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「画像を他から引っ張って、自分の言葉と合体」 梅宮アンナ流「引用」は許されるか?
インスタグラムは世界中の著名人も数多く利用している人気アプリだ。

「画像を他から引っ張って、自分の言葉と合体」 梅宮アンナ流「引用」は許されるか?

タレントの梅宮アンナさんが7月下旬、画像共有サービス「インスタグラム」に投稿した画像が、物議を醸した。梅宮さんのブログなどによると、別のSNSで画像を見つけた梅宮さんは、メッセージとともに、インスタグラムに投稿したそうだ。

ネットユーザーから無断利用ではないかと批判されると、梅宮さんはブログで、次のように反論した。「自分の写真だけでは表現しきれず素敵な画像を見つけ引用する。。そして、何より伝えたいのは、世の中には、こんな素敵な絵や言葉があるんだよ!って言いたくてね。。。」「画像を他から引っ張って、自分の言葉と合体させて、皆にメッセージを贈る。。これは少し前からの私のやり方。。新しいメッセージ法です」

一方で、画像の元となった絵を描いたと思われる人は、「転載を知らなかった」とツイッターに投稿している。梅宮さんのインスタグラムへの投稿やブログ記事はその後、削除されたが、梅宮さんの主張は、法的に見た場合、どうなのだろうか。著作権にくわしい雪丸真吾弁護士に聞いた。

●「引用」の4つのポイントは?

「著作権法には『公表された著作物は、引用して利用することができる』と書いてあります(同法32条1項)。したがって、もし、画像の利用が著作権法上の『引用』として行われたのであれば、著作権者の許可がなくても、利用はできますね」

雪丸弁護士はこう切り出した。著作権法上の「引用」とはなんだろうか?

「引用は、報道や批評、研究などの目的のために、『一定のルール』に従って、他人の著作物を利用することです」

それでは、著作権法上の「引用」にあたるかどうかの判断基準は?

「見るべきポイントは次の4点です。

(1)利用の目的

(2)利用の方法・態様

(3)利用される著作物の種類や性質

(4)著作権者に及ぼす影響の有無・程度

知財高裁の判決によれば、『他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない』とされています(平成22年10月13日知的財産高等裁判所判決:美術鑑定書事件)」

今回の事例だとどうだろうか?

「この判断基準は、示されてからまだ時間が経過しておらず、各要素を具体的に判断している判例が、まだ十分に積み重なっていないのが現状です。そのため判断が難しいのですが、参考になるように、事案に即して判断してみます」

●利用の目的は?(1)

「まず『利用目的』について見てみましょう。インスタグラムに投稿された梅宮さんのコメントは『心友への想い』を綴ったものですので、この画像はコメントの趣旨に合致したものと一応言えます。

しかしながら、コメントでこの画像に言及しているわけではなく、『この画像を利用する必要性』が高いとは言えません。

梅宮さんがブログに書いた『自分の写真だけでは表現しきれず素敵な画像を見つけ引用する』という発言どおりの利用目的であるとすると、それは他人の作品の魅力に『ただ乗り』するものとも考えられます。保護すべき目的とはあまり言えないでしょう」

●「何」が「どんな風に利用」されたのか?(2)(3)

「今回、利用されたのはカラーイラスト1点で、その全体が使われているようです。もともと、今回のようなイラストの場合、部分的に利用するというよりは、全体を利用するという形になりやすいものではあります。

しかし、出所明示がないのは問題です。引用には、出所を明示することが義務付けられています(同法48条1項1号・3号)」

●著作権者におよぼす「悪影響」は?(4)

「問題のイラストはもともと、絵を描いた人(著作権者)が自身でネット上のpixivというサイトに投稿し、公開したものだったようです。

また、著作権者が、今回の画像について、『個人利用でしたらご自由にどうぞ』とpixiv上で表明している点も考慮されるべきでしょう。

こうした点から考えると、今回の梅宮さんの利用で、著作権者に大きな不利益が生じたとは言えないように思います」

ポイントとなる点をみてきたわけだが、結論としては、どうなるだろうか。

「以上の点を総合考慮すると、引用は『成立しない』と判断される可能性のほうが高そうです。しかし、かなり微妙な事案です。

『著作権者に及ぼす影響の有無・程度』を重視すれば、引用成立を認めるという結論も十分有り得ると思います」

雪丸弁護士はこのように話していた。

裁判所が新しい判断基準を示してから、まだ時間が経っていないこともあって、専門家でも断言できない部分があるようだ。これからの時代の「引用」について、裁判所がどのような判断を下すのか、注目していく必要がありそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

雪丸 真吾
雪丸 真吾(ゆきまる しんご)弁護士 虎ノ門総合法律事務所
著作権法学会員。日本ユニ著作権センター著作権相談員。慶応義塾大学芸術著作権演習I講師。2021年12月、実務でぶつかる著作権の問題に関する書籍『Q&A 引用・転載の実務と著作権法』第5版(中央経済社)を、2018年8月、『コンテンツ別 ウェブサイトの著作権Q&A』(中央経済社)を出版した。

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