中嶋 歩積 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
社会のために貢献できると思ったからです。最初は漠然であり抽象的な思いに過ぎませんでしたが、勉強しているうちに、たとえば刑事事件の場合、世間の人が100人いて、99人が敵であっても1人の味方ができるという意味において、反対論を唱えられるという立場での社会貢献もありうるかなと考えました。
民主主義社会においては、様々な意見や価値観があってそれを代弁する人も社会に必要ですしね。また、独立性が高く自立して社会で生活できると思ったことも理由です。
私は大学院修士課程に進学し、不法行為法などについての研究をしていました。大学院修士課程入学当時は弁護士というよりは大学の教授や研究職に興味があったのですが、ロースクールができることや指導教授の先生のご助言などがきっかけとなり弁護士に興味を持つようになりました。
学生時代
ゼミナールの先生には大変に有難いご指導をいただきました。私が思うに、ゼミナールは、調査能力、文書起案能力、プレゼンテーション能力を付けることを目的とするものであって、私の場合その内容が法律学だったわけです。
実際の弁護士実務も先に述べた三点をもって仕事をするわけで、今振り返って考えれば、その準備をしていたということになるでしょうか。 もっとも、当時は、このような形で仕事をすることになるとは思っていませんでしたが。
大学院の修士課程の講義も、基本的にはゼミナールと同形式で行われますので、同じ訓練をずっと繰り返していることになりますね。
司法修習時代の経験や思い出
行ったことのない九州での修習でした。今まで生活していた環境とは大きく異なる環境でした。私は元々あまり外に行かないタイプだったのですが、知らない場所にいってみる旅行の意義をこの時に初めて感じました。様々な場所で見聞を広めるのはとても楽しいことだと思いました。
今まで旅行などには全く興味がありませんでしたが、旅行をしてたくさんの事物を見聞きしたいと思えるようになりましたし、自分の人格的発展にもつながらないなと痛感しましたね。よい指導担当の諸先生方や同期に恵まれました。
実務修習中は、とにかく南国に慣れるのに精一杯だった記憶があります。
印象に残っている案件(事件)
弁護士になりたての頃に受任したある刑事の否認事件です。捜査段階から公判までを担当しました。当初否認しておりまして、私が諸々調べても、依頼者の言い分が本当に真実であるか分からないし、細かな事実関係については依頼者の言い分も変遷していました。弁護士倫理、職務規定、研修所のテキストなどいろいろ読みましたが、真偽不明の場合、最終的には依頼者の主張を信じるしかないという結論に達しました。
弁護士としては当たり前のことなのかもしれませんが、机上の空論と人の人生がかかっている大事な場面に自分が関与することとはまったく異なりますし、実行するのは大変に難しいことだと痛感しました。また「最善」の弁護活動とは具体的にはどんなものだとうということをずっと考えていました。
国家の刑罰権と国民の自由が対立する最も顕著な場面を体験し、とても印象に残っています。 刑事事件は弁護士の固有の業務ですので、特に社会的意義が高いかなと思いますし、今後もずっと取り組んでいこうと思っています。
弁護士に最も求められると思う力
相対性です。第一に、 世の中の物事に絶対というものはないと思います。しかし、よく考えると、「絶対的なものがない」という命題自体も「絶対」ではないのかという疑問がありますね。矛盾があるかもしれない中でバランスをとってやっていかなければいけないのかなと思います。
第二に、弁護士の仕事は原則として相手方がいます。その相手方との権利義務が問題になるからでしょう。そうすると、相手方の立場を考えて、事件処理をするほうが依頼者にとっても利益になると思います。相手の立場といっても社会はとても複雑で、いろいろな立場の人がいますから、日々自分が研鑽を積んで相手がどんな立場なのかを理解することも重要だと思います。
関心のある分野
現在は、不動産関係、環境法分野、宗教法人に関する理論と実務、です。比較的多く処理しているのは交通事故、債務整理、相続、離婚、債権回収でしょうか。
不動産は、人間と同じで同じものは存在せず、それぞれの個性があります。個性には一般的は良いと評価できるところ、反対に悪いと評価できるところがあると思います。しかしながら、一般的に良いと思われる部分もある人にとっては良いとは評価できない場合もありますし、反対に一般的に悪いと思われる部分がある人にとっては最良となることもあると思います。このような不動産の価値の相対性に興味があります。この不動産の価値の相対性を利用した引取り手の募集ができるならば、空地空家問題対策になるのではないかと思っています。
また、不動産は、登記事項証明書をはじめとして、固定資産評価証明書、公図、建物図面、住宅地図等々様々な書類を使って検討します。しかし、一見書類上では問題が無いように見えても、実際に現場に行ってみると、かなりの段差があり車の出し入れができなそうであるとか、謎の巨大な穴が開いているとか、隣地の空家のブロック塀が今にも倒壊しそうであるとか、どうやって掘ったのか分からない水路のようなものがあるとか、「落とし穴」があることもあります。私はこの「落とし穴」も非常に興味深く思っています。
民法が不動産の物権変動について登記中心主義(例外と解される場合もありますが)を採用していると解されるところですが、登記や書面のみの調査は絶対ではなく、実務的にも「現地見分」も非常に重要であるということだと思っています。
お寺や神社は宗教法人という制度によって会社のように活動することができます。法律にも宗教法人法はありますが、文献もあまり多くありません。宗教法人について宗教上教義等も含めて紛争になることがあります。そのときに宗教上の教義などのいわば聖なる部分と法律問題すなわちいわば俗っぽい部分が交差してるところはどのように考えるべきか難しいですし、興味深くもあります。
「法律上の争訟」の要件についての判例もありますが、この判例において示された法理がどのような場合にどのようにあてはまるのかを考えるのも容易ではないと思います。法律によって紛争を解決することの限界の問題ですね。
今後のビジョン
事務所名にも地名を入れさせていただいておりますし、群馬県の沼田市には裁判所の支部もあるのですが、当事務所を含め法律事務所は二つしかありません。地域の沼田に根付いて法の支配を実現できるような、堅実に仕事ができる弁護士になりたいと思います。