
「不利なことも話してもらった上で最善の選択肢を提案」本音のコミュニケーションが信条
自分で仕事を完結させたい
――弁護士を目指した理由を教えてください。
もともと人の話を聞くのが好きだったので、人と関わる仕事がしたいと思っていました。大学は商学部で、周りは銀行などに就職する人が多く、当初は私も就職活動をしていました。
ただ、就職活動をするうちに、どうせ働くなら、最初から最後まで自分が関わって完結できる仕事がしたいと思うようになりました。大きい組織に属すると難しいかもしれないけれど、資格を取って独立すればそういう働き方ができるのではないかと考え、資格取得に興味を持ちました。
資格試験の中でも、司法試験が特に難しいことは知っていたので、挑戦しがいがあるなと思いました。弁護士になれば人と密に関わる仕事ができるところにも惹かれて、ロースクールに進学し、本格的に司法試験の勉強を始めました。
――独立に至るまでの経緯を教えてください。
司法試験に合格してから就職活動を始めたのですが、なかなかうまくいきませんでした。自分自身で仕事を完結させたいという思いも強かったので、即独立することにしました。サポートしてくださる先輩方にも恵まれて、今に至ります。
――事務所がある同じフロアに、司法書士や行政書士、税理士の先生もいらっしゃいます。
はい。離婚や相続、登記業務など、他士業のサポートが必要な分野を手がけることも多く、協力して案件を進めていけるのでありがたい環境だと思っています。
「こんなに話を聞いてもらえると思わなかった」
――先生のところに相談に来る方は、何をきっかけにいらっしゃるんですか?
ベテランの弁護士がたくさんいる中、ベテランではない私を選んでくださる方は、「こんなことを相談したら怒られるのではないか」など弁護士に対して敷居の高さを感じている方が多いようです。
特に初めて弁護士事務所にいらっしゃる方は、すごく緊張している方がほとんどです。少しでも「話しやすそう」と思えたから、私の事務所に来てくれているのかなと思います。相談者と接するときには、まずは雑談をして、「弁護士も普通の人ですよ」とわかってもらうことから始めています。
――依頼者からはどんな印象だと言われますか?
「こんなに話を聞いてもらえると思いませんでした」とよく言われます。
相談に来ていただいたら、とことん話を聞くようにしています。30分の相談時間であれば、25分は話を聞き、残り5分で「問題を解決するには、こういう方法があります」「こんな手続きをしてはどうでしょうか?」と提案する形で進めています。弁護士が一方的に話して時間が過ぎてしまった、ということにはならないように気をつけています。
――依頼者の話を聞くときに意識していることはありますか?
相談に来る方は感情的になっていることが多いです。客観的な事実と感情的な部分を整理しながら話を聞き、事実の方に重きを置いて質問するようにしています。
また、あらかじめ「できないことはできないと言いますからね」と伝えておきます。
依頼者の中には「弁護士に依頼したら何でもこちらの言い分が通る」と思っている方もいます。法律に基づいて手続きを進めるので、弁護士でもできることとできないことがあります。実現できないことを依頼者が望んでいる場合は、早めに「それはできません」と言います。正直に話すことで、依頼者は、「この弁護士は腹を割って話してくれている」と安心すると思います。
お互い腹を割って話さないと、依頼者は自分にとって不都合なことをなかなか語ってくれません。不利なことも言ってもらった上で、依頼者に最善の選択肢を提案するのが弁護士の仕事です。都合のいいことばかり聞いて戦略を練っても、途中で辻褄が合わなくなり、うまくいかない場合があります。言いにくいことでも打ち明けてもらえるよう、依頼者とは本音でコミュニケーションをとることを心がけています。
依頼者の喜びが心の支え
――弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
全ての事件が印象に残っていますが、特に覚えているのは、ある労働事件です。
依頼者は急に解雇をされてしまった方で、「家族もいるのに、これからどうすればいいのですか」と相談にいらっしゃいました。すぐに労働審判を申し立て、2〜3か月ほどで解雇を撤回してもらえました。裁判になっていたら解決までに1〜2年かかってもおかしくない案件だったので、早期解決ができ、依頼者にはとても喜んでもらえました。
――依頼者の方の喜びが先生の喜びにもつながっているんですね。
そうですね。弁護士の仕事はきついことも多いです。依頼者が喜んでくれることが、仕事の辛さを乗り越える力になっています。
――先生のプライベートについても伺っていきます。お休みの日はどんなことをされていますか?
1歳半の子どもと遊んでいます。最近は家庭菜園も始めました。休みの日も事件のことを考えてしまうことがあるので、子どもと遊んだり、土いじりをしたりすることで、強制的に頭の中を空っぽにして仕事から離れるようにしています。
――今後の展望を教えてください。
一件一件の事件を、これまで以上に丁寧に手がけたいです。弁護士経験が長くなればなるほど同じような事件や似た争点が出てきますが、なんとなく、で事件を終わらせたくないと思っています。初心を忘れずに、最後まで丁寧に事件と向き合っていきたいです。
――法律トラブルを抱えて悩んでいる方にメッセージをお願いします。
色々な悩みを抱えている方がいらっしゃると思います。まずは、些細なことでもいいので相談に来てもらえれば、色々なアドバイスができます。「とりあえず相談だけ」という気持ちで大丈夫です。ぜひお気軽にいらしてください。