刑事弁護・少年事件に注力「加害者にも被害者にも寄り添える弁護士でありたい」
一冊の本との出会いから、弁護士の道へ
ーー弁護士を目指そうと思ったきっかけや理由をお聞かせください。
中学生の頃、弁護士の大平光代先生が書いた「だからあなたも生き抜いて」という本を読んだことで、法律家に興味を持ちました。大平先生は、いじめを苦に自殺未遂をしたり、非行に走ったりと辛い人生を送ってきたのですが、司法試験に合格して弁護士になり、少年事件をはじめとする様々な事件を通して人助けをしていると知りました。
この本を読んで、「弁護士は、人の弱い部分を受け入れながら、その人の未来に付き添うことができるんだ」と感動しました。
当時は、弁護士になりたいというよりも、法律家に対して漠然と憧れを持っていました。高校生の頃に、木村拓哉さんが検察官を演じたドラマ「HERO」が大ヒットして、その影響で検察官にも惹かれていましたね。
ーー大学は法学部に進学し、その後ロースクールに。どんな学生時代を過ごしていましたか。
ロースクール時代で思い出深いのは、一から学生委員会を立ち上げ、委員長を務めたことです。私が通っていたロースクールには当時、学生の自治組織がなく、ロースクール生の意見を取りまとめて反映するような活動が行われていませんでした。そこで、同期と一緒に組織を作り、それまで設備として不十分だった自習室や談話室を整えるなど、新しいシステム作りをしました。
もともと、人の指示に従うよりも、自分で考えて行動するほうが好きなんです。高校時代は生徒会長や体育祭の応援団、軟式テニス部の副部長も務めていました。自称ですが、「目立ちたがり屋のシャイボーイ」です(笑)。
ーーロースクール卒業後は、しばらく飲食店で働いていたと伺いました。
はい。居酒屋でアルバイトをしながら司法試験の勉強を続けました。居酒屋を選んだのは、コミュニケーションスキルを磨きたいと思ったからです。
法律家の仕事をする上では、人が内側に抱えている痛みや悩みを引き出すスキルが必要です。当時、自分にはそのスキルが足りないと感じていました。居酒屋には、老若男女問わずいろいろなタイプの人たちが集まります。コミュニケーション能力を磨くにはぴったりだと思い、行きつけのお店で働かせてもらうことにしました。
日々、様々なお客さんと接するなかで、話の聞き方や引き出し方を学べて本当に勉強になりましたし、楽しかったですね。気が付いたら4年間も働いていました。
今は、当時身に着けたコミュニケーションスキルを活かして、できるだけ依頼者が話をしやすい雰囲気を作ろうと日々努力しています。
刑事事件・少年事件専門の弁護士事務所で活躍
ーー注力分野を教えてください。
もともと検察官を志望していたこともあり、刑事事件に注力しています。「弁護士になるなら刑事弁護専門の事務所に入りたい」と考えていたので、就職活動では刑事専門か刑事に強い事務所しか受けなかったです。最終的に、刑事事件・少年事件のみを扱っていた今の事務所に入所しました。
ーー刑事事件のやりがいを教えてください。
検察官に憧れていたときは、「検察官は被害者と加害者の両方からじっくり話を聞き、公平な判断をする仕事だ」とイメージしていました。でも実際には、検察官が当事者の話を直接聞く機会はそんなに多くありません。
一方、弁護士は、依頼者である加害者と面会を重ねてじっくり話を聞きますし、被害者とも示談交渉などを通して何度も話をする機会があります。
示談交渉といっても、「依頼者の罪を軽くしてほしい」と被害者と話し合うことだけが目的ではありません。被害者に対して被害弁償するためにも示談は重要な意味を持ちます。
弁護士という立ち位置だからこそ、加害者と被害者、双方に寄り添える活動ができます。この点が弁護士として刑事事件に関わることの魅力で、非常にやりがいを感じます。
ーー仕事をする際に心掛けていることは何ですか。
極力、専門用語を使わないことです。どうしても使わざるをえないこともありますが、そういうときは、当事務所にある「被疑者ガイド」というパンフレットを使って説明します。刑事手続きの流れが図で書かれているので、視覚的に理解できます。
ーー依頼者とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか。
年齢が近い方であれば、あえて敬語を使わずに話すなど距離を縮める努力をしています。
ただ、距離が近くなりすぎると、「加害者と被害者のどちらに対しても公平な立場でいる」というスタンスを保てなくなってしまいます。気持ちの面では距離を保ちつつ、態度の面で距離を近づけることを意識して応対しています。
ーー相談者や依頼者のなかには、話をしたがらない方や、話すことが苦手な方もいると思います。どのように接していますか。
あらかじめ事件の概要が分かっている場合、「これは、こういうことなんですか?」と、イエスかノーで答えられるような質問をするよう工夫しています。
また、質問をする前に、「あなたの状況をいい方向へと進ませたいので、今からこの部分を確認したいと思っています。だから、質問に答えてくださいね」というように、本人にとって、質問に答えることがプラスになると伝えるようにしています。
ーー今まで弁護士として活動してきたなかで、印象に残ったエピソードを教えてください。
弁護士になってすぐの頃に担当した刑事事件が非常に印象に残っています。オレオレ詐欺のかけ子、共犯者5人を一気に裁判する、という事件でした。私は、ある一人の加害者が逮捕された時から受任していて、ほぼ毎日面会に通っていました。
当初は、全員黙秘という弁護方針で準備を進めていました。でも、たまたま検察官と話す機会があって、「この事件はこのまま起訴するんでしょうか」と聞いたところ、「全員黙秘ですが、起訴はできると思います」という返事が返ってきて。それなら、「いっそのこと話してしまおう」と方針転換したんです。
そこからは、「私が担当している被疑者が、一番最初に自白しますので」と、検察官と協議しました。すぐに自白をしたという証拠を残すために、取り調べも即時入れてもらえるように進めました。もちろん、依頼者にもきちんとメリット・デメリットを説明して、納得してもらったうえです。結果的に、他の共犯者たちよりも前に自白したということで、私の依頼者の量刑はかなり下がりました。
ただ、依頼者に対しては、主刑のほかに追徴金が科せられました。それもなぜか、被害額全額です。押収された詐取金や、すでに被害者に支払っていた一部の弁償金などが差し引かれないのはおかしいと考えました。
それで、控訴することにしたんです。結果として、実刑にはなりましたが、追徴金の額を大幅に下げることができました。弁護士のやり方によって結果は全く変わるのだと実感できた事件でした。
依頼者だった方は、刑務所から1〜2か月に1回くらい、手紙をくれ、私もそのたびに返事を書いていました。仮釈放されたときには、お母さんよりも先に私に電話をくれました。更生して就職が決まった時も連絡をくれて、「本当によかったな」と嬉しく思ったことを覚えています。非常に印象に残っている事件です。
加害者・被害者を問わず、網羅できる刑事弁護活動を
ーーお休みの日はどんなふうに過ごしていますか。
謎解きゲームが大好きで、電車とコラボレーションしているイベントなどによく参加しています。
あとは、自転車であちこち走り回ることも多いです。散歩用のアプリを利用しているのですが、自分が走ったルートが地図上で自動的に塗りつぶされていくんですよ。それが面白くて、普段は通らない道をあえて走ったりしています。
ゲームも好きで、「モンスターハンター」のシリーズはだいたいやっています。
ーー今後の展望を教えてください。
私が事務所に入所したときには、被害者の方からの案件もお受けしていましたが、事務所の規模が大きくなるにつれて利益相反の可能性も高まってきたので、今では事務所としては加害者専門で案件を受けるようになっています。
でも事務所と相談して、近々、被害者の方からの案件の受任も、個人的に始めようと考えています。ですから今後は、加害者・被害者を問わず、全てを網羅できる刑事弁護活動をおこなっていきたいです。加害者側の事件はある程度経験を積んできたので、これからは、もともと興味があった被害者支援にも注力していきたいと思います。
ーー法律トラブルを抱えて悩んでいる方へ、メッセージをお願いします。
法律相談を無料でおこなっているので、気軽に来ていただければと思います。私自身、相談者の方が話しやすいような雰囲気づくりに努めています。
「法律事務所は敷居が高い」「こんな相談で弁護士に時間をとらせてしまってもいいのだろうか」と、迷われている方もいらっしゃるでしょう。でも、誰かに話すことで不安が解消することもありますし、専門家の意見を聞くことで、自分では思い至らなかったことに気づけるかもしれません。とにかく、気軽に足を運んでいただければ嬉しいです。
私たち弁護士は、できる限り依頼者の心に寄り添いたいと考えています。そして、事件の解決の向こうにある更生に向けた支援まで、しっかりサポートしていきたいです。