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バッジをなくした弁護士、3年間で約800人…ベテランも紛失「キラキラの金」に逆戻り

バッジをなくした弁護士、3年間で約800人…ベテランも紛失「キラキラの金」に逆戻り

ドラマや映画で弁護士役の象徴となっている「弁護士バッジ(弁護士記章)」。企業法務を中心に扱っている弁護士などはバッジを滅多につけないが、バッジは弁護士の象徴として広く知られている。 「弁護士バッジをつけている弁護士の『あるある事情』の1つとして、弁護士バッジを『なくしがち』ということがある」。こう話すのは、Youtuberとしても活躍する井上拓弁護士(64期、第二東京弁護士会)だ。 実際にバッジをなくすと、どうなるのだろうか。どれほどの弁護士がバッジをなくしているのか。井上弁護士に話を聞いた。 (取材は6月17日、東京都内にておこなった) ※写真は井上拓弁護士(2021年6月17日、東京都内、弁護士ドットコム撮影)

バッジをなくした弁護士は、官報に掲載される

弁護士バッジをなくした場合、弁護士記章規則にもとづき、「弁護士記章紛失届及び再交付申請書」を日弁連と所属弁護士会に提出する。書類には「紛失した事情」を記載しなければならないが、井上弁護士によると、「不慮の事故」などと記載する弁護士が多いようだ。


※書類は日弁連の会員専用ページからダウンロードできる

弁護士バッジの再交付費用は、なくした人が負担する。銀製記章の場合は、記章代9430円のほか、官報公告料1060円がかかるという。再交付されたバッジの裏には「再」という文字のほかに、再交付の回数が記載される(1度なくした場合は「再1」となる)。

書類を提出後、官報の「弁護士記章紛失公告」欄に、バッジをなくした弁護士の記章番号、所属会、氏名が公表される。日弁連によると、官報に記載する理由は「悪用を防ぐため」。実際の悪用事例について、日弁連から回答は得られなかった。井上弁護士も「弁護士バッジがヤフオクで売られているといった噂を聞いたことがあるが、本物のバッジを用いた実際の悪用事例は聞いたことはない」という。

「たとえば、弁護士バッジのレプリカを販売する行為は、違法行為になりうる。弁護士バッジは幅広い区分で商標登録されているので、印刷したり、同じ形のものを作り出して『悪用』すれば、商標権侵害にあたり、刑事罰もありえる」

井上弁護士がバッジの手続きに詳しいのは、過去に「気づいたら、バッジの本体部分がなくなっていた」ためだ。

「弁護士バッジは『ネジ式』『ブローチ式』『タイタック式』の3つから選ぶことができるが、私が選んだのは『タイタック式』。ところが、ジャケットが分厚いので、うまくバッジが刺さらなくて。常に強引に刺していたところ、部品が割れて、本体が消えてしまった。選択を間違えたと思った」

弁護士は「ねじ式」の「ねじ」の部分をなくしがちだが、弁護士会に行けば、無料で新しい部品をもらえることがあるという。井上弁護士によると、「少なくとも、第二東京弁護士会ではもらえる」ようだ。しかし、井上弁護士の場合、部品の故障によって、本体そのものが消えた。その後、本体が見つかったかどうかは「想像にお任せする」。

約800人の弁護士がバッジを紛失!紛失者が多いのは「60期代」?

井上弁護士はバッジを「なくしがち」と話すが、バッジをなくす弁護士はどれぐらいいるのだろうか。

編集部は2019年6月から2021年6月までの3年間分の官報を調べた。結果、3年間で794人(799件)の弁護士が官報の「弁護士記章紛失公告」欄に記載されていることが分かった。また、3年の間に2回バッジを紛失している弁護士は5人いた。

井上弁護士は、かつて、自分のバッジのみならず、新人弁護士から借りたバッジまでなくした「伝説の弁護士」がいたとの話を聞いたことがあるという。

「もともと、いろいろなものをなくすことで有名なベテラン弁護士だったらしい。ある日、自分のバッジがないことに気づき、慌てて新人弁護士のバッジを借りて、そのまま裁判所に向かったらしい。ところが、借りたバッジも、またどこかでなくしてしまったようで…。その後、どうなったのかは分からないが、おそらくみつかっていないと思う。そもそも、人のバッジを借りてよいのか?という問題もあるが…」

官報に記載されている記章番号(弁護士登録番号)をもとに、紛失者の修習期を調べた(修習期は一部推定)。直近3年間でもっとも紛失事例が多かったのは60期代(333件)。50期代(122件)、20期代(94件)と続いた。


所属弁護士会ごとに紛失件数をみてみると、直近3年間では東京弁護士会(177件)がもっとも多かった。しかし、東京弁護士会は会員数も最多の(「弁護士白書2020年版」によると、東京弁護士会の正会員数は、2020年3月31日時点で8650人)ため、紛失率にしてみると、約2%だ。

それぞれの弁護士会の紛失率(3年間の紛失件数/2020年3月時点での会員数)を計算してみると、もっとも紛失率が高かった弁護士会は、山梨県弁護士会と岡山弁護士会(各3.9%)だった。また、函館弁護士会、愛媛弁護士会は期間内の紛失事例がなかった。


酔っ払って「スーツごとなくす」弁護士も…

弁護士バッジは純銀製で、上から金メッキが塗られている。井上弁護士によると、「キラキラの金=新人」「いぶし銀=ベテラン」の象徴ともいえるため、「新人」だと思われないように、銀に近づける努力をする弁護士も少なくないという。井上弁護士も、バッジを「金」から「銀」に近づけるための方法をYoutube動画で紹介している。

「銀にするための方法としては、小銭入れなどに入れてメッキを剥がす『物理攻め』をする弁護士が多い。ただ、バッジを外す必要があるので、注意は必要。コーラやビールに浸ける『化学攻め』もあるが、その過程で、バッジをなくしてしまう可能性もある。銀に近づけるためにいくら努力したとしても、なくしてしまえばキラキラの金になって戻ってくるので、気をつけるべき」

なお、追加料金を支払えば、純金製のバッジを選ぶこともできる。井上弁護士は「Twitterでは純金製を選んだ弁護士を見かけたが、実際の知り合い中には、純金製を選んだ弁護士はいない」という。

そもそも、なぜ、弁護士バッジをなくしてしまうのだろうか。

「よく聞くのは、気づいたらなくなっていたり、スーツごとなくしたりしてしまうというパターン。弁護士は、バッジをジャケットにつけていることが多いが、暑いときは、居酒屋で上着を脱いでそのままなくしてしまったり、電車の網棚に上着を置きっぱなしにしてしまい、なくしてしまうことがある」

2019年6月から2021年6月まで、官報に掲載されていた紛失件数を月ごとにまとめてみたところ、新型コロナウイルス感染拡大後(2020年以降)は、感染拡大前よりもバッジを紛失する人数が少なくなっていた。


コロナ感染拡大後は、テレワークなどを導入する法律事務所もあるため、外出や外食の機会が減ったことも考えられる。コロナが落ち着いた後も、飲み会でジャケットごと忘れてしまわないように注意が必要だ。

井上拓弁護士

64期、第二東京弁護士会。日比谷パーク法律事務所。YouTuberでもあり、弁理士でもある。Youtube(https://www.youtube.com/c/inotaku_law/videos)では、知的財産法を中心とする法律解説、学者や弁護士へのインタビュー、エピソードトークなどを配信。

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