「遺族の心情を何よりも大切に」法的解決後の生活も見据え自死遺族を総合的にサポート
弱者の味方として自死遺族が抱える問題に向き合う
ーー弁護士を目指した理由を教えてください。
弱者の味方として、困っている方や抑圧されている方を救いたいとの思いがあり、弁護士を目指しました。現在、自死遺族の支援に力を入れていますが、「自死遺族弁護団」の立ち上げ人である和泉貴士弁護士は大学の友人であり、一緒に司法試験を目指した仲間です。彼に声を掛けられたことがきっかけで、自死問題に深くかかわるようになりました。
ーー自死遺族の問題について教えてください。
自死遺族の方は、多岐にわたる法的な問題に直面しています。私たちはこれらの問題を総合的に捉え、遺族の方が少しでも心穏やかな日常が送れるようさまざまな角度からの問題解決に努めています。
たとえば、過労死の場合に労働災害申請や使用者に対する損害賠償請求をサポートしたり、賃貸物件のオーナーからの損害賠償請求に対応したり、鉄道での自死などでも損害賠償請求の減額交渉を行ったりしています。生命保険が下りないケースに対し、裁判で争うこともあります。
ご遺族が抱える傷は、請求どおりにお金を得ることができたとしても、それだけで解決する問題ではありません。ですが、せめて家族の自死をめぐる煩雑な手続きや、法的な争いによって、これ以上傷ついたりすることがないように、力になりたいと思っています。
悲しい現実が元に戻ることはありません。それでもご遺族から感謝されると嬉しいですし、同じ志を持った素晴らしい仲間たちと支え合いながら戦っていきたいと思います。
亡くなった方や遺族の心情を何よりも大切に
ーー仕事をする上で気をつけていることはどんなことですか?
亡くなった方やご遺族の心情に寄り添うということです。亡くなった本人に敬意を払い、遺族の気持ちに配慮しながら問題解決を図っています。ご遺族である依頼者が抱える思いもさまざまで、落ち込みが激しい場合もあれば、戦う気持ちを持っている方もいらっしゃいます。それらを丁寧に汲み取ることが重要だと考えています。
できるだけ一人で対応せず、複数の弁護士やスタッフで対応するようにしています。また、一般の事件もそうですが、相談者の話をよく聞くということには常に気を配っています。一方的に専門的な用語や知識をお伝えせず、分かりやすく丁寧に説明するようにしています。
ーー印象に残っているエピソードを教えてください。
夫が自死され大変な思いをされている中、私たち弁護士にたどり着いた女性の案件が心に残っています。弁護士に相談に来る前に行政機関や民間団体などへ足を運んでおられましたが、具体的な解決に至らなかったようでした。一家の大黒柱を失い、経済的に厳しく、精神的にも疲弊しておられました。
ご依頼をお受けした私たちは、労災申請のお手伝いや大家さんとの交渉などを行いました。女性から、「主人がなくなり何もかもうまくいかなくなっていたけれど、弁護士さんが入ってくれて本当に良かった」とのお言葉をいただき、非常に嬉しく感じたのを覚えています。
ーー休日は何をしていますか。
リラックスして過ごしていますが、抱えている案件が気になりますので、ときどき仕事もしています。コロナ前は家族旅行にもよく行きましたね。
家で読書などをして過ごしていますが、どうしても仕事関係の本が多くなってしまいますね。自死遺族の方と向き合うことが多い関係もあり、人の死に関する本をたくさん読んできました。山田風太郎著の「人間臨終図巻」という武将や英雄、犯罪者など著名な人が亡くなった際のエピソードを集めた風変りな本なども興味深く読ませてもらっています。
自死遺族を救済するプラットフォーム的役割を
ーー今後の展望を教えてください。
自死に関する問題に幅広く対応できないかと、このたび「弁護士による自死遺族相談室」というホームページを開設しました。
私たち弁護士は、遺されたご家族を法律的な側面からサポートしています。しかし、問題は法律的な解決だけで済まないことが多々あります。精神的なサポートが必要だったり、宗教的な問題だったり、自助グループの手助けが必要なこともあるでしょう。
これらの各機関や団体をつなぐプラットフォームとなるために、今回、「自死遺族相談室」を開設したのです。ご遺族が置かれたそれぞれの状況に合わせ、遺族会や自助団体の紹介をしたり、必要な支援機関につなげたりできればと思っています。自死遺族が抱える問題に対し、総合的なアプローチをもって解決できるよう尽力していく予定です。
ーー問題を抱えている自死遺族の方へメッセージをお願いいたします。
ご家族が亡くなり、付随するトラブルが発生したときに、まずはどこに相談したらいいのか、お悩みになる方も多いのではないでしょうか。弁護士ならば問題の区分けをすることができ、それこそが私たちの重要な役割だと思っていますので、どうかまずはご相談ください。
亡くなった方への思いを抱えたまま、さまざまな問題に対してお一人で対応するのは精神的にも物理的にも難しいでしょう。少しでも自死遺族の方が平穏を取り戻せるよう、問題を総合的な解決につなげます。弁護士を媒介とし、さまざまな機関が連携して自死遺族の方をサポートできる体制づくりにも力を尽くしたいと思っています。