竪 十萌子 弁護士 インタビュー
弁護士を目指した理由
幼い頃から人と話すこと、人の相談に乗ることが好きでした。あとトラブルが嫌ではなかったのです。日本人だと何かトラブルがあるとみんな黙り込んでしまうということが多いかなと思うのですが、私はそういうことが嫌で、思っていることはみんなで言い合っていこう、という性格なのです。そして、お互いが主張し合う場を通して関係が修復していくという体験をたくさんしてきました。
また、人に相談されているときに一生懸命アドバイスをすると、人がパッと笑顔になることがあるんですね。その瞬間にものすごく喜びを感じまして、こういうことが仕事にできたらいいなと考えました。それでいろいろ探した結果、弁護士だなと思ったのです。
業務内容
離婚事件が一番得意です。DVや子どもの問題、面会交流も含めて、様々な離婚事件を多数扱っています。離婚で迷われた方は、是非一度ご相談にいらしてください。
また、セクハラや育休解雇、慰謝料請求等、様々な女性問題も複数扱っています。
その他、労働事件や破産事件、損害賠償事件や刑事事件(被害者側・被告人側)等、市民に密着した事件は何でも行っています。
印象に残っている事件
たくさんあるのですが、特に印象に残っているのは、児童虐待の事件です。児童虐待についてはロースクールでゼミを取っており、興味を持っていました。
実際の事件では、児童相談所や家庭裁判所と何度も交渉し、事件の事実に触れては悲しさで涙を流しながら、絶対に勝つ!待っていてね!と何度も心に誓っていました。そして、1年かかって裁判に勝ち、子ども達を適切な場所に戻すことができました。子ども達は、今は本当に幸せに暮らしています。
また、刑事事件で、素早く対処して勾留を解いたことにより、被疑者が解雇にならずに済んだ事件なども印象に残っています。
「反貧困の弁護士」としての活動
弁護士になった時から「反貧困運動」に関わり、「反貧困ネットワーク埼玉」の初代事務局長として、派遣村埼玉や、夜回りや、相談活動をしてきました。
反貧困の活動を通じて、自分は恵まれた境遇にいたのだということをしみじみと感じ、「自己責任論」に強く違和感を持つようになりました。現場を知って、自己責任論は違う、と今は明確に思います。
生活保護が引き下げられ、相談の度に、貧困の底抜けを感じ、強い憤りを覚えています。「誰もが生きやすい社会」を目指して、憲法カフェや女性達が集う「はぐたまカフェ」やフードバンクの立ち上げ等、様々な社会活動をこれからもしていきたいと思っています。
仕事で嬉しかったこと
弁護士のみなさんが言われているように、依頼人に感謝されるのはもちろん嬉しいです。あとこの仕事をしていると、人間の思わぬ強さに触れることがあるんですね。依頼者がものすごく大変な状況に陥っていても立ち向かっていく姿を見るこることがしばしばあるのです。そういう時は本当に感動しますし、依頼者を心から尊敬することがしばしばあります。人の強さに触れる瞬間が今はとても嬉しいですし、原動力になりますね。
大変だと感じること
自分の時間との調整ですね。弁護士の仕事はやるべきこと、やりたいことが、無限に出てきます。そこをどうやってバランス良く調整するかということです。あまりにもやりすぎると倒れてしまうと、結果的に周りに迷惑をかけてしまいます。継続的に仕事をしていくために、どこまで突っ走って、どこで手を引くかのバランスを見極めるのがとても難しいです。
休日の過ごし方
私は運動が好きなので、ジムに行って体を動かすようにしています。ジムはロースクール時代から行っていましたね。体を動かさないと体がピキピキになって、効率も悪くなるからです。時間がある時は旅行もします。
弁護士としての信条・ポリシー
「依頼人と一緒に闘う」ということと、「依頼人に寄り添う」ということです。相談に来ている依頼人は大変な思いをしているので、傷つけないように、ホッとしてもらえるようにということが目標ですね。あとは現場、事実を重視するということです。法律論の前に、まずは現場、事実をしっかり理解し、それをぶつけることが大切だと思っています。
関心のある分野
すっかり反貧困のイメージがついているかも知れませんが(笑)、もともと女性の権利を守りたくて法律家になったので、女性の分野に関心があります。
女性の案件は沢山扱っていますので、引き続き、この分野は強くなっていきたいです。
また、子どもの貧困は本当に深刻なので、子どもを守る活動には携わっていきたいです。それには、子どもを取り巻く大人の環境を整えることもとても大切だと思っていますので、一人一人の依頼者の方の問題に目を向けて、共に問題を解決していく活動もしていきたいです。
今後の弁護士業界の動向
法律家は増えて欲しいと思っています。ただ今後は弁護士だけではなくて裁判官、検察官の数も増やすべきだと思います。裁判所は事件が多く、簡易裁判所や刑事裁判では、事件が十分に吟味されず、あっという間に処理されてしまう現状もあります。
裁判は人の人生を左右するので、本当は1つ1つの事件をもっと丁寧に扱わなければならないと思っています。一人の裁判官に対する事件が多すぎる面はあると思います。法律家が増える意義というのはより多くの人の人権を守ることにあるのですから、弁護士以外の分野にもきちんと人を増やして、丁寧に事件処理ができる体制を整えないといけないと思います。
今後のビジョン
様々なネットワークを組んで問題に取り組める弁護士になりたいと思っています。多くの問題は法律だけでは絶対に解決できません。自分のところに来た依頼者が、自分のところを離れるとき、ここから先は大丈夫だろうか、と必ず気になります。そのため、様々な専門家同士がつながりをもって、簡単にお互いを利用できて、お互いの得意分野で活躍し合えるような体制を築いていきたいです。
女性の当事者と様々な女性の支援者で集まる「はぐたまカフェ」はそういった目的の下に設立しました。これからも、様々なネットワークを広げていきたいと思っています。
ロースクール制度について
ロースクール制度は非常に良い制度だと思っています。旧司法試験の勉強の時は、試験が一度勝負なので、早く受かるためには、試験に関係ない授業に出なかったりボランティア活動を控える等、できる限り無駄を省き、ひたすら一人でこもって勉強というスタイルを取っていました。
そうすると、人と関わることが好きで、弁護士を目指して勉強をしていたのに、試験勉強をするほど、段々と人との関わりやトラブルが本当に面倒くさくなっていきました。様々な問題を解決する法律家の試験が、一度勝負の試験制度というのは何か違うのではないかと思っていました。
そういう時にロースクール制度の構想を聞いたのです。試験は点ではなく、線にすべき、色々な知識を持った人が、授業で議論し合いながら法律家になっていくべきだという構想を聞いて、「まさにコレだ!!」と思いました。それでロースクールの入学を目指しました。
ロースクールでの勉強は本当に楽しかったです。法律や判例をただ覚えるだけでなく、一審から判例を読み解き、授業で充分に議論を重ねました。議論に対応してくれる教授や実務家も沢山いてくれました。ロースクールに入って、法律が生きて見えるようになり、また勉強が楽しくなったのを鮮明に覚えています。苦楽を共にする大切な仲間達もできました。司法試験以外の勉強もしっかりやりました。これが今実務家になってとても役に立っています。
お金がかかることや合格率の問題など、いろいろ不備があることは事実ですが、司法試験の制度としてはロースクール制度の方が絶対にいいと信じています。なので、不備があるから、ロースクール制度は止めよう、ではなくて、不備のある部分を直してよりいいロースクール制度にしよう、という方向に行って欲しいと強く願っています。
ページを見ている方へのメッセージ
まずは悩んでいる方は弁護士に気軽に相談して欲しいです。あと貧困問題に是非関心持って欲しいです。何もしなくていいので、貧困者、障がい者と行った社会的弱者と言われる人達に興味を持っていろいろ考えて欲しいのです。
現状を見た上で生活保護の受給者へのバッシング、自己責任論といった考えた方は本当に正しいのか、といったことをいろいろ考えてみて欲しいと思います。
世論が裁判を動かしていくので、世論はとても大切だと思っています。もっと優しく生きやすい世の中にしていかないと日本自体がダメになってしまうのではないかということを、女性問題、労働問題、貧困問題に取り組んでいる中でひしひしと感じます。