長尾 英介 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
学生時代から司法試験が身近にありました。そのような環境の中で当時は最も挑戦のし甲斐のある資格試験でしたので司法試験を突破したいという気持ちが生まれました。
また実家が自営業だったことが影響してサラリーをいただく仕事よりも自分でマネジメントができるような仕事に魅力を感じたのもひとつです。もちろんサラリーマンには大きな仕事を力を合わせて達成する魅力があると思うのですが、すべてを自分でできるわけではありません。
それに対して弁護士は全責任を負う代わりにすべてを把握できます。そちらの方が自分の性に合っていると思ったのです。
今までの経験と現在の仕事内容
弁護士になった当初はイソ弁として交通事故案件を扱う一方、刑事弁護も受任していました。とくに刑事事件は、弁護士になりたての者が弁護士であるという事を実感できる仕事でしたので当時はすごくやりがいを感じ、懸命にやっていました。
そのうち民事でも責任のあるポジションに就けるようなると、民事事件にも徐々にやりがいを感じるようになりました。
民事と刑事の違いは、民事事件は複雑な背景や利害関係がある中で和解も含めた解決を探るという点で単純な勝ち負けだけを考えるのではなくて、双方が納得できる解決を探るバランス感覚が必要とされるところでしょうか。事案が複雑な場合は解決した時のやりがいも人一倍なのです
刑事弁護人は被告人と一対一で向き合います。また、なりたての弁護士であっても検察官と相対する場面では一人前の弁護人として対応しなければなりません。ですから弁護士になった当初は責任も重大ですが、その分弁護士としてのやりがいを感じることができました。
印象に残っている事件
弁護士になって数ヶ月で殺人事件を担当しました。検察官も格上の方でストレスはすごく感じたのですが、終わった時には、やってよかった、と感じました。
当時は弁護士なりたてということもあって、被告人との接見にも多くの時間を割き、被告人と意見交換する時間も十分にあったため、信頼関係を築くことができました。判決宣告後に被告人から「ありがとうございました」と感謝されました。その時にはやってよかったという感慨を持つことができたし、それは一般の人ではなかなか体験できないことではないでしょうか。その方は今でも獄中から年賀状を毎年、送ってくれています。
弁護士としての信条・ポリシー
被告人・依頼者が納得できるように十分に説明を尽くすこと。医療の世界のインフォームド・コンセントと同じですね。
自己決定権を基礎としますが、最終的にどういう医療行為を受けるのかは本人が決めることです。そしてこれは法的な分野でも同じなのです。
法的処理には当然リスクが伴いますから、そのリスクについても説明したうえで最終的に本人が納得したうえで事件処理を進めていくことが、自己決定権の観点からも望ましく、後日の依頼書との衝突を避ける意味でも有用です。だから依頼者の理解できる形で説明をすること、これが我々がまさに法のプロフェッショナルだからこそしなければならないことだと思います。
ただ医療の世界と違うところもあります。
つまり医療行為の場合は治癒が解決となりそうですが、法律の世界では解決とは依頼者の納得の中にあります。他方、依頼者の不満は他者との比較で出てくることが多いものです。自分はこれだけ不利益なのに相手はこれだけ有利ではないかと。
ですから「相手方にこのくらい譲歩させることができれば、他のケースと比べても妥当な結果といえる」という視点の提供をしていくということが重要です。様々な視点を提供してもっとも適切と考えられる方針を提案する、それで納得が得られないなら他の案を提供する、そのようにして説明を徐々に広げていくように意識しています。
インフォームド・コンセントについて
他の事務所に相談にも行った後で、理解できなかった、難解な説明で終わってしまったという事で当事務所に相談にくる方もいます。それでは相談の意味はないでしょう。
全体として丁寧な説明をする弁護士は増えているとは思います。ただ先に述べたように中には説明が不十分と思われる弁護士も存在しますので、全弁護士に浸透したとまではいかないかもしれません。
司法制度調査委員会の活動
カバーしている範囲は非常に幅広く、立法に対する提言や司法制度のあり方、地域司法のあり方の検討なども入っているのですが、中でもいま議論があるのは民法の債権法改正への対応です。民法は特に法律家だけでなく一般の方も比較的日常的に使う法律ですよね。実務家も日常業務の中で頻繁に使っています。
今回は特に全面改正ですので、その改正の必然性を実務家も国民も理解したうえで行っていく必要がありますし、そういった観点からも慎重に扱うべきだと思っています。
しかしながら今の段階ではマスコミなどもあまり取り上げませんし、弁護士自体も改正の全容をつかみ切れていないのが現状です。基本法の話ですのでもっと反響があっていい問題です。
改正試案は相当なボリュームなので実務家でも仕事をこなしながらすべてに検討を加えるというのは難しいのです。ですから我々としてはまずは弁護士自体の認識を高めていきたいという思いで意識調査なども行っています。