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うどんを注文したのに「そば」が出てきた! 「完食」しつつ代金を払わないのはアリ?
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うどんを注文したのに「そば」が出てきた! 「完食」しつつ代金を払わないのはアリ?

昼どきの定食屋で、料理を注文してから長時間、待たされたあげく、オーダーと異なるものが提供されたら、腹を立てる人が多いのではないか。先日、東京・奥多摩の行楽地の定食屋で、そんな目にあったリエ子さん(30代)は、立腹したあまり「お支払いしません」と店側に通告したそうだ。

ある休日に奥多摩をドライブしていたリエ子さんの一家は、正午ごろ、山道沿いの定食屋に入店した。4人がけのテーブルが20席ほど並ぶ広い店だったが、行楽客らしき人々で満席になったという。それだけの客に対して、オーダーと配膳をする店員は1人しかいなかった。

そんな混み合う様子をみて、リエ子さんは、時間がかからなさそうな「たぬきうどん」を注文した。ところが、うどんはなかなか運ばれてこない。「他のテーブルも同じような状況で、店内は殺気だっていました。何度か、店員を催促したところ、オーダーから45分後、ようやく運ばれてきました」。

しかし、器の中をのぞいて、のけぞった。「たぬきうどん」ではなく「たぬきそば」だったからだ。

「待たされていた45分間、頭の中は、うどんのことで一杯でした。それなのに、そばなんて・・・。あまりにショックでしたが、作り直しをお願いして、さらに45分なんて待てません。結局、店員にミスを指摘したうえで、『私、お支払いはしませんから』と宣言し、完食しました」

食事後の会計のとき、店側も、リエ子さんの「そば」の代金をとらないことに同意した。ただ、店を出た後、リエ子さんは夫から「さすがに、金を払わないのはおかしいんじゃないか」と指摘を受けたそうだ。

45分も待たせたうえで、「うどん」ではなく「そば」が運ばれてきたのはショックだっただろう。しかし、リエ子さんは完食している。リエ子さんがお金を支払わなかったことに、法的な問題はないのだろうか。前島申長弁護士に聞いた。

●契約どおりの商品を提供しないのは「債務不履行」

「リエ子さんが、定食屋においてたぬきうどんを注文する行為は、たぬきうどん1杯の購入の『申込み』であり、店員が注文を受けた行為は、その『承諾』にあたります。

この時点で、定食屋に、たぬきうどん一杯の『財産移転義務』が発生し、リエ子さんには『代金支払義務』が発生することになります」

前島弁護士は、このように「うどんの注文」をめぐる法的な構造を説明する。

「今回は、提供されたものが、たぬき『うどん』ではなく、たぬき『そば』だったので、当初の契約どおりの商品を提供していないことになり、定食屋は『債務不履行』となります。

したがって、この時点で買主は、契約を解除することができます。リエ子さんは、たぬきそばを食べずに代金を支払わず、店を出ることができることになります」

しかし、リエ子さんは「完食」してしまっている。その場合は、どう判断されるのだろうか?

「リエ子さんは、『私、お支払いはしませんから』と宣言しつつ、たぬきそばを完食しています。提供された商品を完食するという行為は、『追認』(事後承諾)にあたり、本来であれば、たぬきそば1杯分の代金支払義務が発生することになると思われます。

しかし、その後、店側がそばの代金をもらわないことに同意しているので、たぬきそばの提供は、店側のサービスと捉えることができ、結局、リエ子さんには、たぬきそばの代金支払義務は発生しないことになります」

このように説明したうえで、前島弁護士は次のように補足した。


「ただ、店側が同意しなかった場合は、たぬきそばという商品の提供を受けた以上、当然、支払義務が残ることになります。リエ子さんの言い分は、感情論としては十分理解できますが、法的には通らないと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

前島 申長
前島 申長(まえしま のぶなが)弁護士 前島綜合法律事務所
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属 交通事故・不動産紛争などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。中小企業の事業継承や家族信託などに注力を行っている。

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