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「指紋認証」搭載の新型iPhone 「偽造指紋」でロック解除したら犯罪になる?
iPhone 5sには指紋認証機能「Touch ID」が搭載されている

「指紋認証」搭載の新型iPhone 「偽造指紋」でロック解除したら犯罪になる?

アップル社が9月20日に全世界で発売した新型iPhone。発表直後には意外性がない、などとくさす声も上がったが、どっこい、売れに売れているようだ。発売後3日間の販売台数は、過去最高の900万台を超えているという。

上位機種のiPhone 5sに追加された目玉機能の一つが、指紋認証機能「Touch ID」だ。これで、ロック状態を解除する際などの、面倒なパスワード入力が省略できる。セキュリティもばっちり安心……と思っていたら、ロイター通信から驚きのニュースが飛び込んできた。

なんと、ドイツの「ハッカー集団」が、早くもこの新セキュリティを破り、偽造した指紋で認証を突破したというのだ。ただし、報道によると、認証を突破するためにはあらかじめ、対象者の指紋を撮影し、透明なシートに印刷する必要があるようだが。

もしこのような方法で他人のiPhoneのロックを解除した場合、何かの法律に触れることになるのだろうか。盗んだIDやパスワードで、ネットワーク上のパソコンなどに不正アクセスした場合はいわゆる「不正アクセス禁止法違反」になるはずだが……。iPhone 5sをさっそく仕事に活用しているという澤藤亮介弁護士に聞いた。

●偽造指紋による本体のロック解除は「不正アクセス」にはならない

「まず、偽造された指紋を使用してiPhone本体のロックを解除すること自体は、『不正アクセス禁止法』の『不正アクセス行為』には該当しません。

この法律で禁止されているのは、ネットワークを介した不正アクセスです。指紋認証によるiPhone本体のロック解除は、ネットワークを介さない機能なので、この法律の対象とならないのです」

このように澤藤弁護士は説明しながら、次のように続ける。

「しかし、ロック解除後に、iPhone本体に記憶されているIDとパスワードを使用して、インターネット上のサービスを利用すれば話は別です。

Yahoo!メールやGmailなどを立ち上げて、iPhone使用者本人のメールを閲覧したり、楽天、Amazonなどで買物をすれば、同法の『不正アクセス行為』に該当し、処罰の対象となります。法定刑は3年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。

また同様に、偽造の指紋を使用して、Touch IDでApp Storeからアプリを購入する行為もこれに含まれるでしょう。こうした行為はほかに、刑法の『電子計算機使用詐欺罪』に該当する可能性も出てきます」

●他人のiPhoneの情報を盗み見れば「プライバシー侵害」の可能性

澤藤弁護士はまた、民事上の責任についても注意を促す。

「勝手にロックを解除して、iPhone本体に記録されている情報を盗み見した場合、ネットワークを介したかどうかに関わらず『プライバシー権の侵害』になる可能性があります。さらに盗み見た情報を第三者に公開までしてしまうと、民法上の『不法行為』として、持ち主から損害賠償を請求される可能性も考えられます」

他人の持ち物をのぞき見てはいけない、というのは常識だが、スマートフォンだとなおさら、「ついつい見てしまった」では済まないようなプライベート情報が入っている可能性もあるだろう。

澤藤弁護士は「近年、不正アクセス行為での検挙数も増加しているとともに、2012年の法改正では量刑も以前より重くなっています」と指摘。「どのような行為が処罰の対象となるのか、知っておく必要性は益々高まっていると言えるでしょう」とアドバイスしていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

澤藤 亮介
澤藤 亮介(さわふじ りょうすけ)弁護士 向陽法律事務所
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に新宿(東京)キーウェスト法律事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱い、2024年2月から現在の法律事務所でパートナー弁護士として勤務。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。

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