松山 秀樹 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
父親が、若い頃、司法試験に挑戦していた時期があり、父のアドバイスもあって、大学受験のときは法学部を選択しました。学生の頃に冤罪事件を扱った岩波新書の「誤った裁判」の勉強会に参加して、大変衝撃を受け、せっかく法学部に在籍しているなら、普通に就職してサラリーマンとして仕事をするより、法曹に挑戦してみたいと考えました。
元々刑事事件、特に冤罪を扱った勉強会に参加し関心を持っていた事もあり、公正中立な立場で刑事事件に関わり、冤罪がないような裁判がしたいと考え、当初は裁判官志望でした。しかし、当事者の生の声に接する機会がなく、仕事の場も裁判所の中が中心ということが自分には合わないと感じました。
司法試験合格後に実務修習を神戸で行い、弁護修習を今在籍している神戸合同法律事務所でしました。そこで、労働者、経済的に困難な人などの事件を懸命に地道に取り組んでいる弁護士の姿を見て、大変感銘を受けて、弁護士志望に変更しました。
今までの経験と現在の仕事内容
一般の民事事件、刑事事件のほかに、過労死などの労災の事件、一般の労働事件、教職員の労働事件、行政訴訟、国賠訴訟などが多く、その関係で、何名かの弁護士で取り組む弁護団事件にもよくかかわっています。
現在は、高齢の生活保護受給者に支給されていた老齢加算廃止処分の取り消しを求めて各地の地裁に提訴した生存権訴訟の神戸地裁での訴訟、保育所廃止処分取消訴訟、戦後の占領下で行われた思想差別事件であるレッド・パージ国賠訴訟、港湾労働者に支給される年金が一方的に減額された港湾年金訴訟、などの弁護団事件に取り組んでいます。
印象に残っている案件(事件)
一つは兵庫県尼崎市を中心とした尼崎公害訴訟です。工場からの排煙や道路の排ガスで被害を受けている多くの住民の人たちが訴訟を起こした事件でした。私が弁護士1年目から参加させて貰った集団訴訟で印象に残っています。
もう一つは兵庫県豊岡市で起こった事件です。円山川という一級河川があります。そこにある水門に子どもさんが転落して重度の後遺症が残ってしまいました。それについて国に損害賠償請求をした事件が印象に残っています。この事件は事務所の先輩の弁護士に誘われて取り組んだ事件でした。
これまでの判決例では、河川が原因になった損害賠償請求はなかなか認められていなかったこともあり、相談にみえたお母さんに「河川の事故の損害賠償請求は難しく、訴訟をしても勝てるとは言えないが、それでもがんばりますか?」という話をした時に「二度とこういう事故を起こさないために、安全策を講じさせるためにもがんばる」と言って裁判を起こされました。
前にも同じ場所で子どもが河川に転落し、重度の後遺症を負った後亡くなる事故がありましたが、当時、河川を管理していた建設省(現国土交通省)は何も安全対策をせずに放置していました。事故が再度起こり、お母さんは、子どもが重度の障害を負って介護などで大変な中、事故再発防止のためにがんばって裁判を起こされました。
このように誰かが声を上げないと安全対策を取らせることができません。大変な状況に置かれている人が声を上げる手助けができてよかったと思います。この事件では一審判決前に和解で賠償金のみならず、国に安全対策をとることを約束させることができ、大変印象に残っています。
弁護士としての信条・ポリシー
どのような紛争でも、相談を受けた弁護士が、法的に解決方法がないとさじを投げてしまえば、救済が図れないことになります。現在の法制度での解決が一見難しそうに見える事件でも、直ぐに駄目だと結論を出さずに、何か解決策がないかを検討することが大事だと思っています。その点で、判例が誤っていることもあるので、判例を絶対視しないことも大事だと思っています。
また、現場のことは現場の人間が一番よく知っているから、すぐに自分の尺度で評価せずに、まずは依頼者の話をよく聞くこと、事実をできるだけ多面的に、かつ、相対化してみること、現場をできるかぎり見ること。
依頼者との接し方では、まずできるだけ本人の話をありのまま聞くように努力しています。弁護士はたくさんの人の話を聞きますし、効率的に話を聞きたいですから、どうしても法律の要件に直接関わらない事実については聞かず、要点だけ聞こうとする傾向があります。
しかし、それだと本人の本当に訴えたいこと、望んでいる解決を理解できないこともあります。もちろんこちらで交通整理はしながら、できるだけ本人に事実をありのままお話ししてもらえるようにしています。
関心のある分野
事件では、労働事件一般、労災事件。また、憲法に係わる問題は弁護士になってからずっと関心をもって活動しています。
2012年12月の総選挙の結果、憲法改正に賛成し、集団的自衛権を容認する議員が衆議院で多数を占めています。自民党が改憲草案を2012年4月に発表したり、他の政党でも改憲案を発表しているところがあります。今特に問題になっているのが憲法96条改正問題です。現在の憲法では国会議員の三分の二が賛成しないと憲法改正の発議ができません。
それを法律と同じように過半数の賛成で改憲の発議ができるように96条を改正しようというものです。これも憲法9条の改憲など議員たちの望む改憲をしやすくするためのもので、自民党が主張している改憲の内容と一体として見なければなりません。
ところで、自民党の改憲草案を見てみると憲法の基本理念である立憲主義を無視して議論しているので、大変問題が多い内容だと思います。改憲草案では人権保障の分野で、今より人権の制限を容易にするための改正内容となっています。
改憲草案では、人権と人権がぶつかり合う時にそれを調整するための必要最小限の制限以上に、公益といった抽象的な理由で人権を制限することを可能としています。また、日本国憲法の前文も全面的に書き換えられ「平和的生存権」は削除されますし、「戦争の放棄」の章は「安全保障」と変えられて、恒久平和主義に立つ憲法9条も全面改定され「国防軍」の保有が認められ、それに伴う大幅な人権制限も危惧されます。
人権保障、恒久平和主義が後退するような憲法改正が行われないように学習会の講師、弁護士会での市民向けの情報提供、意見書の作成などにかかわっていきたいと思っています。