鈴木 節男 弁護士 インタビュー
弁護士を目指した理由
司法試験を受けたのはリベンジがしたかったからです。大学は文学部だったのですが、落ちこぼれて中退してしまいました。上手くレールに乗ることのできなかったことに対する敗者復活戦のつもりでした。特に何かをしたくて弁護士になろうと思ったわけではありません。
順調に行っている人を見返したいという思いもあり、やるなら一番難しいとされていた国家試験、司法試験がいいと思い、法律の勉強を始めたのです。
ですから法学部などで勉強したわけではなく、予備校に行きながら独学での勉強でした。すぐに受かるつもりでいましたが、現実は甘くなく、合格するまでに8回もかかってしまいました。受からないことが続く間は、精神的にも経済的にもしんどかったですが、楽観的な性格からか、このまま受からないかもしれないと思ったことも諦めようと思ったことも一度もありませんでした。見返してやりたいという思いが強かったからかもしれません。
今までの経験と現在の仕事内容
所属事務所の顧問先に企業が多い事もあって企業法務が多いです。しかし事務所の取り扱う案件がそこに限定されているわけではありませんから、他の一般民事、個人が依頼者となるような離婚、相続といった分野も扱います。また、個人事件としては専ら国選弁護事件や法律扶助事件を引き受けています。
ホームレス問題の取り組み
「弁護士を目指した理由」とも関連しますが、自分自身がエリートではありません。一旦落ちこぼれてしまいましたし、弁護士になれたのも、まわりの環境に恵まれたからです。アルバイトをしながらの受験でしたが、ある程度両親から援助を受けることができましたし(父は工場労働者で決して裕福ではありませんでしたが、自分たちの生活費を削って援助してくれました。)、なにより、親不孝な息子を寛大な目で見守ってくれていました。
貧困問題を抱える人々の多くは、そこから抜け出すためのきっかけを得られないまま放置されています。私の場合のように、リベンジするための環境がないのです。
報道などでは、例えば生活保護についても申請者が怠けているといった指摘がされますが、それは恵まれた立場からの意見です。そもそも競争するためのスタートラインにすら立たせてもらえていないのに、それをすべて自己責任だとして本人に押し付ける風潮に、どうしても承知ができなかったのです。
具体的な活動内容
大阪弁護士会人権擁護委員会の中にあるホームレス・社会福祉問題部会に所属して、地域のホームレス自立支援センターにおける法律相談のほか、生活保護の相談、生活保護の申請同行などをおこなっています。
生活保護における問題
いわゆる水際作戦と言われるのですが、申請者が役所の窓口でウソをつかれて追い返されるという事があります。
一時期、リーマンショックなどをきっかけに働ける人も社会状況などで働けないという問題が社会に表面化したことで申請が認められやすくなるという時代もあったのですが、状況はまた厳しくなっています。お笑い芸人の不正受給の問題がワイドショーなどでも取り上げられてバッシングされるという事がありましたね。
今の風潮はあのような感じで、また最近は膨れ上がる社会保障費を背景に、生活保護を抑制しようという動きも活発にありまして、窓口の対応がまた厳しくなってきたという印象があります。
どのような声が寄せられるか
日弁連で全国一斉の生活保護に関するホットラインを実施しました。大阪の会場でも朝10時から夜8時まで生活保護の電話相談をしたのですが、電話がずっと鳴りっぱなしでした。
その内容も例えば、70・80代のすごくご高齢の方が子どもを必死で支えている。お子さんが引きこもりや、うつ病などの事情で働くことができないという世帯ですね。
世間には迷惑はかけられないからという事で、自分の年金収入だけでは足りないのでパートに出るなどして子どもの生活を支えてきたけれども、高齢のためこのような生活を続けて行くのはもう限界だという事での相談などが非常に多かったです。つまり本当にぎりぎりまで辛抱して、止む無く生活保護に助けを求めるという方が圧倒的な大多数なのです。
生活保護の不正受給について
現場で声を聞いている身からすれば、あれはバッシングの為の誇大な喧伝ではないでしょうか。客観的なデータを見て頂きたいと思います。不正受給の全体の保護費に占める割合は0.4%に過ぎません。
さらに不正受給の中身についてもよく週刊誌などで言われるような悪質なものは、極めて特殊な例です。
実際に多いのは例えば受給世帯の高校生の息子さんがアルバイトをした場合です。生活保護費では当然すべての支出をカバーできませんから、部活動の部費などのためにアルバイトも必要でしょうね。そこから得たお金というは、役所にきちんと申告しておけば就学のための費用として収入認定から除外されることになっています。しかし申告を忘れてしまうと不正受給とされてしまいます。
このように不正受給もその中身が問題で、実態はマスコミで言われているような悪質なものではない場合が大半なのです。もちろん悪質なものも一部ありますが、その様なケースについては、詐欺罪で摘発するなど個別の対応を取るのが筋ではないでしょうか。どのような制度でもそれを悪用する人は一定数存在します。それなのに生活保護ばかりが叩かれていることに理不尽さを感じます。
弁護士としての信条・ポリシー
基本的には「丸い解決」ができればいいと思っていますね。裁判が終わった後になるべく当事者間に禍根を残さないようにという事です。
企業同士の争いならまだしも個人同士の案件という事になると、そこには人間関係がありますから。裁判に勝つという事が必ずしも全面的な解決にならない場合もあります。勝ち過ぎたがために、後日相手から嫌がらせを受けたりすることもあり得ますので。場合によっては和解なども視野に入れつつ何がその人にとってベストな解決なのかという事は常に考えます。