
理工学部から法科大学院へと進路変更 人の役に立てるという具体的な成果が何よりの励み
大学で学んだこととは違う生き方を選ぶ
ーー理系から法科への進路変更は珍しいですね。
高校時代、弁護士という進路を考えたことはあったのですが、理系が得意だったこともあって理工学部の数学科に進学しました。しかし入ってはみたものの、あまり数学の勉強が面白いと思えなかったんです。
何か他に打ち込めることはないかと考えたときに、選択肢に浮かんだのが、高校時代に一度考えた弁護士資格を取ることでした。司法試験に本気で取り組んでみようと思い、法科大学院に進むことを決心しました。
ーー弁護士のどんなところに魅力を感じたのでしょうか。
直接、困っている人の役に立てることが一番の魅力だと思いました。
法律というのは日常の色々な場面にかかわっていて、例えば交通事故などは、ある日突然誰もが被害者にも加害者にもなる可能性があります。
予期せぬトラブルに遭遇して不安の中にいる人を、解決までサポートできるところに大きなやりがいを感じました。
また、実は私が学生のころ、近しい人が贈賄で逮捕されたことがありました。贈賄に関わった人は複数いたのですが、人によって処分に差があったんです。私から見るとそれはずいぶん不公平に感じられました。
この出来事をきっかけに「法の下の平等ってなんだろう」「本当に、誰もが公平に扱われているのだろうか」と疑問を抱くようになりました。法の下の平等を具体的に実現させる力になれるのではないかと思ったことも、弁護士を目指した理由の1つです。
依頼者それぞれにどう寄り添うかを考える
ーー現在、分野を絞らずに様々な案件を手がけていると伺いました。依頼者と接するときに心がけていることはありますか。
当たり前ですが、どの案件も、まずは依頼者の話を全て聞くことをモットーにしています。
雑談のような直接案件にかかわりのなさそうな話も、とにかく全部聞きます。一見無関係の話をしている中で「そういえば」と、案件に関係がある話を思い出す依頼者も多いからです。
依頼者の話を一通り聞いたうえで、その悩みが法的にはどう解釈されるか、どういう解決策が考えられるか、といったことを説明します。
相談内容によっては家庭の内情などデリケートな話を伺うこともあるので、一にも二にも信頼関係が大事なのは言うまでもありません。
話を聞くということは、私が依頼者のことを知るだけではなく、依頼者に私のことを知ってもらう時間でもあります。相槌の打ち方ひとつ、話を聞いているときの姿勢ひとつで、関係がよくもなれば、悪くもなります。
話しやすい雰囲気を作ることは大事ですが、あまり仲良くなりすぎるのもよくないと思っています。その匙加減は依頼者によって異なるので、一人一人の事情や個性に合わせて、「どういう接し方がこの方にとってベストだろう」と常に考えています。
必ずしも、依頼者の要望を全て受け止めることが正解とは限りません。「この方のためにならない」と判断したときは、要望通りの結果を得ることは難しいと伝えて、違う形での解決を目指してみませんかと提案します。
「もっとできることはないか」と自問自答し続ける
ーー常に依頼者に目を向けているのですね。
依頼者のことを真摯に考えるのは、弁護士として当然のことです。
よく、今まで手掛けてきた事案を振り返るのですが、依頼者から感謝されて終わった事案でも「もっといいやり方があったのではないか」と考えてしまうんです。
どの事案にも全力を尽くしていますが、「もっと何かできたのでは?」と反省点を探してしまい、一生、自分の仕事に満足することはないのではないかと感じます。
手掛けている案件のことは休日でも考え続けているので、よく言われるオンオフの切り替えは下手な方です。でもそれが苦にはならず、むしろやる気につながっています。
今後も、常に依頼者にとってよりよい解決を追求していきます。