「事を丸く収める」をモットーに、家事調停委員の経験を活かして円満解決を目指す
自身が体験したトラブルをバネに弁護士の道へ
ーー弁護士を目指したきっかけを教えてください。
最初のきっかけは、事業を営んでいた父が詐欺・恐喝の被害を受けたことでした。多額のお金を騙し取られたにもかかわらず、報復行為が家族に及ぶことを恐れた父は、被害届を警察に出さなかったのです。
当時私は高校生だったのですが、父が被害を受けたことも、それを訴えることができなかったのも、法律の知識が足りないからだと思いました。自分や家族を守るためには法律を学ばなければならないと思い、法学部へ進学することを決めました。
その後、大学で法律を学んでいた私は、今度は自分が事件に巻き込まれることになりました。友人らと車に乗っていたところ、別の車から正面衝突される事故に遭ったんです。
幸い怪我の程度は軽かったものの、治療を必要としたため通院をしていました。ところが一週間も通院しないうちに、医師から「もうあなたの治療はしない。二度と来るな、来ても診ないから」と言われたんです。今思えば相手方の保険会社が治療費の支払いを打ち切ったのかもしれません。疑問に思い保険会社に問い合わせたところ「示談が済んでいるのでこれ以上の治療費は払わない」という連絡がきました。
事態が全く飲み込めませんでした。示談をした覚えもなければ、示談書にサインをした記憶もありません。しかも、保険会社に見せてもらった示談書のサインは私の筆跡ではなく、完全に偽造されたものでした。
困惑した私は弁護士に相談しました。しかし、弁護士は20分ほど私の話を聞くと「偽造だとしても示談書がある以上、できることはない。」と相談を締めくくったのです。相談料は5000円支払いました。
助けてくれると期待して相談しただけにひどく打ちのめされました。あんな人に弁護士がつとまるなら私が弁護士になった方がいい、弁護士に救いを求めた人がこんな悲しい思いをしてはいけない。そう考えて、弁護士になる決意をしたんです。
ーー弁護士になる前に民間企業に就職されていますね。
私が大学生の頃は司法試験合格は狭き門であり弁護士も飽和状態であるということだったので、大学卒業後に一旦、東京の企業に就職したんです。就職先でもパワハラやセクハラ、残業代未払いなどのトラブルに遭い、法律の重要性をますます意識するようになりました。
その後、ロースクール制度が導入されたことをきっかけに本格的に司法試験受験に取り組み、弁護士になりました。
ーー注力分野を教えてください。
相続や離婚などの家事事件に注力しています。
家事事件は協議や調停での解決を基本としており、はじめから裁判で争うケースはありません。一般的な裁判は、当事者から提出された書類や資料に基づいて裁判官が判断するため、書類が重要な役割を持ちます。一方、調停は調停委員を交えた話し合いで解決するため、文書では伝わりづらい当事者の感情などにも言及できます。
裁判で勝つための書類を作成することは弁護士としての大事な務めですが、当事者の気持ちに沿った柔軟な解決が可能な調停の方が依頼者の役に立てるのではないかと思い、家事事件に注力しています。
家事事件の知見を広めるため、数年前から家事調停委員も務めています。裁判所側の立場で事件を見ることによって、裁判所がどのように事件を扱い、判断するのかがわかるようになりました。また、家事調停委員は扱う事件数が多いため、様々なケースの家事事件を見ることができ、弁護士の活動に役立っています。
弁護士に対する信頼を守ることが事務所の理念
ーー仕事をする上で心掛けていることはありますか。
弁護士に対する信頼を守ることを事務所の理念としています。私が学生時代に経験した「弁護士に助けてもらえなかった」「期待を打ち砕かれた」という辛さを依頼者に味わってほしくないのです。そのために、依頼者の話をしっかりと聞いて、丁寧に説明するといった誠実な対応を心掛けています。
弁護士によって考え方は異なり、解決方法も変わります。もし、学生時代の私が今の私に相談に来たとしたら、あの時の弁護士とは違った対応ができると思います。
他の弁護士に相談して満足できなかった人がいたとしても、当事務所で納得のいく解決ができれば、弁護士という職務に対する信頼は守れると思います。
私自身、弁護士に対してネガティブな印象を抱いた時期もありました。同じような思いをさせないためにも、困っている人たちの問題にしっかりと向き合いたいと考えています。
ーー離婚や相続など、感情の対立が激しい事件にはどのように対応していますか。
紛争になっているケースで多く見られるのが、コミュニケーション不足による感情のすれ違いです。自分の思いや考えを伝えていない、相手の真意を知らないーー。意思疎通ができていないことにより誤解が生じ、冷静な話し合いが難しいほどに対立が激化しているケースが多いです。
そのようなケースでは、まずは当事者の話を聞くことが大切です。依頼者と相手方双方から話を聞き、互いの中にあるわだかまりや誤解を解いていきます。第三者である弁護士が間に入ることによって、間接的に冷静な話し合いができるのです。依頼者の同意を得て、紛争の相手方からも親身になって話を聞きますので、相手方からも信頼してもらえることが多いです。これが私の強みの一つかなと考えています。
「ことまる法律事務所」という名前には、「事を丸く収める」という意味が込められています。家族間の問題に限らず、事件を円満に解決できるように尽力しています。
ーーこれまでの活動で印象に残っているエピソードを教えてください。
ある会社の火災事故案件が印象に残っています。
依頼者は火災のあった会社の経営者で、警察から放火の疑いをかけられていました。さらに保険会社からは、契約者自身が放火した疑いがあるとの理由で、保険金の支払いを拒否されていました。
依頼を受けた私はまず、警察対応に努めました。警察は既に違法な取り調べを行なっていましたがこれ以上自白を強要する違法な取り調べを行わないように警告し、依頼者には「事実でないことを認めないように」と助言しました。
弁護活動に尽力した甲斐あって、逮捕されることはなかったのですが、警察の捜査終了後も、保険会社は保険金を払おうとはしませんでした。そして自ら用意した科学者の火災鑑定を証拠とし「火災は依頼者の放火によるもの」と主張し続けたのです。
その後、保険会社と民事裁判で争うことになったのですが、保険会社の主張に反論するにはこちらも科学的根拠が必要だと考え、信頼できる科学者を探して鑑定を依頼しました。その結果、保険会社が提出した証拠は捏造されたもので、鑑定報告に虚偽があることがわかりました。
反論された保険会社は、放火の立証をあきらめて和解を求めてきました。その結果、依頼者に保険金が支払われることにはなりましたが、火事があった日から実に5年以上もの月日が流れていました。
長い間苦しんできた依頼者が救われたことには安堵しましたが、世の中には理不尽なことで苦しめられる人がいることを再認識しました。今後も、そのような人たちの役に立てるように尽力したいと思っています。
困っている人の役に立てることが弁護士を続ける理由
ーー趣味や休日の過ごし方を教えてください。
趣味はキャンプです。2016年の熊本大震災の後、避難用装備としてテントを購入したんです。震災後しばらくは使うことがなかったのですが、この先、同じような災害があった時に困らないようにと、災害対策の一環としてキャンプをするようになりました。
冬の雪山などでキャンプをすると、普段の生活のありがたみを感じます。スイッチ一つで明かりが灯り、水道からはいくらでも水が出て、火をつけるのに苦労しない。災害に遭うと、そうした日常が一瞬で奪われてしまいます。ライフラインを失った時にどのように生きていくかということを、キャンプを通じて学んでいます。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
独立して事務所を立ち上げた当初は、経営者として売上を安定させることに力を入れていたのですが、お金があっても幸せを感じられないことに気づきました。もちろん、事務所を運営するためにお金は必要ですが、弁護士としてやりがいを感じるのは、やはり困っている人の役に立った時です。
依頼者のために何ができるのかを考え行動し、無事に解決できた時に感謝の言葉をかけてもらえる。それこそが、弁護士を続ける理由だと実感しています。今後も、目の前の事件一つ一つに、一生懸命取り組んでいきたいと思います。
また、社会全体の役に立つ活動も行いたいと考えています。例えば、金銭的な余裕がない方や弁護士に相談することを思いつかない方が弁護士にアクセスしやすい仕組み作り、女性弁護士のネットワークを作ってシングルマザーや働く女性を支援する仕組みを作るなど、社会貢献活動にも力を入れていきたいです。
ーー最後に、法律トラブルを抱えている方に向けてメッセージをお願いします。
弁護士に相談して納得のいく回答をしてもらえなかったり、相性が合わないと感じたら、迷わず他の弁護士に相談してください。同じ事件でも、弁護士によって考え方や解決方法は変わりますし、弁護士費用も異なります。セカンドオピニオンは決して悪いことではありません。
私は、交通事故に遭った時、複数の弁護士に相談しても良いことを知らなかったために理不尽な思いをしました。
困ったことがあったらすぐに弁護士に相談する。相談して納得がいかなければ他の弁護士に相談する。そうすれば、きっと親身になって問題解決に取り組んでくれる弁護士が見つかるはずです。