柳 重雄 弁護士 インタビュー
弁護士を目指した理由
う~ん、なぜでしょうね・・・弁護士になってもう35年になりますが、なんで弁護士になったかなんてあまり考えたこともなかったですね(笑)。
私はもともと学校の先生になりたいと思っていました。大学は法学部に入ったのですが、大学は70年安保の学生運動で閉鎖されてしまい、その間に友人達は就職を決めていました。私はその流れに乗り遅れてしまいましてね。それで司法試験を受けてみようかということになりました。だから弁護士になったのは、極めて偶然的、消極的な理由からですね。
ただ、司法修習のときに、世の中には様々な苦しみを抱えている人が大勢いるということが分かりました。そこで、法曹になった以上は、様々な人たちが苦しんでいる現実があるのだ、という原点を忘れないようにしようと思い、司法修習時代はいろいろ感銘を受けたり考えたりしたという記憶があります。そのことが私の後の弁護士人生に大きく影響していると思います。
印象に残っている事件
最も印象に残っているのはある労働事件です、私が弁護士になって数年後ぐらいの事件です。従業員1000名ぐらいのある会社に、700数十名程度で組織された労働組合があったのですが、その会社が大の労働組合嫌いで、組合を真っ向から潰しにかかり、3年後には50名ぐらいに減らされてしまいました。
いったんは解決したのですが、その後、残った組合員に対する賃金差別や嫌がらせで、その会社はまた組合をつぶしに潰しにかかりました。それを組合側で跳ね返して・・・ということを、何回もやりあい、最後に解決したのが2005年。結局組合を作ってから事件が解決するまで24年かかりました。
この24年間に、賃金差別、解雇無効の裁判など本当に様々なところで戦いました。それは面白かったし、組合員の方達との素晴らしい連帯感も感じることができて、とても印象に残るものになりましたね。
仕事で嬉しかったこと
月並みの言葉で言えば、依頼者とともに事件を解決していくなかで感謝されるということでしょうね。あと、私は獨協大学法科大学院の実務家教員として学生に教えたり、一緒に議論をしたりしているわけなんですが、もともと教員志望ということもあって、これはとても楽しいですね。
旧司法試験の制度と法科大学院の制度の良し悪しについて
まず、理想と現実があまりにもかけ離れてしまっているので一概には何とも言えないところがありますが、制度設計としては法科大学院の方がはるかにいいに決まっています。
一発試験で決めるのではなくて、学生のうちから実務の世界に触れつつ、社会で苦しんでいる人の現実をみながら、どうすれば本当に役に立つ法曹になるか考えながら勉強するという理念ですね。私もそのような教育に実務家教員として関われることは素晴らしいことだと思っています。
しかし、司法試験の勉強で学生にはなかなか余裕がなく、どうしても近道を追う勉強になってしまいがちなのが現実で、難しいところですね。
「獨協地域と子ども法律事務所」の特徴、設立理念
この事務所を作るときに、「獨協大学地域と子どもリーガルサービスセンター」というのを同時に設立しました。これは、法律問題に限らず、子どもに関する問題を広く扱い、様々な専門家が協同し、解決に向かい活動をしていくための機関です。
その中で、人権問題など弁護士が必要な際には、弁護士が関わり、子どもの問題に対して積極的に取り組んでいきます。このようなきっかけで作られた事務所ですので、子どもの人権や、少年事件を重点的に取り扱っていこうというのが基本理念の一つです。
また、獨協大学法科大学院では、地域密着型の弁護士を育てることをコンセプトにしておりますので、それを実現する法律事務所にしようというのが2つ目の理念です。
3つ目の理念は、法科大学院の「リーガルクリニック(臨床法教育)」を支援することです。学生が実務に携わり、法律の勉強を深めていくということに貢献していこうということですね。
4つ目が新人の弁護士、特に子どもの人権や少年事件に情熱を燃やしている弁護士を育てていきたいということです。
このように4つの設立理念を持ってやっておりまして、成果は出てきています。例えば発達障害の子どもの事件を取り扱う際に、弁護士だけでなく臨床心理士など他の専門家を交えて、事件に取り組んだり、少年院から出てきた少年をどのように社会に馴染ませていくかといった問題に、地域の様々な団体がリーガルセンターと話し合いながら取り組んだりと、普通の弁護士実務から一歩超えた活動ができるようになっています。
大変だと感じること
まずは、依頼者との関係ですね。弁護士として、相手方と戦うことは易しいことなのですが、これを依頼者との信頼関係の上で、こなさなければいけないというところが弁護士の難しいところですね。なかなか気苦労の多い仕事だと思います。
あとは、弁護士というのは自由業ですので、仕事の取り組み方は基本的に個々の判断、意欲、エネルギーに任されています。弁護士の仕事は社会の問題と真正面からぶつかっていく内容が多いですから、これに対してどのように取り組むかを個人の裁量で決めるという所が難しいところですかね。これは逆に弁護士の仕事の面白いところでもありますが。
休日の過ごし方
基本的にはボーっとしていることが多いですが(笑)。私は農家の長男でして、田畑を受けついでいまして、自分の家で食べる分の米と野菜は、自分の田畑で作っているんです。農地の大部分は他の人たちに任せているのですが、自分で休日に農作業することもあります。早く弁護士やめて自給自足の生活にでもしたいですね(笑)。
今後の弁護士業界の動向
弁護士は多すぎるとか就職できないとか、いろいろ言われていますが、現実には若い法曹の力がたくさん求められていると私は思います。少年事件の付き添い、成年後見の問題、障害者や高齢者の虐待の問題など、社会にはまだまだたくさんの人権問題があります。震災や原発の問題も大変です。損害賠償をどうするか、権利関係をどう整理すれば良いかなど、弁護士がやるべき仕事は無尽蔵にあります。
弁護士が多すぎるというのは、ある分野に弁護士が偏ってしまっているということが問題なのだと思います。どのような仕事をする弁護士が求められているのか、視点と解決する意欲を持っている弁護士は、これからも本当に求められるし、たくさんの仕事があります。
ページを見ている方へのメッセージ
B型肝炎訴訟、アスベストの問題など、自分の儲けと関係なく頑張っている弁護士は結構たくさんいると思うんです。被害者を救済しつつ、そのようなことを2度と起こしてはならないと、一歩進んだ人権問題に取り組んでいる弁護士はたくさんいます。また今回の震災、原発の問題に関しても、被害を受けた人をどう救済すればよいのか、弁護士会も真剣に取り組んでいます。そのようなことは是非ご理解していただきたいですね。