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「同性婚を認めないのは違憲」全国初の集団提訴へ 「婚姻の自由」侵害を主張
同性婚違憲訴訟の弁護団と首都大学東京の木村草太教授(右から2人目)

「同性婚を認めないのは違憲」全国初の集団提訴へ 「婚姻の自由」侵害を主張

同性のカップルが法律婚できないのは違憲だとする訴訟が、東京および全国数カ所の地方裁判所で同時提訴されることになった。原告は複数の同性カップルで、約30人の弁護団が「婚姻の自由」の侵害などを訴えるという。提訴は2019年2月から3月にかけて行われる予定。

現在、同性婚については欧米を中心に2000年代以降、各国で法制度が整いつつあるが、日本では東京都の渋谷区や世田谷区など一部自治体で同性パートナーシップ制度が導入されているのみ。弁護団によると、法律婚が認められている異性カップルに比べて、同性カップルは配偶者控除が適用されず、配偶者ビザも取得できない。また、相続や子育てでも異性カップルに比べて不利益が多いという。

同性婚を認めないことを違憲だと訴える訴訟は、これが全国初となる見込みだ。では、一体どのような主張になるのだろうか。

●「憲法24条1項は同性婚を禁止するものではない」

「主張の柱」は、「婚姻の自由」の侵害と「平等原則」違反だ。東京都内で11月28日、弁護団がメディアとの懇談会で明らかにした。

「婚姻の自由」の侵害については、「個人の尊重」を定めた憲法13条と「婚姻の自由」を定めた憲法24条1項に触れるとする。まず、憲法13条では、「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定められている。

ところが、同性カップルが法律婚をしようとしても、自治体に婚姻届は受理されない。以前は、憲法24条1項で「婚姻は、両性の合意のみに基づいて行われる」とあることがその根拠とされてきた。現在では、現行民法と戸籍法が同性婚を前提としていないという理由で受理されていない。政府解釈も、憲法24条について「同性の婚姻の成立を認めることは想定されていない」とする(平成27年2月18日参院本会議、安倍首相答弁)。

しかし、弁護団では、憲法24条1項は、同性婚を禁止するものではないとする。懇談会で講演した首都大学東京の木村草太教授は、「両性の合意」の強調は、「戦前の家制度の否定にすぎず、当時広く問題と認識されていなかった同性婚についてはことさら排除する趣旨ではないと理解することもできよう」(長谷部恭男編「注釈日本国憲法(2) 10条-24条」有斐閣)といった説があることなどを紹介した。

また、弁護団は、2015年12月の夫婦別姓訴訟の最高裁判決が「婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻するかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたもの」としており、「両性」という言葉を使用していないことからも、「憲法は同性カップルに婚姻を認めることを要請しており、それを認めてない現状は、同性カップルの婚姻の自由を侵害している」と主張する。

一方、「平等原則」は、全ての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、差別されないとする憲法14条1項に定められている。これについても、弁護団は「憲法は性的指向に基づく差別を禁じており、同性カップルに婚姻を認めない現状は平等原則に反する」とした。

●「立法・行政を一緒に動かしたい」

同性婚をめぐっては、近年、法制度化を求める動きが活発化している。当事者ら約450人が2015年、国に対して同性婚の法制化を勧告をするよう求め、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てているほか、渋谷区や世田谷区など全国9つの市区で、同性カップルを公的に認める制度が導入されている。

各国でも、2001年にオランダが世界初の同性婚を認めて以来、欧米諸国では同性カップルの法律婚が広がっている。弁護団の1人、上杉崇子弁護士は、「G7の国で同性婚を認めていないのは、イタリアと日本のみ。ただ、イタリアでは国として同性パートナーシップ制度がある。国レベルで何もないのは日本だけです。自治体による同性パートナーシップ制度もあるが、不十分な部分は否めません」と指摘する。

弁護団の1人である寺原真希子弁護士も、「訴訟に勝つのが第一目的ですが、広く訴えて、立法・行政を一緒に動かしていきたいです」と語った。今後、弁護団では、2019年1月にキャンペーンサイトを立ち上げ、イベントを実施する予定。2月から3月にかけて集団提訴をする見込みだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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