木村 靖 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
当職が法曹を目指して勉強をしていたころ四大公害訴訟が提起され、被害の実体が非常に深刻なことを知り、少しでも手助けできればとの思いで弁護士を志望しました。私自身東京出身なのですが、当時の東京は美濃部さんが都知事になる前でかなり汚れていました。工場排水で私の大学(明治大学)の近くの神田川もどろどろに汚れていました。
東京がそのような状況でしたので、修習地は金沢に行きました。そこで公害訴訟のイタイイタイ病が富山地裁で係属していました。当初は裁判官になろうと思っていたのですが、患者さんの自宅に泊りがけで行ったり、弁護団の方と交流する中で、弁護士でないと直にものを聞けないと思い、弁護士志望に変わっていきました。
今までの経験と現在の仕事内容
京都にいた時、当時東京高裁で問題になっていた狭山事件の弁護団に加えていただきました。その中で合宿等で刑事事件について勉強をさせていただきました。また、京都では当時荒っぽい労働事件もありました。
全自教(全自動車教習所労働組合)の全員解雇・企業閉鎖のようなことのあった労働争議では、労働者と泊まりこみで語りながら事件に対応していきました。その事件では現場に警察官が突入してきたことが問題となったり貴重な経験をしました。
その他に、京都ではスモン訴訟の弁護団に最初から加わらせていただいたり、未熟児網膜症の事件では京都から滋賀にきてからも引き続きやらせていただきました。
滋賀にきてからは弁護士が少ないこともあり、色々な事件を担当させていただいています。行政事件も色々とやっています。労働事件では大津の方にある会社の第一組合と第二組合の差別の問題に関する訴訟も担当させていただきました。
弁護士としての信条・ポリシー
依頼者の信頼を失わないような対応を心がけています。弁護士には法律の専門家としての常識があります。しかし、相談にこられるご高齢の方などは法律について何も知らない状態でみえます。そうすると「なんでこんなことも知らないのかな」という対応を若い時にはついしてしまうことがあります。
実際に相談者と接していると相談者から学ぶこともあります。相談者から学ぶ姿勢・心がけが大切だと思います。弁護士は依頼者をつい見下すような対応をしてしまいがちですので、そうしたことを戒めています。
関心のある分野
労働事件、労災事件、行政事件。
労働事件や労災事件では会社という強い相手と個人や組合が闘うことになります。利害対立が激しい事件はやりがいを感じます。例えば、労働事件では訴訟になる前に地労委(地方労働委員会)で闘います。そうした中で会社側の姿勢を正していくところで、労働者の権利を守ることができると楽しいと思いますね。
行政事件については、議員さんの視察旅行に対して旅費の不当支出に対する返還を求めたりする事件を扱いました。行政に対しては、市民が不満があってもなかなか手が届きません。行政が議会でも取り上げられるような不正に手を貸す状況があれば、一人の市民として不正を正す活動をできることは弁護士ならではのものかなと考えています。
今後の弁護士業界の動向
国民の信頼を失うような業務上の不祥事が増加するのではないでしょうか。
私の所属する滋賀弁護士会も私が入ったときは30人ほどだった弁護士数が今では130人を超えています。少ないときはお互いに何をしているのか見えます。それぞれお互いにコントロールができるわけです。しかし、数が増えて個人が大勢の中に埋没してしまうとなかなか目に入ってこなくなり、お互いにやっていることがわからない状況になってしまいます。
そうした状況で、その人任せにしてしまうと、やってはならないことをしてしまい、それに対する対応が上手くできなくなってしまいます。
また、弁護士が多くなってきていますが、事件は多くなっているわけではありません。ですので、弁護士が食べられない事態が起きています。破産管財人に選任されたり、大きな事件があってお金が入ってきたりした時に、収入が厳しい状況の中で預り金に手をつけてしまう弁護士が出てきてしまう恐れがあります。
最近も弁護士会の中で預かり金の取り扱いの規制が変えられる動きもあります。ですので、弁護士が増えて生活が厳しい状況になるとそういうことも起こりうるのではないかと思います。
綱紀委員会にかけられるような事件は滋賀ではほとんどなかったのですが、依頼者の方も色々なことをあちこち聞いたり、インターネットで知識を得られるようになると、納得のいかない弁護活動について不満を持たれることもケースも出てきます。ですので、我々が気がつかなかったような弁護士としての不祥事も徐々に出てくるということもあると思います。
こうしたことを考慮すると、このままでは弁護士自治が危うくなります。今までは弁護士が不祥事を起こした際には弁護士会の中でしっかりと対応する弁護士自治が認められてきました。不祥事が多くなると弁護士会に自浄能力がないとして弁護士自治が奪われかねないことになります。そうなると、国民に対する基本的人権侵害事件の闘いなどの事件に対して十分に対応しにくくなります。これは実に怖い事態であると思います。弁護士は、権力から自立して自分たちで正しく活動していくからこそ、不正と闘って社会正義を目指す使命が果たされます。
こうした事態を防ぐため、法曹教育を法科大学院を基本として行うのであれば、そこでのきちんとした教育が重要になります。技術的なことも大切ですが、法曹としての務めが果たせるような精神面をしっかりと学べるシステムが必要だと思います。