労働問題の解決事例
  • 給料・残業代請求

引継ぎの不備を理由に減額された退職金の減額分を請求した事例

40代 男性
この事例の依頼主 40代 男性

相談前の状況 相談者は10年余り勤務した会社を自主退職しましたが、会社から、就業規則所定の額から減額した退職金を支給されました。会社は、就業規則に、不明確ながら退職時の引き継ぎの状況次第で退職金支給率を引き下げることができるようにも読める規定があることを根拠に引き継ぎが不適切であったから減額したと主張していました。

解決への流れ 退職金には通常、賃金の後払いの性格があるとされます。当該会社の退職金制度も勤続年数に従って支給率が逓増することから賃金の後払いの性格があることは明らかでした。だとすると、「引継ぎの不備」が減額事由となりうるのか疑問であり、とくに具体的な基準もなく主観的な判断で減額できるものとすることは不合理です。
したがって、就業規則の規定について、会社が主張するような退職金支給率の引下げを許容する規定と読むのは合理的な解釈ではなく、仮にその趣旨の規定であるとすれば、不合理であるために無効であると考えられます。そこで、会社に対し、その旨主張して残額の支払いを求め、残業代の一部未払い等の問題もありましたので、あわせて請求を行いましたが、支払いを拒絶されたため、訴訟を提起しました。
訴訟では、争点整理を終えた段階で裁判所から和解勧試があり、ある程度心証が開示されました。その際、退職金については当方の言い分に分がある旨の心証を示されました。協議の結果、当方から退職金差額については全額を計上して算出した和解金額を被告が承諾し、和解で解決するに至りました。

影山 博英 弁護士 影山 博英 弁護士からのコメント 賃金の後払いとしての性格が認められる退職金については、懲戒解雇された場合でさえ、懲戒解雇の場合は不支給とする規定があったとしても、背信性の程度如何により、当該規程の適用が部分的又は全面的に否定されることがあります。それなのに、退職にあたっての引継ぎ業務というごく一時的な業務の遂行状況次第で、それも何ら客観的な基準がないまま、使用者が主観的に「引継ぎが充分でない」と評価することにより減額が可能とすることは、たとえその旨明示した規定があったとしても、合理性が認められることは考えにくいでしょう。この事案では、当職のその主張に裁判所も理解を示しました。
もしも、会社から退職金規程に基づいて計算される退職金額について減額を言われたときには、会社の言い分は裁判所では通用しない可能性が充分あると心得て、ぜひ弁護士に相談なさってください。

影山 博英 弁護士
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