「相談に来るハードルを少しでも下げたい」足を運びやすい事務所を実現、依頼者の味方になって解決まで並走
中学で弁護士を志し、大学院までゆっくり気持ちを育てる
ーー弁護士を志したのはいつ頃でしょうか。
中学生の頃です。小学生の頃から推理小説を読むのが好きで、新聞を読む習慣もあり、弁護士という職業の存在は知っていました。中学で「将来なりたい職業を考えましょう」という授業があったんですね。そのとき弁護士について調べて、「困っている人を助けられる仕事だし、一生続けられる仕事だ」と思って、初めてしっかり意識しました。
大学受験のときには、弁護士になることを意識して学部を選びましたね。勉強のスタート自体は遅いほうだったんですけれども、職業としてはずっと頭にありました。
ーー大学時代はどんな過ごし方をされていましたか。
社会問題を研究するサークルに入っていました。関西の大学だったこともあり、国道43号線の公害問題について調べていましたね。実際に困っている人の話を聞きに行ったり、公害問題を支援する弁護士に話を聞きに行ったりしました。この時期に、弁護士を目指す気持ちがだんだん高まってきたのだと思います。
サークル活動をしながら、大学や大学院では、恩師である松宮孝明教授をはじめ、多くの教授から学びました。判例との付き合い方や、法律家としてどう理屈を作って裁判官を説得していくのか…といった、基本的なことを勉強できました。
かつて抱いた「生きづらさ」が今、役立っている
ーー注力されている分野を教えてください。
離婚事件です。私自身、女性として学生時代に色々と生きづらさを感じていた身で、社会学者の上野千鶴子さんの書籍も愛読していました。家族というのは「ひとつの小さな社会」だと私は思っているので、知らず知らずのうちに困難な状況に追い込まれてしまった人たちの手助けができれば、と思って離婚事件に注力しています。
とは言え、もちろん男性の依頼者も拒否しているわけではありません。
子どもがいらっしゃる依頼者が多いので、最終的に、子どもを通じてお父さん・お母さんが少しでもいいコミュニケーションを取れるようになるお手伝いができたらいいなと思っています。
ーーどういう風に生きづらさを感じてきたのでしょう?
今はだいぶ緩和されていると思うんですけど、私が学生の頃は、結婚したら会社は辞めるのが当たり前な時代でした。再就職しても不安定な働き方になることが少なくなく、能力があってもなかなか高収入の仕事に就けない人が多かったんです。結婚や出産など、要所要所で年齢の壁を感じたのは私だけではないと思います。
また、家庭内に目を向けても、夫から「俺が食わせてやってるんだ」といったことを言われ、家庭の中で虐げられている女性が多かった…といったことも、生きづらさを感じる一因だったと思います。
今でも、DVに関する相談は多いです。社会の意識が進んだので、昔ほどの苛烈なDVは少なくなった印象ですが、それでも経済的DVや精神的DVまで含めるとまだまだ多いなと感じています。
見えやすい暴力の場合は、もちろん命の危険はありますが、一方で、警察が介入しやすいメリットがあります。しかし、見えにくい暴力になってしまうとなかなか警察が介入できません。そういった意味でも、早めにご相談に来ていただくのが本当に大事だと感じる機会が増えたと思います。
「依頼者が足を運びやすい事務所」を意識
ーーホームページには「ご要望があれば、赤ちゃんのミルクに使えるお湯を提供できます」という記載がありました。幼い子どもを育てられている方も、結構いらっしゃるのでしょうか?
はい。小さな子どもを育てている方が外出するのってすごくハードルが高いので、少しでもハードルを下げられたらな…という気持ちで書きました。
ーー事務所という意味では、「ざっしょのくま法律相談所」はマンションの一室で、外観からは法律事務所とわからないのも依頼者には嬉しいポイントですよね。
これも依頼者への配慮のひとつなんです。「もし誰かに、法律事務所に入って行くのを見られたら…」って不安に感じる人は多いと思うんですよ。なので、ひっそり来て、ひっそり帰れるっていうのはメリットじゃないかなと。
現実的なお話をすると、依頼者の中には配偶者にGPSをつけられている人もいます。そういう方がもし法律事務所を訪れると、Googleマップなどでわかってしまう可能性があるんです。その点、うちの事務所があるマンションは普通の住居のほうが多いので、「友達の家に遊びに行っていた」と言えるんですよね。
「1時間の相談で表情が変わる人もいる」
ーー弁護士としてやり甲斐を感じる瞬間は?
熾烈なDVを受けていた方とたくさんお話をするうちに、自信を取り戻して、元気になっていくところに立ち会えたときは、「やっててよかったな」と感じますね。
DVを受けている方って、自分に自信がない方が本当に多いんですけど、昔からずっとそうだったわけじゃないんです。たとえば、メールアドレスを拝見すると「きっとこの人はもともと明るい人なんだろう」って思えるような付け方だったり、「以前はもっとチャレンジングな性格だったんだろうな」って思える昔話をされたり。熾烈なDVが、その人を変えてしまったんです。
ーー今見えている姿だけが、その人の姿じゃないんですね。
そうなんです。1時間の相談で表情が変わる方もいらっしゃれば、様々なアドバイスを踏まえて、色んな選択をする中でだんだん自信を取り戻していく方もいらっしゃいます。
相談のなかでは、とにかく色々な話を聞こうと心がけています。ある程度自由に話してもらうのですが、その中でも「何に一番、重きを置いてますか?」と伺って、思考を整理してもらうようにしています。
また、初回はご両親を伴われて来られる方が多いんですけれど、事前に了解を取ったうえで、途中退席をお願いすることもあります。「たぶんこの人、お父さんお母さんが近くにいたら、本音を話さないだろうな」と見極めて、ご両親に退席していただいてから「あなたはどうしたいですか?」と尋ねるんです。
親の手前、本心と違うことを言ってしまう方はけっこう多いです。人間は社会的な動物なので、その人だけで全部意思決定しているわけではありません。環境など色んな条件が複雑に絡まって、意思決定しているんだと思っています。
ーー周囲に影響を受けている場合があると。
はい。だからこそ、環境を変えたり、優先順位をはっきりさせていくことで、口で言っていることとは違う、本当の気持ちが見えてくることがあるんです。
相手もある話で、制約もあって、裁判の判例もあって…という風に、全部理解してもらったうえで、その人がどうしたいかを聞くんです。その方が表面上希望されていることに寄り添えば、相談者ウケはいいかもしれませんが、絶対にうまくいかない。本当の意味での解決には導けないんです。
もちろん、私も人間なので、ひどいケースでは一緒に怒ることもあります。ただそれに引きずられすぎると、着地点を見失いかねないので、ゴールは常に見据えるようにしています。
趣味の海外ドラマ鑑賞も「実益を兼ねて」 一貫する「人への興味」
ーー休日の過ごし方や趣味は?
ヨガや海外ドラマ鑑賞、あとは気になることを検索して過ごしています。手がけている事件のことを調べるときもあります。わからないことがわかるようになるのが楽しくて、この仕事をしているところもあるので。
海外ドラマ鑑賞は趣味と実益を兼ねていて、推理モノを見るのが好きです。「事実認定」や「デジタル分野での改ざん」といったテーマについて学べますし、字幕版で見るので英語の勉強にもなっています。『NCIS 〜ネイビー犯罪捜査班』や『SHERLOCK』、あとは推理モノではないですが『SUITS』も好きです。
ーー楽しみながら色んなことに向き合っているんですね。
私たぶん、人より好奇心が強いんですよ。だから仕事でも、「せっかくそこに人がいるんだから、その人にフォーカスして、話を一生懸命聞こう」と思うし、語弊を恐れずに言うと、どんな案件でも「なるべく楽しみながらやろう」という気持ちなんです。
ーー少し話が戻りますが、離婚の話をしたときに、当事者夫婦だけでなく子どもや両親についても話されましたよね。先生は「人」に対して強い興味を抱いているからこそ、その周囲のことまでも自然に見えてくるのかな、と感じました。
ありがとうございます(照)。でも、たしかに人への興味は強いほうだと思います。相談を受けるときも、話を聞きながら「そうなんだ」とか「本当はどうなんだろう?」って思っていますから。
ーーでは話を戻して、今後の展望を教えてください。
今、雑餉隈(ざっしょのくま)というエリアに事務所を構えていますが、このあたりはまだまだ法律事務所が少ないので、地域の方に頼っていただきたいと思っています。実際、色んな事件が来ていて、なるべく断らないでお受けしています。他の弁護士が断った事件であっても、「難しいよ」と説明をして、ご了承いただいたうえでなら受けることもできますので。様々な案件を手がけて、経験や知識を磨いていきたいです。
弁護士を目指したきっかけが「困ってる人を助けたいな」という気持ちだったので、今後も依頼者に伴走していきたいですね。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
ひとりで悩むのは本当に辛いことだと思います。でも、悩みを弁護士に話すことによって、心が少しでも軽くなると思います。弁護士は法律知識も経験もありますので、身の周りの人たちに相談しているだけではわからない解決方法を提案できると思います。まず相談だけでも、早めにお越しいただいて、一緒に解決を目指しましょう。
敷居が高いと言われがちな弁護士事務所ですが、幸い、うちに来ていただいた方はみなさん、「思っていたのと全然違った」とおっしゃるんです。普通のマンションに行って、普通の人と会話した…そんな感じですので、ぜひ気軽にお越しください。