熊本県人吉で「地域密着」をモットーに人々の悩みに寄り添う
市役所職員を経て憧れの弁護士に
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
「弁護士になりたい」という夢は大学入学前から持っていたのですが、私が大学で法律を学んでいた頃は司法試験の合格率が極めて低かったため、弁護士の道は険しいと考え、いったん公務員の道を選択しました。
大学卒業後に入職した人吉市役所税務課には、多くの方が納税相談に来ました。いろいろな相談を受けていく中で「世の中には困っている人が多い」という実情を知りました。それと同時に、人吉球磨地域には弁護士が1人しかおらず、困っている人が弁護士に相談しづらい環境にあると知ったんです。
地元の人の役に立ちたいと考えたとき、頭に浮かんだのが学生時代の夢だった弁護士になることでした。一度はあきらめた夢でしたが、法科大学院制度がスタートして弁護士の間口が広がった時期だったこともあり、司法試験に挑戦することを決断したんです。
ーー事務所設立までの経緯を教えてください。
司法試験合格後に福岡の弁護士事務所に就職しました。九州の弁護士会がつくった事務所で、弁護士過疎地域に法的サービスを提供することを目的とし、人材育成に力を入れている事務所でした。私もいずれは地元に戻って弁護士をしようと考えていましたので、その理念に惹かれて入所したんです。
福岡の事務所で3年ほど働いた後、熊本に戻ってきて現在の事務所を開設しました。私が弁護士を目指した当時1人しかいなかった人吉球磨地区の弁護士は、私を含めて3人になりました。まだ十分な人数とはいえないかもしれませんが、他の弁護士とも協力しながら、地域の人が抱える問題に取り組んでいます。
豪雨災害がきっかけで相続問題に注力
ーー注力分野を教えてください。
相続分野に注力しています。この地域には大きな企業や大学がないため、多くの若者は高校を卒業すると都市部に出てしまいます。人口流出が激しく、高齢者の割合が増えていく中、相続の相談や遺産を巡るトラブルが増えていると感じ、注力するようになりました。
また、人吉市は2020年に大規模豪雨災害に見舞われた地域でもあります。被災して使用できなくなった建物の多くは解体され復旧が進んでいるのですが、中には相続問題が原因で放置されている不動産もあります。
相続登記を長年放置していたような不動産の場合、公費で解体するにも相続人の同意がなければできません。そのため、相続問題を解決しなければ手がつけられないのです。災害をきっかけに放置されていた相続問題に着手する人が増えていることも、相続に注力している理由です。
ーー仕事をする上で心がけていることはありますか?
弁護士に対して敷居を高く感じるのはどの地域でも同じだとは思いますが、田舎の人は特にその傾向が強いので、地域の方々が相談しやすいような雰囲気づくりを意識しています。例えば親しみやすい言葉遣いだったり、対応の仕方などに気をつけています。
また、市役所の職員だった頃から地元の消防団に参加するなど、地域づくりの活動に積極的に参加してきましたので、地域密着型の弁護士として地元の人たちの役に立ち、地域の発展に貢献したいと考えています。
ーーやりがいを感じられるのはどんなときですか?
以前なら車で1時間から2時間かけて遠方の弁護士事務所まで相談に行かなければならなかったところ、当事務所ができたことによって地元で相談できると喜んでもらえています。
「身近に弁護士がいてよかった」と言われたり、相談を受けるだけで感謝されることもあり、地域の人たちの役に立ちたいという思いを実現できていることにやりがいを感じています。
ーー印象に残っているエピソードを教えてください。
人吉球磨地区には農家が多いのですが、農家の場合、長男が跡を継ぐことが多く、何世代にも渡って相続登記しないまま土地を継承していることがあります。
私が担当した案件の中に、登記名義人が明治生まれの人になっている不動産がありました。依頼を受けて調べてみると、相続人が100人近くいたんです。不動産の名義を依頼者に変更するには、相続人すべての了承を得なければなりませんので、全員に手紙を送って事情を説明し、手紙では納得いただけない場合は直接訪問して事情を説明しました。
相続人の中には依頼者とまったく面識がない人も多く、全員の承諾を得るのはとても骨の折れる作業でした。相続人を調べるだけで1年かかり、すべての手続きが完了するのに2年半ほどかかりました。時間はかかりましたが、無事に名義変更ができたときには達成感があり、依頼者からとても感謝されたことを覚えています。
地域活性化を全力でサポート
ーー趣味や休日の過ごし方を教えてください。
休日は子どもと一緒に過ごすようにしています。公園でサッカーをしたり、時間があるときは遠出をして動物園や水族館に行ったりしています。
趣味とは少し違うかもしれませんが、最近まで青年会議所の活動に力を入れていました。40歳になって卒業したため、それまで青年会議所につぎ込んでいた時間を新しいことに使いたいと考えているところです。キャンプや釣りなど、子どもの成長に合わせて一緒にできることにチャレンジしたいと思っています。
ーー今後の展望をお聞かせください。
人吉市は少子高齢化に加え、数年前の豪雨災害により人口流出が加速して、人口がどんどん減っています。そうした中で弁護士事務所をどのように運営していくのかが課題だと思っています。福岡の事務所で一緒に働いていた弁護士らと連携しながら、田舎町で弁護士が活動できる仕組みなどを考えていきたいと思っています。
地域の活性化にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。青年会議所で培った人脈を活かし、企業のサポートやこれから起業する人たちの支援などを行いたいと思っています。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
私のモットーは地域密着です。地元の人たちの相談一件一件に丁寧に耳を傾け、二人三脚で解決したいと思っています。土日や平日の遅い時間にも可能な限り対応しますので、ぜひ気軽に相談してください。