渉外事件に注力し、国際離婚や海外取引トラブルの問題に取り組む
弁護士になってからアメリカのロースクールへ
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
もともと自分の判断で仕事ができる「自由業」に憧れていたので、弁護士は私にとって理想的な職業だと思って、在学中から司法試験の勉強を始めました。
ーー弁護士になられたあと、アメリカのロースクールに進まれていますね。
司法試験に合格して弁護士になってからは、大阪の法律事務所に勤めていたのですが、3年ほど経ったころ、渉外事件を扱いたいと思うようになりました。
渉外事件とは、二国以上の国の法律が関係する業務です。国際離婚や国際相続、日本と海外の企業間での商取引トラブルなど、その国の法律と照らし合わせながら解決します。渉外事件を扱うためには、海外のロースクールで学び、海外の法律事務所で働いて経験を積む必要がありました。そのため、ワシントン大学のロースクールで1年学んで学位を取得した後に、ワシントン州の法律事務所に半年間勤めました。
海外のロースクールで授業についていくのは大変でした。日本の授業は、教授がたくさんの学生を相手に一方的に話しますが、アメリカではマンツーマンのように教授と対峙します。教授は問題を出して学生に回答させます。予習をしていないと答えられないような問題ばかりで、勉強時間を復習に割くことができないくらいでした。毎日、予習のためにいくつもの判例を読む日が続き、1年はあっという間にすぎました。
ーー渉外事件では具体的にどのような業務を担っているのでしょうか。
例えば日本企業とアメリカ企業のトラブルで、アメリカで裁判をする場合、私はアメリカの弁護士資格を持っていないので、現地の弁護士に代理人を務めてもらいます。そして、依頼者である日本企業とアメリカの弁護士との間に入り、裁判を進めるための準備や証拠書類の翻訳などを行います。
いわばコーディネーターです。外国の弁護士と日本の依頼者をつなぎ、裁判を効率的に進められるように動いています。
ーー仕事をする上で心がけていることはありますか?
依頼者および相手方、あるいは相手方弁護士とのコミュニケーションを徹底することを心がけています。
依頼者とのコミュニケーションをきちんと取ること。相手方の言い分は、疑問が残らないように徹底的に質問をすること。依頼者の望んでいることを間違いなく裁判の場に反映させる。そういう姿勢が大事だと思っています。
ーー印象に残っているエピソードを教えてください。
アメリカで国際結婚をした日本人女性の離婚事件を担当したときのことです。子どもを連れて帰国した依頼者のために日本の家庭裁判所で離婚裁判を起こし、離婚できるよう手続きを進めていました。
その裁判中に、依頼者はグリーンカードの手続きのため一人で渡米したのですが、帰国しようとしたときに、空港で逮捕されてしまいました。承諾を得ずに子どもを日本に連れ帰っていたために、夫から全米の警察に指名手配されていたんです。
逮捕されたという連絡を受けたときは、驚きと同時に、やらなければいけない作業が瞬間的に頭の中に浮かんできました。まず、現地の弁護士を探して、依頼者の弁護をしてもらわなければなりません。本人に面会するために私自身が現地へ行く必要も出てくるかもしれない。進行中の日本での裁判も調整しなければいけない。そんなことを瞬時に考えました。
アメリカの拘置所に入れられてしまった依頼者は無罪を主張していました。本人からしてみれば、子どもと一緒に故郷に帰国しただけですからね。ですが、もう一方の親の承諾を得ずに子どもを連れて帰国すると、ハーグ条約の「国境を越えた子どもの不法な連れ去り」に該当する可能性があるのです。現地の弁護士の見立てでも、有罪は間違いないだろうとのことでした。相手方からは、子供を引き渡せば、司法取引によって彼女が釈放されるように検察官に働きかけるという条件が提示されていました。
私は現地の弁護士との意見を聞きながら、依頼者と日本にいる依頼者の家族と話し合いを重ねて、子どもを夫に引き渡すことにしました。その後、依頼者は釈放されましたが、もし彼女が渡米せずに日本に残っていたらーー。そう考えると悔やまれる事件でした。
日本人はアメリカ法を十分理解していませんし、アメリカ人も同様に日本の法律を十分に理解できていません。国際的な問題に関わるにあたっては、関係者にきちんと理解をしてもらうことが非常に重要で、時間をかけて説明するようにしています。
「可能な限り弁護士を続けていきたい」
ーー趣味を教えてください。
ゴルフと麻雀です。弁護士になる前から40年以上続けています。ゴルフは健康のための運動にもなりますし、いい気分転換になっています。
麻雀はコロナ禍でこの1年半ほどできませんでしたから、非常にストレスがたまりました。つい最近、久しぶりに麻雀をする機会があって一気にストレスが解消されました。
ーー最後に、今後の展望と法律トラブルを抱えて悩んでいる方にメッセージをお願いします。
渉外事件の依頼は、今でもコンスタントにありますので、具体的に何歳までという区切りは決めていませんが、可能な限りは弁護士を続けていきたいと思っています。
今はインターネットを使って、すぐに弁護士を探すことができるようになりました。自分の悩んでいる内容に注力している弁護士も見つけやすくなっています。直接コンタクトすることも極めて容易になっていますので、どんどん弁護士にアクセスして、相談されたらいいと思います。