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「偽装結婚」疑われた中国人女性の「国外退去」取り消し、東京地裁「不自然な点なし」
左から、原告女性の長女、原告女性、夫

「偽装結婚」疑われた中国人女性の「国外退去」取り消し、東京地裁「不自然な点なし」

日本人男性と結婚しているのに、在留許可を与えず、国外退去処分とした東京入国管理局の処分は違法だとして、千葉県在住の中国人女性(65)が、国を相手取り、処分の取り消しを求めていた訴訟で、東京地裁(清水知恵子裁判長)は6月21日、処分の取り消しを命じる判決を下した。判決後、女性は都内で記者会見を開いて、「家族みんなで、静かな生活ができるようにしたい」と話した。

●夫婦は「同居」していない時期があった

争点は、女性と夫が、実質的な夫婦関係にあったかどうかだ。

判決文などによると、女性は2013年8月ごろ、中国人の前夫との間にもうけた日本在住の長女(37)の友人を介して、現在の夫である日本人男性(70)と知り合って、同年9月に結婚した。いったん帰国した女性は2014年11月、「日本人の配偶者」という在留資格で、ふたたび入国した。

女性は、夫が住んでいた東京都新宿区のマンションで同居する予定だったが、ほとんど同居しないまま、すぐに当時長女が住んでいた江東区のマンションに移った。その理由は、(1)母子家庭だった長女の育児を手伝う必要があったこと、(2)夫のめいがアルコール依存症で、その世話をするため、新宿区のマンションに同居しており、手狭だったこと。

長女はさらに2015年7月、江東区から千葉県船橋市のマンションに引っ越し、女性も同年9月から同居した。代理人をつとめた指宿昭一弁護士によると、その際、夫も船橋市に住民票を移したが、当時の勤務先が新宿にあったことから「通勤が大変だ」という理由で、勤務のある日は新宿から出勤して、休みの日は船橋に戻っていたという。

●東京地裁「育児を手伝うために長女と同居することは相応の理由がある」

ところが、女性と夫は2015年11月、「偽装結婚」の疑いで警視庁に逮捕された。その後、2人は釈放されて、同年12月に不起訴処分となった。女性はその前に在留期間の更新を申請していたが、2016年1月に不許可とされた。在留期間は2016年2月中旬までだったが、日本に夫や家族がいるため帰国せず、不法滞在となったという。

女性は2016年3月、入国管理法違反(不法滞在)の疑いで、警視庁に逮捕された。東京入国管理局に身柄を移され、同年4月退去強制の決定を受けて、東京入国管理局の施設に収容された。東京入国管理局は2016年5月、女性に対して、退去強制令書を発付した(国外退去処分)。

東京地裁の清水裁判長は、(1)女性と夫が共通の趣味を持っていたことから、出会って短期間で結婚していたとしても、不自然とはいえない、(2)めいの世話で夫と同居が難しかったことや、育児を手伝うために長女と同居することは相応の理由がある、(3)2人が交流しているところを撮影した写真に不自然な点は見当たらない――などと認定した。

●代理人弁護士「同居を絶対要件とすることは、実情に合わない」

女性は現在、仮放免の許可を受けており、夫や長女らと暮らしている。

判決後の会見には、夫と長女、代理人が同席した。長女も偽装結婚の共犯だとして逮捕されて、孫は児童相談所に一時保護されていた。長女は会見で「裁判に勝つことができて、本当にうれしいです。涙が出てしまいました。とてもとてもうれしいです」と喜びをかみしめた。

夫は「正しい判決をいただいてありがたいです。国には、老後と家族の静かな生活のために控訴しないようにお願いしたい。収容された妻は、面談に出てくるときと戻っていくときの表情が本当にかわいそうでした」と話した。

指宿弁護士は「入国管理局は、日本人配偶者が同居していることを、婚姻の真実性の絶対的な要件だと考えて、形式的に(偽装結婚だと)認定している。単身赴任や週末婚もある現代の実情にまったく合わない」と、入国管理局側の対応を批判していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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