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歯科で30分遅刻の患者を「キャンセル扱い」したら逆ギレされた…どう対応すれば?
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歯科で30分遅刻の患者を「キャンセル扱い」したら逆ギレされた…どう対応すれば?

30分遅刻した患者をキャンセルにしたらキレられた――。そんな内容の投稿が1月上旬、インターネット掲示板にされて話題になった。

投稿によると、遅刻したのは、歯科クリニックの患者のようだ。遅刻の電話1本もなく、予約時間に来なかったため、投稿者は「ドタキャン」と判断し、準備した機材を片付けた。ところが、患者は30分後に遅れてやって来て、「当たり前のように謝りもせず怒った」という。

一般的に、歯科クリニックなどでは、予約せずに来院すると待ち時間が長くなるため、予約をすすめられる。投稿者は「せめて電話してほしかった」と嘆いているが、そもそもキャンセル扱いは問題ないのだろうか。今回のような客にはどのように対応すべきだろうか。山岸純弁護士に聞いた。

●「予約時間に遅れてお客さんが来ても意味がない」

「お客さんが特定の日時に治療の予約を申し込み、歯科クリニックが承諾した段階で、両者の間には、委任契約の一種である『歯科診療契約』が成立したと考えることができます。

この『歯科診療契約』に基づいて、お客さんは歯科クリニックに『治療費を支払う』という義務(債務)のほかに、歯科医の診療に協力すべく予約時間に歯科クリニックに行く義務を負っています。

しかし、今回のケースで、お客さんは『歯科医の診療に協力する義務』を怠っています」

では、この契約で、歯科クリニックの義務はどんな義務を負うのだろうか。

「歯科クリニックが負う義務(債務)は、ずばり予約時間に患者を診療することです。ただ、予約時間にお客さんが来ない場合、歯科クリニックがこの債務(義務)を履行することはできません」

遅刻した客をキャンセル扱いしても法的に問題ないのだろうか。

『契約』に基づいて、歯科クリニックが予約時間に診療をするためには、予約時間にお客さんが来ることが不可欠であり、予約時間に遅れてお客さんが来ても意味がありません。

予約時間から合理的時間内に来院しない段階で、お客さんの『歯科医の診療に協力する義務』は、お客さんの責任で履行不能となっていると考えられます。歯科クリニックは、催告することなく、歯科診療契約の解除をすることができるでしょう(民法543条)。

したがって、お客さんが30分遅刻した場合には、キャンセル扱いをしても法的には問題ありません」

今回、客から逆ギレされたようだが、どのように対応するのがいいのだろうか。

「お客さんの遅刻について、歯科クリニックに非がない場合、毅然とした態度で対応するべきでしょう。また、今回のようなクレームを防止するには、予約を受けた際に『遅刻しそうなときには連絡をしてほしいこと』『遅刻した場合には予約はキャンセルされたとみなすことがあること』をあらかじめお客さんに案内しておくとよいでしょう。

一方で、予約ミスなど、遅刻について歯科クリニックに非がある場合には、謝罪したうえで、できる限り早く治療を受けられるよう優先的に扱うなど、誠意ある対応すべきでしょう」

山岸弁護士はこのようにアドバイスしていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

山岸 純
山岸 純(やまぎし じゅん)弁護士 弁護士法人ALG&Associates
企業法務分野で培った知識や経験を活かし、難しい時事ネタや法律論を分かり易く伝えることに日々研鑽に努めている。「いいねを押したい弁護士ブログ」、「ビジネスジャーナル(サイゾー社)」に随時コメント等を掲載中。東京弁護士会公益通報特別委員会副委員長。

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