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文科省の通知「高校生のデモ参加はダメ」が見直しへーー弁護士「解禁は当然」
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文科省の通知「高校生のデモ参加はダメ」が見直しへーー弁護士「解禁は当然」

高校生がデモや集会に参加することは、好ましくない――。高校生の政治活動は、1969年、当時の文部省が出した通知によって制限されていたが、そのルールが変わろうとしている。朝日新聞(9月16日付け)の報道によれば、選挙年齢が18歳以下に引き下げられたことを受け、学外での高校生のデモや集会参加を認めるとの方針転換を検討しているという。

高校生のデモ参加の制限は、学生運動が盛んだったころに文部省から各都道府県の教育委員会に伝えられたもので、いまの実態にあわないという指摘もあった。今回の文科省の通知案では、高校生の「校外」の政治活動を認める点を評価する声がある一方で、依然として「校内」での活動を制限していることから、不十分だという指摘もある。

今回の通知の見直しについて、弁護士はどのように評価するのだろうか。猪野亨弁護士に聞いた。

●通知の見直しは「当然のこと」

「本来、高校生であろうと基本的人権の享有主体であり、政治活動の自由の主体です。従来の通知では、校内外を問わずデモの参加がダメだと指導されること自体、非常に問題でした」

なぜ、これまで高校生のデモ参加は、禁止されてきたのだろうか。

「通知が出された背景には、1960年代に反体制的な政治活動が大学生によって行われ、それが高校生にまで拡大してきたことに対する当時の自民党政権の危機感があったと思います。そうした危機感が、高校に対して、生徒がデモなどに参加しないように圧力を掛けることにつながったのでしょう。

教育上、好ましくないなどということが禁止の理由に挙げられてきましたが、全く理由になっていません。中学、高校と公民について学ぶことが重要だというのであれば、学び考えたことを生徒が発言していくことは当然の流れです。

生徒であろうと、そういった相互の表明の中で、なお一層、自らの考えなどの研鑽が生まれ、成長していくのです」

今回の見直しは、当然のことなのだろうか。

「今回、18歳選挙権が実現したことを受けて、文科省は校外では政治活動を『解禁』するというのですが、選挙活動と政治活動は性質が異なります。

そもそも、有権者ではないからといって政治活動の自由が制約されていること自体、高校生の政治的意見表明の自由を考慮していないものであり、憲法上も問題があると言わざるをえません。

有権者であればなお一層、制約すること自体、不合理であることは明らかです。『解禁』は当然のことです」

●「校内禁止」は高校生を愚弄するルール

文科省の案では、校内では禁止というルールが残っている。

「授業の妨害になることはもちろん認められませんが、文科省の意向を受けて、高校が一律に禁止することは明らかに行きすぎです。政治活動で校内秩序が守られないとの理由は、あまりに高校生を愚弄するものです。

授業時間以外に自らの意見を文書にしたものを配布したり、放課後に政治に関する勉強会を開催しても、一般の部活(サークル)と同様、高校生の自主的活動として賞賛されこそすれ、禁止しなければならない合理的な根拠など全く見出すことはできません。

政治的中立が要請されると言いながら、学校では政府見解がそのまま教えられたり、道徳教育という名の愛国教育がなされている現状こそ、中立とは言えません。

高校生の校内での政治活動の一律禁止を高校に迫るのは、自らに都合の悪いものを禁止したにすぎず、憲法違反と言わざるをえません」

猪野弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

猪野 亨
猪野 亨(いの とおる)弁護士 いの法律事務所
札幌弁護士会所属。離婚や親権、面会交流などの家庭の問題、DVやストーカー被害、高齢者や障害者、生活困窮者の相談など、主に民事や家事事件を扱う。

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