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2018年11月15日 10時01分

新聞「押し紙」シンポ、保守系議員ら「必ず表に出す」 求められる自浄作用

新聞「押し紙」シンポ、保守系議員ら「必ず表に出す」 求められる自浄作用
左から黒薮さん、木原議員、小坪市議、寺崎さん

「架空の読者をつくって、(部数を調べる)ABC協会の調査を乗り切ったことがあります」。登壇した男性は、後ろめたそうに語った。

新聞の「押し紙(残紙)」について考える集会が11月1日、衆議院第二議員会館であった。

冒頭の男性は、佐賀新聞の販売店の元店主・寺崎昭博さん。押し紙をめぐり、佐賀新聞を相手に裁判で争っている。押し紙により7年間で5600万円ほどの負担があったと主張する。

新聞広告の価格は発行部数を参考に決められる。ABC協会は、その部数が正しいかをチェックし、公表する機関だ。実際の購読者と申告部数に差があれば、当然指摘が入る。だから、寺崎さんは架空の読者をつくった。

しかし、新聞販売店にとって、それは折り込みチラシの広告主に嘘の部数を申告することでもある。寺崎さんが後ろめたく思う理由だ。

「新聞社は、販売店を共犯者に仕立て上げる。嫌で仕方がなかったから、頑張って読者を増やしました。でも、翌年、さらに多くの仕入れを要求されたんです。終わりがない」。寺崎さんは弁護士ドットコムニュースの取材にこう答えた。

2018年3月には、佐賀新聞から契約更新を拒否された別の販売店主の事件で、佐賀地裁が店主の地位にあることを認める決定を出している。この事件では、店主が仕入れ数を減らしてほしいと佐賀新聞に求めていたのに拒否されていた。

押し紙に協力できなければ、契約を打ち切られてしまうかもしれない。そんな力関係の差が、問題の表面化を防いでいる側面もあるという。

寺崎さんは言う。「新聞という商品自体は自信を持って販売していた」「押し紙をなくすことで正しい新聞社を取り戻して欲しい」

●「押し紙」ではなく、「販売店が自主的に注文している」?

新聞販売店は、新聞社から新聞を仕入れ、購読者に配達している。仕入れの量は購読者数ぴったりではなく、雨の日などで必要になる「予備紙」や販促用の「見本紙」など、ある程度の余裕がとられている。

だが、少なくとも一部の販売店には、「予備」とは言い難い量が運ばれている。これが「残紙」だ。特に新聞社が、販売店に仕入れを強要しているものを「押し紙」と呼ぶ。販売部数によって決まる新聞広告の収入を増やすなどの目的があると言われている。

押し紙問題にくわしいフリージャーナリストの黒薮哲哉さんは、押し紙の仕組みについて、次のように説明した。

「押し紙には、折り込み広告もついてくるし、新聞社からの(販売網維持などのための)補助金もある。広告収入と補助金が、新聞の卸原価を上回れば、押し紙でも損は出ない。新聞社としては、押し付けたものではなくて、販売店が自主的に注文しているという位置づけ」

実際に、販売店が自主的に抱え込むこともあり、そうした場合は「積み紙」や「抱き紙」などと呼ばれることもある。

押し紙は1980年代に国会で取り上げられるなど、古くからある問題だが、新聞の発行部数が多かった時代は、折り込み収入が見込めるため、販売店からの不満は一定程度に収まっていた。

しかし、部数が減少に転じた1990年代の後半ごろから、「読まれずに捨てられるだけの新聞」が、販売店の経営を圧迫していったと、黒薮さんは指摘する。

●「予算部数が決まっているから減らせない」

押し紙が、実際にどの新聞社で、どの規模で行われているかは定かではない。同じ新聞社でも、販売店によって規模が違う場合もあるという。近年の国会では、2017年に共産党の清水忠史議員が実態調査を求めている。

それでも、押し紙が存在すること自体は事実のようだ。少数ながら裁判でも、山陽新聞のケース(広島高裁岡山支部2011年10月28日判決)や読売新聞のケース(福岡高裁2009年6月19日判決)などで認められている。また、金銭和解で終わり、表に出て来ない例も複数あるとされる。

元全国紙記者で作家・フリージャーナリストの幸田泉さんによると、大阪では2016年に販売店が毎日新聞を訴えた裁判が2件起きたという。しかし、いずれも和解が成立している。2018年9月には、毎日新聞を相手にした新しい裁判が1件起きたばかりだという。

幸田さんは新聞社時代、社会部をへて販売局に配属された。その経験をもとに退職後、『小説 新聞社販売局』を出版している。押し紙が出る理由については、「新聞社は春に(年間の)予算部数を決める。予算部数が決まっているので、販売店が言っても減らせない」と説明する。

●押し紙問題、安直な「マスコミ叩き」ではない議論を

集会には、自民党の木原稔議員が出席。押し紙について、「明らかに不正行為、犯罪行為」と述べ、自身の見解を披露した。

「(押し紙が)なかなか世の中に出てこないのは、なぜか。新聞社の『犯罪』だからです。彼らは自分たちに不利なことは記事にしない。

『だったらテレビがやればいいじゃない』と言うかもしれませんが、やりません。クロスオーナーシップ。テレビ局の株主が新聞社だったり、役員が新聞社から来ていたりする」

「明らかに法令違反です。消費者契約法、郵便法、独禁法。一番は刑法、詐欺罪です。広告料は発行部数に応じて決まる。もし水増ししていて、利益を得ているなら、詐欺罪。犯罪ですから、表に必ず出さないといけない」

また、同じく自民党の宇都隆史、和田政宗議員もメッセージを寄せた。集会を中心になって企画したのは、ネット保守層からの人気も高い、福岡県行橋市の小坪慎也市議だという。小坪市議は「この問題はイデオロギーの問題ではない」と強調する。

メディアから「監視」される議員、特に与党の国会議員が追及の主軸になれば、「押し紙問題」にかこつけた「マスコミ叩き」に発展する懸念もある。一方で、議員たちが「忖度」すると、問題を広く知ってもらうことが難しくなるというジレンマがある。

ネットが普及した時代でも、私たちが得ている情報の多くは、地域や全国に情報網を張り巡らせている新聞社からもたらされており、その有用性は未だに高い。

左右を問わず、多くの人に問題を知ってもらうとともに、新聞社が「言行一致」を貫くためにも内部の自浄作用に期待したい。(編集部・園田昌也)

(弁護士ドットコムニュース)

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