塾講師から弁護士へ転身|誰もが公平な評価を受け、自分を責めずにいられる社会を目指して
塾講師から弁護士の道へ
――これまでの経歴について教えていただけますか?
2008年に中央大学法学部政治学科を卒業してから、ずっと塾講師をしていました。その後、法科大学院(ロースクール)に進学し、2019年1月に弁護士として福岡市内の法律事務所に就職しました。そして2023年1月から、現在所属している原綜合法律事務所で勤務しています。
――塾講師から弁護士になられたのは、どういった理由やきっかけがあったのでしょうか?
塾講師になって7年ほど経った頃、たまたま「離婚弁護士」というドラマの再放送を見て、弁護士に興味を持ちました。ドラマの中で、天海祐希さん演じる間宮弁護士がすごく楽しそうに仕事をしていたことと、間宮弁護士の一言で依頼者が元気を取り戻していく様子が印象的だったんです。
塾講師も十分にやりがいを感じていましたが、その一方で私も誰かの人生に重大な岐路に部分で直接的に役に立てる感覚を味わいたいと思うようになりました。
――塾講師として働いていた中で、弁護士を目指すのはすごく勇気のいる決断だったのではないでしょうか?
当然、迷いはありましたが、ひとまず行動を起こそうと思って、インターネットで法科大学院受験の願書を取り寄せました。いざ願書が届くとその気になってきて、当時教えていた生徒たちに「弁護士を目指す」という話をしてしまったんですね。結果、あっという間に情報が広まって、どの生徒からも「先生、いつ弁護士になるの?」と聞かれるような状況になってしまったんです。
それでもはや後に引けなくなって、やむを得ず法科大学院の受験準備をしたという感じです。ラッキーなことに複数の学校から合格通知をもらい、そのうちの1校に進学しました。
――法科大学院に進学するまで、法律の勉強をしたことはあったのでしょうか?
大学は法学部でしたが、政治学科だったので法律はほとんど勉強したことがありませんでした。法科大学院には法律を学んだことがない人向けのコースもあるんです。私はそちらに進んで、一から勉強しました。
弁護士になるには法科大学院を卒業した後に司法試験を受けて合格する必要があります。合格できるか不安でしたし、「弁護士を目指す道を選んで良かったのだろうか」と後悔したこともありました。
――後悔もある中で、どういったモチベーションで勉強をされていましたか?
格好良いモチベーションなんてなかったですね。もう後戻りできませんし、合格できないと親にも申し訳ないので、とにかく勉強するしかないという感じでした。
ちなみに当事務所の代表である原隆弁護士とは、法科大学院時代に出会いました。既修者コースの原弁護士からは、勉強で分からないところをよく教えてもらっていました。ときに発泡酒と缶詰でグチを言い合ったこともあります。今ではいい思い出です。
塾講師として磨いたスキルが弁護士の仕事にも生きています
――実際弁護士になってみて、描いていたイメージ通りでしたか?
ちがいました。特にちがったのは、こんなにデスクワークが多いんだということですね。ドラマだと法廷で華麗に闘ったり真犯人探しに走り回るようなシーンがよく出てきますが、現実は裁判所に提出する書類を作ったり、調べ物をしたりといったデスクワークが本当に多いんです。
塾講師時代は生徒の前で授業する時間が多く、その時間が大好きだったので、「楽しい」という意味では塾講師の方に軍配が上がるかもしれません。
しかし、弁護士は人生の岐路に立たされた方からのご依頼が多く、感謝される際の熱量が高いんです。だから、大変なことも多いですが、やりがいは強く感じています。
――塾講師の経験が弁護士の仕事に活きていると感じることはありますか?
依頼者からは、「説明が上手ですね」と言われます。たしかに塾講師時代は、生徒にわかりやすく説明することを意識していたので、それが活きているのではないでしょうか。法律は難しい話も多いので、例え話を使って説明したりして、どうすれば相手に伝わりやすいかを常に意識しています。
――先生が注力されているのは、どういった分野でしょうか?
私は「街弁」といって、個人の方の身近な法律トラブルを扱う弁護士として仕事をしています。離婚・相続・交通事故・借金問題・刑事弁護など幅広く対応していますが、その中でも、刑事弁護には特に力を入れています。
――刑事弁護のやりがいはどういったところでしょうか?
世の中には、加害者がすべて悪いという風潮もあるかなと思います。ただ、直接加害者と話してみて、犯罪に至った経緯などを知る中で、メディアなどには出てこない、加害者なりの想いや、事件に至るまでの複雑な背景などが見えてきます。
もちろん犯した罪はつぐなう必要があります。でも「10」悪いことをしても「12」の罰を受けることはないはずです。しかし「2」の分だけ余計だとは、なかなか本人では声を大きく主張できないんですね。それを代わりに主張できるのが弁護士なので、刑事弁護には大きなやりがいを感じます。
――他に注力されている分野はありますか?
医療過誤の患者側からの依頼にも力を入れています。医療過誤は、弁護士が扱う分野の中でも専門性が高いので、扱っている弁護士は多くありません。
病院側と患者側を比べると、病院側のほうが圧倒的に強者なんです。そこで弁護士が介入してカルテなどの資料を手に入れ、専門的な分析を行って、ようやく相手と闘えるだけの最低限の土俵づくりが整うというイメージです。
医療過誤の損害賠償請求が認められるハードルは高いですが、辛い状況に置かれた依頼者の気持ちに寄り添い、最善の解決を得られるように尽力しています。
医療のお仕事は、人の命を取り扱う業界であり、尊く、必要不可欠な業界です。こうした医療機関に対するクレームは、ともすると誹謗中傷や言いがかりと評価されてしまうことがよくあります。その意味で声を大きく主張しにくいところがあります。それを代わりに主張してあげたいという思いがあります。この点は刑事弁護や債務整理に対する思いに通じるところがあるかもしれません。
誰もが正当に評価されるように、弁護士として手助けしたい
――仕事をする上で、どういったことを大切にされていますか?
大切にしている、というわけではないのですが、『進撃の巨人』(諌山創/講談社)という漫画の中で、「自分なんかいらないなんて言って 泣いてる人がいたら… そんなことないよって 伝えに行きたい」というセリフが登場するんです。その言葉がすごく印象的で、弁護士として結局何がしたいのかと考えたとき、いつもこの言葉に行き着きます。
結局のところ、私は目の前の依頼者さんに対して、「そんなことないよ」と言いたいだけなのかもしれません。ただこれは割と、上から目線な言葉といえます。ですから、そのくらいの言葉が堂々といえるくらいお仕事には取り組まないと、とは思っています。
――どういったところに共感されますか?
たとえば、裏ではひどいことをしているのに、なぜか周囲から評価されている人っていますよね。反対に、すごく頑張っているのに周囲から評価されなかったり、必要以上に自分を責めたり、努力が報われない人もいます。
もともと私は、評価されるべき人がちゃんと評価される社会が理想的だと思っていました。過剰に評価されている人は、あるべき評価に戻し、反対に、正当に評価されていない人は正しい評価がされる場所にいくお手伝いをして、「そんなに自分を責めなくていいよ」と言いたい。そういう想いを抱いている中で、先ほどの「進撃の巨人」のセリフを読んで「自分がしたいのはこれだ!」と思いました。
――プライベートについても伺います。休日はどのように過ごされていますか?
子どもが小さいので、家族で出かけることが多いですね。あとは、健康維持も兼ねて定期的にマラソンに参加するようにしています。
次の人生に切り替えるお手伝いをします
――最後に、トラブルを抱えて悩んでいる方に向けてメッセージをお願いします。
人間誰もが、程度の差はあっても、何かしら後ろめたいことや隠したいことがあるのではないかと思うんです。そしてそれが明るみに出てしまって、何かしらトラブルになることもあります。
そのときに、必要以上に自分を責めたり悲観したりしないで欲しいと思います。反省すべきことは反省して、つぐなうべきことはつぐなって、けじめをつけて次の人生に切り替える。そのお手伝いができれば良いなと思っています。
何かお困り事がありましたら、「こんなこと相談して良いんだろうか」と思わず、お気軽にご相談ください。