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成人年齢の引き下げに識者懸念「消費者被害への対策が不足」「悪質業者に狙われる」
坂東教授

成人年齢の引き下げに識者懸念「消費者被害への対策が不足」「悪質業者に狙われる」

成人年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法改正案」が国会で審議入りした。特に懸念されているのが、消費者被害の増加だ。

現在、20歳未満による契約は、保護者などの同意がない場合、取り消しが可能とされている(民法5条:未成年者取消権)。しかし、成人年齢が下がると、18〜19歳が親の同意なくローンなどの契約を結べるようになる一方で、取消権を使えなくなることから、悪質業者に狙われるのではないか、といった不安が広がっている。

4月26日、都内で開かれた日弁連主催のシンポジウムで、消費者問題にくわしい京都産業大学の坂東俊矢教授は、「高校を出て、初めて社会に、色々な契約に向かい合うときに、一定の親の関与を残しておくことが重要ではないのか」と引き下げに反対の意見を述べた。

●18歳からの2年間の経験や学びが

成人年齢をめぐっては、2009年に法務大臣の諮問機関である法制審議会が「引き下げが適当」と答申している。ただし、消費者被害の拡大を防ぐ施策などが必要としていた。坂東教授は、その環境は未だに整っていないと指摘する。

「今、悪質業者は、『あなたもハタチで大人になったんだから、他人に相談しないで、今ここで判断しなさい』という常套句で契約を迫っている。

しかし、『大人になる』ことの一番大切なポイントは、自分だけでは判断できない契約に向き合ったときに、相談できる場や人を持っているということです。今まで、18、19歳の人はその役割を親が果たしていました。その親の関与を外して良い程度まで環境が整備されているとは言えない」

18歳のときに親と一緒に下宿を決めた学生が、20歳になって自分の判断で新しい下宿に変わる――。教え子たちの姿を見て、その2年間の経験や学びの重要性を感じると、坂東教授は語る。言い換えれば、18歳までに契約や取引を学ぶ機会が不足しているということでもある。

「若者の社会参加を促すことが重要なことはもちろんです。でも、取引の場面に関しては、社会としての、制度としての準備がとても重要になると思います」

●「改正案では手当てが足りない」と指摘

このほか、会場からは改正案の不備を指摘する声があがった。

消費者トラブルへの対策として、政府は消費者契約法を改正し、不安をあおる商法やデート商法については、取り消せるようにするなどの対策を盛り込む予定だ。

しかし、平澤慎一弁護士は、「若者を狙う消費者被害の大半は対象に入っていない。もっと広い判断力や知識力不足につけこむタイプについても取り消せるようにしないと、未成年者取消権がなくなることへの手当てにならない」と述べた。

このほか、消費者団体からは改正案が成立すれば、2022年4月の施行予定のため「消費者教育が間に合わないのではないか」といった懸念もあがっていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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