外国人が直面するトラブルに立ち向かい、日本での生活の支えとなる
JICAでのアルバイトが刺激となり、外国人問題に関心を抱く
ーー弁護士を目指したきっかけや理由についてお聞かせください。
大学で初めて法律学に触れて、社会は様々な法律によって成り立っていることを知りました。権利を制限する法律もあれば、権利を守る法律もあり、人々の行動が法律で規律されていることに気付きました。
法律学のおもしろさに目覚めて、せっかく勉強するなら司法試験を受けてみようと思い、大学1年生の終わり頃から受験勉強を始めました。
ーーどんな学生生活でしたか?
大学1年生のとき、ESSという、英語でスピーチや演劇、ディベートをするサークルに所属していました。私はディベートを中心に活動し、「校則の是非」や「制服の必要性」など様々なテーマについて他校と英語で議論を交わしました。
JICA(編注:独立行政法人国際協力機構の略。開発途上国に対する国際協力をおこなう)の研修施設の食堂でアルバイトもしていました。南米やアジアからの研修生と英語で交流したことが刺激になり、外国人と関わる仕事に携わりたいと思うようになりました。
依頼者の話を聞くことを重視する
ーーどのような分野の相談を扱っていますか。
一般民事事件や債務整理、相続事件、労働事件、離婚事件等様々な事件を手がけています。特に力を入れているのは、日本で暮らす外国人が直面するトラブルの解決です。具体的には、在留資格の問題や家事事件、労働問題などです。
日本において外国人は、刑事事件の被疑者・被告人に匹敵するくらい、言語の壁や差別・偏見などから、権利を主張しにくい立場にあります。弁護士の仕事は、そのような方に寄り添い、権利を擁護することだと思います。外国人の権利がきちんと守られ、同じ市民の一員として安心して生活できる社会をつくりたいと思い、注力しています。
外国人問題を手がける中で、様々な国の文化や歴史に触れてきました。朝鮮人学校の高校無償化の裁判に携わったときには、朝鮮人学校を訪れ、生徒やその親たちと交流しました。ニュースではあまり報道されないのでイメージが湧きにくいかもしれませんが、自分達の民族のルーツや言語などを教えているということ以外は、ごく普通の学校です。日本人が通う学校と同じように部活や修学旅行もあり、生徒は青春を謳歌しています。
ーー外国人問題について、どのような課題があると思いますか。
そもそも、日本では外国人の人権を擁護するという意識が薄いと思います。法制度の面でも、外国人に対する保障は十分とはいえません。
課題解決のためには、外国人への差別などの実態を知ることが必要だと思います。そして、おかしいと思ったら、ぜひアクションを起こしてほしいです。差別解消に取り組んでいる団体の活動に賛同したりすることで、少しずつ社会を変えられると思います。
ーー仕事で心がけていることを教えてください。
依頼者の話をきちんと聞き、事実を正確に把握した上で、法的な主張や理論を組み立てることです。話を十分に聞かないまま、法的な理屈ばかりを重視して結論を先読みしたりしないよう気をつけています。
依頼者は、悩んでいることを全て打ち明けてくれるとは限りません。言いにくそうにしていることはないか、気持ちを汲みながら注意深くコミュニケーションを取ります。時間をかけて信頼関係を築き、できるだけ細かく話を引き出せるように心がけています。
依頼者が外国人の場合は、文化の違いも意識します。日本で当たり前のことが外国ではそうでないことがありますし、何が適法・違法なのかも国ごとに考えが異なります。何事も決めつけず、それぞれの依頼者がどのような問題を抱えているのか、話をよく聞くことを重視しています。
ーー弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
弁護士になりたての頃から取り組んできた、諫早(いさはや)干拓事業をめぐる裁判です。
1997年に、諫早湾の埋め立て事業の一環で潮受堤防が締め切られ、魚がとれなくなるなどの被害が生じました。これを受けて、2002年、漁業者が潮受堤防の排水門の開門等を求めて佐賀地裁に提訴しました。一連の訴訟で、2008年に佐賀地裁が、2010年に福岡高裁が漁業者の訴えを認め、国に対して堤防の開門を命じる判決を下しました。
漁業者側の弁護団として、数えきれないくらいの弁護団会議を重ね、現地に足を運び、闘ってきたので、勝訴した瞬間は涙が出るほど嬉しかったです。判決のとき傍聴していた人々から拍手が沸き起こったこと、勝利を祝って漁業者と一緒に有明海のガザミ(カニ)やタイラギ等の海の幸を堪能したことは一生忘れられません。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
外国人問題には引き続き取り組み、よい成果を得られるよう頑張りたいと思います。
他の分野では、コロナ禍になって労働問題の相談が増えたので、会社と比べて立場が弱い、労働者の支えになりたいと思っています。
相続分野にも注力していきたいです。相続法の改正によって、遺産の「使い込み」に対する対策が強化されたり、遺言書の作成が容易になったり、他方、遺留分についての規律も変更されるなどしました。声の大きい相続人だけが得をするのではなく、公平な遺産分割ができるよう、弁護士として力になりたいと思います。
ーー法律トラブルを抱えて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
悩みを抱えている方は、弁護士などの第三者に相談することで自分の問題を客観視できると思います。相談することで心理的な負担も解消できます。
相談していただければ解決に向けて精一杯対応いたしますので、気軽にご相談ください。