いて財産を築いてきたのは、豊かな老後のためだと思います。しかし、本人の判断能力が衰えた後に財産管理をしようとなると、どうしても子どもなどの相続人のための財産管理となってしまい、本人の意向がどこまで尊重されているのか疑問に感じる部分もあります。
本人の判断能力が衰えてしまった後も、本人の意向に沿った財産の使われ方をすることは、本人の「人間らしい生活」を守ることに繋がります。ぜひ本人が元気なうちに相談してほしいと思います。
ーー依頼者とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?
当たり前のことですが、質問に誠実に答えることを心がけています。現時点で相談者が有利か不利なのかハッキリ申し上げた上で、弁護士としてできることを正直に説明します。
長年弁護士をしていると、こちらの事実関係の把握が甘かったり、見通しの判断をミスしたりするケースもありました。そういった場合には、素直に謝りました。弁護士といっても、依頼者とは人として対等なので、こちらに非がある場合には謙虚に認めなければならないと思います。
そういった経験もあって、依頼者に誠実な対応で信頼関係を築くことを大切にしています。
ーー今までの弁護士活動の中で、印象的だったエピソードを教えてください。
ある刑事事件で、末期がんで苦しむ妻を殺害した夫を弁護した裁判が印象に残っています。
妻は夫に苦しいから殺してくれと懇願したという事情があったため、夫はそのままでも同意殺人罪という、通常の殺人罪よりも刑が軽い罪になる見込みでした。
しかし私は、治る見込みのない病気で苦しむ妻を手にかけた夫が、たとえ通常の殺人罪よりも軽い罪であっても、犯罪者として処罰されるのはおかしいのではないかと思い、「夫の行為は安楽死にあたるので、違法性はない」という主張を展開しました。
安楽死を合法化している国はありますが、日本では法制度として認められていません。仮に安楽死にあたるとしても、医師でもない夫のした行為が安楽死として認められる可能性はなかったでしょう。それでも、若かった私は、被告人である夫をどうにかして助けたいという思いで安楽死の主張を展開しました。
安楽死の主張は認められませんでしたが、幸い情状面がかなり考慮されて、比較的刑の軽い判決で決着させることができました。この事件は新聞にも何度か取り上げられたり、私自身も大学にも講演に呼ばれたりして話題になったことでも印象に残る事件でした。

ーー休日の過ごし方を教えてください。
コロナ前までは海外旅行に行くのが大好きでした。異国を観光するのみならず、外国の弁護士と交流し、意見交換するのが大変勉強になります。外国の法律や弁護士事情について学ぶ機会がまたあればいいなと思います。
海外へ行くのが難しくなってからは家で読書をしたり、テレビで野球観戦したりしています。野球はメジャーリーグが好きで、日本のプロ野球とは違うスケール感を楽しんでいます。
ーー今後の展望について教えてください。
今まで扱ってきた分野を引き続き取り組みつつ、関心のある高齢者問題により従事したいと思います。
弁護士と介護施設など高齢者のための専門機関が連携を取れば、より高齢者のニーズに応えられると思います。今後は介護施設とのネットワーク作りや、ともに高齢者問題に取り掛かる弁護士を集めて、ゆくゆくは高齢者問題に特化した弁護士組織を築き上げられたらいいなと思っています。
ーー法律トラブルを抱えて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
相談しても早すぎることはありませんが、手遅れになってしまうことはあります。手遅れになるとご自身が大きな不利益を被ることがあります。
「こんなことで相談してもいいのか」と躊躇うこともあると思いますが、悩んでいる場合にはとにかく一度弁護士に相談していただければと思います。