「依頼者の先の人生にまでいい影響を及ぼす仕事がしたい」不動産事件・子どもの問題に注力
複雑な環境にいる子どもたちの力になりたい
――先生が弁護士を目指したきっかけや理由についてお聞かせください。
司法試験を目指そうと思ったのは、大学3年生で進路について考えたときです。
法学部ではなかったのですが、法律には興味があり、刑法の教科書を読んで「こういう考え方は面白いな」と思うこともありました。どうせなら興味があることを仕事にしたいと考えて、司法試験に挑戦することにしました。
大学卒業後は、旧司法試験に数回チャレンジしたあとにロースクールに入学しました。必死に勉強する仲間の姿が刺激になって猛勉強し、新司法試験は一発合格できました。
――注力している分野と、その理由をお聞かせください。
多く手がけているのは不動産分野の案件です。建物の明け渡しや賃料トラブルなど、不動産に関わる相談全般を扱っています。相続の相談も多いです。共有不動産などをめぐってトラブルが起きやすいので、不動産事件を扱う中で培った知見を活かして取り組んでいます。
もう1つ力を入れているのが、子どもに関する事件です。現在は、奈良県弁護士会の子どもの権利委員会に所属しており、また、家庭に問題がある子どもたちが親から離れて共同生活を送る施設の第三者委員も務めています。1学期に1回くらいの頻度で子どもたちと面談して、困っていることや悩んでいることについて話を聞いています。
――仕事をするうえで、心掛けていることは何でしょうか。
法律の話は難しいので、依頼者が理解しやすいよう、わかりやすく丁寧に説明することを心がけています。その際、いい見通しだけではなく、リスクも伝えるようにしています。依頼者を安心させようと楽観的なことばかり言うのは、弁護士として誠実ではないと考えているためです。
また、トラブルの当事者が感情的になっている場合は、私がストッパーになるよう心がけています。感情のまま突っ走った結果、当事者だけでなく、その周りの人たちも巻き込むことになる可能性があるためです。
たとえば、親子間で争いが生じて関係が悪化した場合、その下の世代、つまり孫にまで影響が及ぶ可能性があります。具体的には、孫が祖父母に会いたくても、「親と祖父母の関係を考えると会いにくい…」と思って、関係が疎遠になってしまうかもしれません。
直接的には関係のない第三者までトラブルに巻き込んでしまう。でも、争いの当事者は、そこまで思い至らないこともあります。そこで、私は客観的意見として「感情のままに突っ走ったら、予想外に悪い結果になるかもしれませんよ」と伝え、いったん冷静になっていただくようにしています。そのうえで、トラブルの内容を整理し、どのように解決していくのがいいのか相談者と一緒に考えていきます。
子どもたちが変わっていく様子を感じられることをやりがいに
――弁護士としてやりがいを感じるのはどんな時ですか。
少年事件や施設などで出会った子どもたちが変わっていく様子を目の当たりする時です。
問題を起こす子どもの多くは、育ってきた家庭環境も影響して、自己肯定感が低い傾向があります。「どうせ自分なんか」と悲観的になっている子どもが多いです。
でも、時に怒ったり、励ましたりしてくれる大人と接していくうちに、「自分を見てくれている大人がいるんだ」と気づいて、考え方がだんだん変わっていきます。そういう変化を感じられたときに、弁護士として非常にやりがいを感じます。誰かの人生にいい影響を及ぼすことができたんだと嬉しくなります。
以前担当した少年事件は今でも印象に残っています。その少年は一旦は試験観察、いわゆる様子見になったのですが、その間に新たな問題を起こしてしまい、少年院に入ることになりました。
少年院に入ることが決まってから、何度も彼と話をしました。ただ、こちらの言いたいことがちゃんと伝わったか確信が持てないまま、彼は少年院へと送致されました。
それからしばらくして、彼から「少年院を出た」と連絡があったんです。食事に誘ってみたら「行く」というので、一緒に事件に携わった調停員の方も誘って3人で食事に行くことにしました。
「なぜ電話してきたのか」と聞いても要領を得ない答えで、関わった少年がわかりやすく更生したエピソードではありません。ただ、私との関わりが、彼の中で何かしら引っかかってくれたからこそ連絡をくれたのかなと感じて、記憶に残っています。
――プライベートについても伺います。ご趣味はありますか。
趣味はギターと歌です。一応、ボイストレーニングにも通っています。弁護士になる前は、路上で「ゆず」の曲を歌ったりしていました。
あまり量は飲めませんが、お酒も好きです。妻と家で晩酌を楽しんでいます。
――最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方に、メッセージをお願いします。
弁護士に相談すべき問題なのかどうか悩んでいる段階で、すぐに法律相談にいらしてください。どんな些細な悩みでもかまいません。
時間が経つにつれて、問題がさらに複雑になってしまうこともあります。法律相談を受けるなかで、「もっと早く来てくれていたら、さらにいい解決方法があったのに」と思うことは少なくありません。
奈良県では、無料の法律相談や、法律相談が電話でできる窓口もあるので、積極的に活用してほしいです。
また、インターネットの情報を信じすぎないことです。それが正しい情報ならいいのですが、間違っていることも多々あります。たとえ正しい情報であっても、それがあなたの抱えている問題に当てはまるとは限りません。ぜひ早めに弁護士に相談してください。