
環境問題に取り組むため、エンジニアから弁護士に転身〜外国人事件、マンション問題など幅広い分野で活躍
外資系企業を退社してロースクールへ
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
大学は法学部でしたが、卒業後は外資系のコンサルティング会社に就職し、システムエンジニアとしてIT技術を活用した企業の業務改善などを行っていました。
休暇でカナダへ行ったときに、環境問題に関心を持っている知人に連れられて、NPOの活動に参加したんです。そこで環境問題について考えるようになり、仕事として関わりたいと思うようになりました。
環境問題に関連のある企業への転職も考えましたが、弁護士になれば、訴訟や政策提言など、法律を使った環境問題解決ができるかもしれないと思い、弁護士を目指すことを決めました。
ーー弁護士を目指されてから苦労されたことはありますか?
大学時代は法律の基礎的な科目を履修していなかったため、ロースクール入試に向けて短期間でキャッチアップするのに苦労しました。ロースクールでの勉強はむしろ楽しかったです。就職した企業での仕事がハードだったので、仕事と比べたら勉強は苦になりませんでした。
英語力を活かして外国人事件に取り組む
ーー注力している分野と、注力している理由についてお聞かせください。
外資系企業での勤務と海外生活の経験で培った英語力を活かして、外国人の事件を担当しています。相談内容は、離婚や相続、交通事故、契約書のチェックなど、日本人と同じく多岐にわたります。
外国人事件を扱うようになって、日本で不当な扱いを受けている外国人が多いことに驚きました。また、司法へのアクセスがしにくいことで不便に感じている人が多いと感じます。そうした、日本での生活に不便を感じている外国人の力になりたいと思っています。
もう一つはマンション問題で、これは事務所として注力している分野でもあります。マンション問題は大きく分けて、人が関係するソフト面と、建物が関係するハード面があります。
ソフト面では賃料滞納や管理規約の改定など、ハード面では修繕や建築上のトラブルに関する相談があります。
マンション問題は法による整備が十分でないという印象があります。「区分所有法」という法律があるのですが、他の民事法と比べると歴史が浅く、解釈の余地が大きいため弁護士によって理解に違いがあります。そうしたマンションに関連する諸問題に取り組むため、「マンション学会」や「マンション問題研究会」に所属し、研鑽を積んでいます。
ーー環境問題にはどのように取り組まれていますか?
一つは環境訴訟です。これまで関わったものには、地球温暖化の情報開示訴訟やパーム油発電の公害調停があります。他に、自治会からソーラーパネル設置の相談を受けることがあります。太陽光発電は環境によさそうなイメージがありますが、ソーラーパネルを設置する際の森林伐採など、実は環境破壊と隣合わせです。自治会からの依頼を受け、設置の是非について一緒に検討しています。
また、弁護士会の公害対策・環境保全委員会に入り、意見書の作成やシンポジウムの開催などを行っています。原発問題では2度ほど海外調査にも行きました。環境分野について関心のある弁護士は少ないので、多少なりとも役に立っているのではないかと思っています。
ーー仕事をする上で心がけていることはありますか?
事実関係をしっかり理解するように心がけています。依頼内容を法的に解釈するだけでなく、問題の背景や依頼者の考えまで理解して、依頼者と一緒に悩みながら解決を目指すことを心がけています。
法律に関しては私の専門分野ですが、事実関係は依頼者の方が理解しています。ですから、依頼者から「こういう解決がいいんじゃないか」と言われたときには、耳を傾けるようにしています。こちらから一方的に解決策を押しつけるのではなく、依頼者の考えを聞いて、検討した上で納得のいく解決を目指すようにしています。
ーー弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
依頼者は男性で、別居中の妻に対して子どもの引き渡しを求める事件でした。親権問題では母親が有利なことが多いため、依頼を受けたときには正直厳しいと思いました。妻の弁護士からも「本気で引き渡しできると思っているんですか?」と言われたほどです。
ただ、依頼者には約1〜2年間、子どもを一人で世話している監護実績がありました。このことが印象をよくしたようで、裁判所からは面会の機会を増やすべきという意見が出ました。
しかし、母親はこの意見を無視して、子どもをまったく会わせようとはしなかったんです。そこで、人身保護請求をして、最終的にこちらが子どもの引き渡しを受けることができました。
それまでは、DV被害を受けている女性側の事件を受けることが多かったのですが、この事件をきっかけに男性側の事件も受けるようになりました。それと同時に「子どもに会えない」ことを認める制度に対して疑問を感じるようになりました。
日本人の親権問題では、子どもを相手方に会わせないのが当たり前になっているように思います。「面会交流は月1回」などと決めることが、子どもにも親にもストレスになっていると感じることがあります。
外国人の離婚問題では、子どもを会わせることに寛容です。制限なく、いつでも自由に交流できるという解決事案もありました。日本の男性が育児参加できていないことの裏返しでもあると思うのですが、改められなければいけない問題だと感じています。
さらに活動の幅を広げたい。
ーー休日はどのように過ごしていますか?
ロードバイクが好きで、遠出をしたり、市民レースに参加したりしていたのですが、最近は子どもと過ごすことが多くなりました。習い事に連れていったり、帰りに公園で遊んだり、できるだけ外で遊ぶようにしています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
システムエンジニア時代の経験を活かして、インターネットやソフトウェア関連の仕事を増やしていきたいと思っています。それと、環境問題に取り組みたくて弁護士になりましたが、環境問題にももう少し力を入れたいです。
ーー法律トラブルを抱えていて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
問題を抱えたときに、弁護士にアクセスすることで悩みが解消されることがあると思います。問題を一人で抱え込まないで共有してもらえれば、いい解決方法を見つけることができると思いますので、気軽に相談をしてください。