
井戸 謙一
井戸謙一法律事務所
滋賀県 彦根市小泉町78-14 澤ビル2階インタビュー
井戸 謙一 弁護士 インタビュー

弁護士を目指したきっかけ
私は、大学は教育学部でしたが、社会に出るに当たって、「武器」を持ちたいと思い、その「武器」として「法曹資格」を考えました。
司法試験を目指した当初は、弁護士になろうと考えていました。司法試験合格後、司法修習の中で裁判官の仕事に魅力を感じ、裁判官になろうと思いました。いくら弁護士が色々な訴訟活動をしても、それを理解し、最終的に正しい判断をするのは裁判官になります。そうした意味で裁判官は訴訟においての最終的な決定ができます。そのことの意義、面白さを感じました。
今までの経験と現在の仕事内容
32年間、全国を転々としながら裁判官をしてきました。若いころは刑事が主でしたが、途中からは、民事裁判官として生きてきました。
弁護士になってからの仕事の内容は、原発関係が3分の1ほどを占めています。また、遠方からの依頼がけっこうあります。私を取り上げた新聞記事を読んだことがきっかけだそうです。それが3分の1くらい。あとは地元での刑事、離婚、遺産分割など雑多な事件が3分の1を占めています。
原発関連については、現在4つの弁護団に所属しています。裁判官として原発訴訟に関与した経験があることから、各弁護団からお誘いを受け、私の経験や知識が役に立つのであればという思いで参加しています。
原発訴訟について
大きな問題は2つです。専門的科学問題について、裁判所がどこまで立ち入って判断するか(審査の密度)と、立証責任です。
行政訴訟(原子炉設置許可処分取消請求訴訟,同無効確認請求訴訟)では、原子炉設置許可処分のような専門技術的判断の相当性については素人の裁判官には判断できないのだから、裁判官は、安全審査の手続に問題がなかったかを判断すればいいという考え方が有力でした。
民事訴訟(人格権に基づく運転差止請求訴訟)においても、「安全性」が正面から争点になりますが、裁判所は、専門家が作った安全基準が妥当かどうか、当該原発がその安全基準に適合しているかについて、専門家の判断を尊重しがちでした。しかし、福島第1原発事故のあと、専門家が作っていた安全基準や適合性の判断がいかにおざなりなものであったかが白日の下にさらされました。
今後の裁判所は、今までのように専門家の判断を追認していくという処理の仕方はできなくなると思います。素人は素人なりに一所懸命勉強して、当事者が指摘した問題点について、積極的な判断に入っていかざるを得ないと思われます。これが審理の密度の問題です。
ただ、そうはいっても科学的に何が正しいかということを裁判所が最終的に判断する力はありません。最後のところはやはり適切な立証責任の分配によって、軍配を上げるしかありません。どういう分配が公平で正義に叶うかです。
この2つが原発訴訟における大きな課題だと思います。
裁判官として仕事をする上で意識していたこと
勝ち負けは別にして、裁判所が自分の言い分をよく聞き、問題点について逃げないで判断してくれたと当事者に思ってもらうことです。裁判所に持ち出してよかったと少しでも思ってもらうことが大切です。そのためには、当事者の話をよく聞くことが一番大切だと思っています。
特に本人訴訟の場合には、より大切になります。本人訴訟というのは弁護士も受けてくれない難しい事件が多くなります。判決になれば弁護士がついている事件より勝訴率がかなり低くなります。
しかし、裁判所に持ち出して争おうとしている以上は、法的には難しくてもそれなりの言い分があるわけですから、それをよく聞いてあげて、理解した上で、判決を下せば、最終的に結論が駄目でも何らかの満足感を持っていただけるのではないかという思いでやっていました。
今後の弁護士業界の動向
司法試験合格者の数が少々減っても、弁護士の数がこれからも増えていくことは避けられません。経済的に苦しい弁護士も増えるでしょう。しかし、他方で、法的ニーズはまだまだ掘り起こされていないと感じます。まだまだ、工夫の余地はあるのではないでしょうか。
私の個人的な経験の範囲ですが、私の親族や友人、ご近所の方からの相談や依頼が結構あります。法的問題にぶつかっている人は多く、気軽に話ができて、それなりに信頼できて、それほど金銭の心配もしないで済む専門家があれば、相談し、依頼したいというニーズは結構あります。
しかし、そのような専門家が身近にいるわけではなく、不安を抱えたままそのままにしている、あるいは泣き寝入りしているというケースが相当あります。法律事務所の敷居はまだまだ高いのです。市民にとって弁護士がもっと身近になれば、相談や依頼の件数はもっと増えると思います。体の調子が悪いから近所の医者に行く感覚で法律事務所を訪ねることができれば、もっとニーズを掘り起こすことができます。たしかに弁護士の数は増えましたが、一般の市民の方々の認識はまだまだ変わっていないと思います。
自己紹介
- 所属弁護士会
- 滋賀弁護士会
- 弁護士登録年
- 2011年
所属事務所情報
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- 所属事務所
- 井戸謙一法律事務所
- 所在地
- 〒522-0043
滋賀県 彦根市小泉町78-14 澤ビル2階 - 最寄り駅
- 南彦根駅
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